平成26年4月22日(火)(第3回)

◎会議に付した案件

日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(船田元君外7名提出、衆法第14号)

上記案について、参考人高橋亮平君、斎木陽平君、百地章君及び田中隆君から意見を聴取した後、質疑を行った。

(参考人)

特定非営利活動法人Rights代表理事

中央大学商学部特任准教授        高橋 亮平君

一般社団法人リビジョン代表理事

ティーンズライツムーブメント発起人   斎木 陽平君

日本大学法学部教授           百地  章君

弁護士

元自由法曹団幹事長           田中  隆君


(参考人に対する質疑者)

古本伸一郎君(民主)

大塚  拓君(自民)

伊東 信久君(維新)

斉藤 鉄夫君(公明)

三谷 英弘君(みんな)

畠中 光成君(結い)

笠井  亮君(共産)

鈴木 克昌君(生活)

◎高橋亮平参考人の意見陳述の概要

1.改正案と確認書の位置付け

  • 選挙権年齢の引下げについて、現行法制定後7年近くが経過しながら法制上の措置が講じられず、改正案で新たな期限を定めなかったことは極めて残念である。
  • 8党は確認書で「選挙権年齢については、改正法施行後2年以内に18歳に引き下げることを目指し、各党間でプロジェクトチームを設置する」と合意したが、残念ながら改正案の提案理由説明では「改めて『改正法の施行後速やかに、投票権年齢と選挙権年齢の均衡等を勘案し、必要な法制上の措置を講ずるものとする』旨の検討条項を、改正法附則に規定」としか述べていない。
  • 本改正案が確認書を交わした政党の議員によって提出されたことからも、改正案と確認書を一体として投票権・選挙権年齢の2年以内の引下げを約束したものと考えており、2年後にそれが確実に実現することを期待している。

2.投票権・選挙権年齢引下げの背景

  • 18歳選挙権は国際標準であり、既に世界で80%以上、G8では日本以外、OECD34か国では日本と韓国以外全ての国が18歳となっている。さらにオーストリアで16歳選挙権が認められ、ドイツ、スイス、ノルウェーの特定の州・市町村選挙で選挙権年齢を16歳に引き下げるなど、欧州各国では、16歳選挙権に向けた動きが広がっている。
  • 引下げに際しては、若年層の政治的判断能力の低さや低投票率に対する懸念も考えられるが、16、17歳に選挙権が保障されるドイツ、オーストリア、ノルウェーでは、16、17歳の投票率が18、19歳のそれを、10代の投票率が20代前半のそれを上回る傾向が見られる。
  • これまで選挙権年齢の引下げは権利に関する議論とされてきたが、成長戦略としてダイバーシティ(多様性)が必要だとして、経済だけでなく政治における若者の活用が求められる。
  • 私は有識者と共同で、市町村議会などの選挙について選挙権・被選挙権年齢を市町村が独自に設定できる「若者の政治参加を通じた地域活性化に係る特区」を提案し、国家戦略特区ワーキンググループによるヒアリングでも高い評価を得た。
  • 18歳選挙権は、世代間格差を是正し、少子高齢社会の担い手として若者が参加する仕組みを整える一環として位置付けることが重要である。

3.投票権・選挙権年齢と成年年齢の関係

  • 現行法制定時にも意見陳述したとおり、投票行為を伴う投票権年齢と選挙権年齢は速やかに引き下げ、民法の成年年齢は選挙権年齢引下げ後に期限を定めて引き下げるよう求める。

◎斎木陽平参考人の意見陳述の概要

1.ティーンズライツムーブメントの活動

  • 18歳選挙権の実現を目指し、様々なシンポジウムや模擬投票の実施など、@若者世代の社会参画の拡大、A政治教育の普及、Bその手段としての「18歳選挙権」の実現の3つをミッションとして活動している。

2.18歳選挙権早期実現を目指す理由

  • 権利と責任はセットで考えなければならず、権利を与えられているのであれば、責任についても議論していかなければならない。
  • 権利と責任はセットだからこそ、納税等の義務を果たしていないのだから、18歳選挙権は認められないのだという意見もある。その意見はもっともだとも思うが、現在の日本の国家予算は国債に大きく依存している。赤字国債は完全に次世代のツケを使って予算を運営しているということであり、我々は赤字国債から逃れることはできない。この問題から逃げるつもりはなく、将来世代としてしっかり負担していきたいと思うところである。権利と責任がセットであるならば、若者の意見を国政の場に取り入れるため、18歳選挙権の早期実現を目指していただきたい。
  • 若者の政治的判断能力を高めていくためにも、18歳選挙権を取り入れていただきたい。問題の一つとして、政治的判断能力が足りないのではないかという意見がある。事実として政治的判断能力が不十分なところはあると思うが、そういったことや政治離れが進んでいるからこそ、政治教育を拡充させていかなければならない。
  • 18歳選挙権が認められれば、高校生が国政に参加できるようになる。高校というインフラの中に、選挙や政治の話がおりてくるということが重要なのではないか。
  • 高校生は親との同居率が高く、住民票も地元にあるため、選挙に行きやすい。20歳選挙権だと、大学進学で地元を離れた場合、住民票の取扱いなどで戸惑ってしまい選挙に行かず、一度選挙に行かないという経験をしたことでずるずると行かないことを繰り返し、その結果20代の投票率が下がっているということもある。最初の選挙に行くときに学校がサポートすることが大事になってくるのではないか。
  • 改憲派、護憲派といろいろな議論があるが、どちらが絶対に正しいというものではなく、若い世代を含めた国民的関心を喚起していくことが重要だと考えている。今回の国民投票法改正案で投票権年齢が18歳に引き下げられたことは歓迎している。憲法に対する様々な考え方があり、それぞれが正当性を持っていると思うが、議論を深めていくことが必要で、議論に若い世代を取り入れていく意味でも18歳選挙権の実現が必要である。

3.留意すべきこと

  • 成人年齢と選挙権年齢は切り離して考えるべきとの意見には賛成である。民法には民法の、少年法には少年法の立法目的があり、公職選挙法には公職選挙法の立法目的が考え得る。
  • 若い世代に政治家が頑張っている姿を伝える意味でも、18歳選挙権を実現していただきたい。一般的に若い世代は政治家にダークなイメージを持っていることが多い。私は様々な活動をする中で、政治家が国政のために朝から晩まで歯を食いしばって努力されている姿を見てきた。そういった姿を若い世代に見せていってほしい。

◎百地章参考人の意見陳述の概要

1.憲法改正手続法の改正と公正なルール作りの必要性

  • 憲法改正手続法が制定されて7年たち、「3つの宿題」のうち、投票年齢及び公務員の投票運動について漸く改正案がまとまろうとしていることは大いに歓迎するし、憲法改正に向けた審議が加速することを期待する。
  • とはいうものの、「3つの宿題」は平成22年までに解決すべきものであったが、その宿題にこだわり、憲法改正に着手する機会が先延ばしされることになったのは遺憾である。
  • 本改正案では、公務員の組織的運動の規制の在り方について、「施行後速やかに」検討を加え、「必要な法制上の措置を講ずる」こととなっている。今度こそ、「速やかに」これを規制するための法整備に着手していただきたい。
  • 憲法改正は、我が国の将来を左右する重大な国家的事業であり、公正な上にも公正なルール作りが必要である。憲法改正手続となると、失敗したら重大な国家的損失を招き、取り返しがつかなくなるからである。
  • この点、公務員の組織的活動の規制の在り方は、公正なルール作りの上で極めて重要な意味を持つ。それ故、予想される様々な事態を想定の上で法整備を行っていただきたい。

2.国民投票運動と公務員の組織的運動の規制について

  • 国民投票運動は、選挙運動と異なり、原則として自由とすべきであって、制約は最小限に抑えるべしとの見解がある。確かに、憲法改正は、国民が直接、主権を行使する唯一の機会であるが、「憲法制定権力」の行使とは異なる。それ故、憲法改正のための国民投票運動では、意見表明の自由保障、政治的混乱回避、国民投票運動の「公正性」維持が憲法上要請されるから、国民投票運動は原則として自由であるべきという主張は疑問である。
  • 国民投票運動は最長半年にわたることから、運動を原則として自由とした場合、どのような政治的・社会的混乱が生じるか予想がつかない。それ故、混乱を防止し、国民投票運動の公正性を維持するためには、原則として公職選挙法に準じた規制を考えるのが自然である。
  • 一般論としては、「規制は自由な意見の表明を委縮させる」ことも考えられるが、地方公務員などによる違法な政治活動・選挙活動が公然と行われている状態の中でわざわざ委縮効果を与えないように配慮すると言えば、誤解を招くだけでなく、現在の違法な政治活動まで正当化されかねない。
  • 選挙運動と憲法改正のための国民投票運動は異なるから公務員にも自由な国民投票運動を認めるべきであるとの見解があるが、公務員による組織的活動については規制すべきである。
  • 憲法改正は文字通り、直接国の命運を左右するもので、選挙活動と比べてはるかに高度な政治性を有するものである。そのような国民投票運動に「行政の政治的中立性」を確保すべき公務員や教員を自由に参加させるというのは、明らかに矛盾している。
  • 公務員の政治的行為の制限については、最高裁判決において合憲と判示している。公務員や教員にも当然意見表明の自由は認められなければならないが、「全体の奉仕者」としての立場やその地位の特殊性などに鑑み、その組織的・党派的運動に制約が加えられることは、最高裁判決に照らしても当然である。
  • もし、そのような国民投票運動に、政治的・教育的に中立であるべき公務員や教員が自由にかつ組織的に参加することになれば、行政や教育の政治的中立性は侵害され、行政や教育に対する国民の信頼は著しく失墜することになろう。

3.憲法改正手続法案をめぐる諸問題

  • 公務員にも許されるのはあくまで「個人的な国民投票運動」及び「個人的な意見の表明」だけであって、「組織的な投票運動」は許されない。それ故、組織を利用した投票運動や組織の支援なしには困難と思われるような投票運動は、たとえ個人的な運動であっても、禁止されるべきだろう。
  • 公務員による「国民投票運動」及び「意見の表明」は、国家公務員法・地方公務員法などによって禁止されている「政治的行為」を伴わない限り許されるが、許されるのは「賛否」の呼びかけだけなのか、それとも「憲法改正に関する意見の表明」という以上、理由を述べることは許されるのか。なぜ憲法改正に賛成か反対かに触れてはならないのは不自然だろう。その場合、結果的に特定内閣の支持・不支持に言及した時はどうなるか。また、「憲法改正への支持・反対」が「憲法改正を支持・反対する内閣や政党への支持・不支持」と重なる可能性も十分ある。
  • 「外形的」に見て「政治的行為」を伴うものであれば全て規制の対象とするのが、少なくとも改正案の文言及び趣旨に合致するのではないか。
  • 附則4項で掲げられている行為のみならず、「官公庁や学校の施設を利用した宣伝活動や周辺での宣伝活動」も規制の対象にすべきである。
  • 人事院規則では「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対する」ことは「政治的目的」とされている。国家公務員が国民投票運動を通して憲法改正に賛成・反対することは、この「政治的目的」に当たると考えられる。それ故、改正案との整合性が問題となる。
  • また、「賛否の勧誘や意見の表明」にしても、人事院規則で禁止される形態での投票運動はできないことになろう。
  • 地方公務員については、「公の投票において特定の事件を支持又は反対する」目的で行われる「投票勧誘運動」等が禁止されており、憲法改正国民投票はここにいう「公の投票」に当たると考えられている。それ故、憲法改正を支持又は反対する目的で署名運動を行ったり庁舎施設等に文書・図画を掲示したりすることは許されないと解される。
  • 公務員の組織的な国民投票運動については、地方公務員についても、国家公務員と同様、禁止事項を具体的に定め、ともに罰則を設けるべきである。
  • 公務員や教育者による「国民投票運動での地位利用」については、範囲等が必ずしも明確ではないなどの意見があるが、公務員や教育者の地位利用がもたらす大きな弊害を考えれば、罰則を設ける必要がある。公職選挙法にならって、「国民投票への投票」を誘導するような行為を禁止することはできないか。

◎田中隆参考人の意見陳述の概要

1.改憲手続法の制定の経過と改正の本質

  • 改憲手続法が議論に上がったのは、当時の安倍首相が掲げた憲法を頂点とした戦後レジームからの脱却というスローガンの下、9条改憲のレールを敷くためのものであった。2007年5月の強行採決から本日まで凍結状態であったのは、安倍首相の同方針に対する国民の批判が背景にある。制定から7年、改憲手続法の起動を求める国民の声は起きず、解釈改憲や立法改憲の動きが強まるなか、世論調査でも改憲反対が上回っている。したがって、改憲手続法の起動は、改憲を加速させようとするものだ。
  • 解釈改憲、立法改憲を推進することを口実に明文改憲に誘導することは、立憲主義を破壊するものである。今回の改憲手続法は、制定当時以上に改憲に向けた政治の道具にされる懸念がある。憲法改正手続は、公正中立でなければならず、政争の具としての改憲手続法は本質的に廃止されるべきである。

2.検討審議における課題・論点

  • 制定法では、公務員の国民投票の自由、18歳投票権の実現、国政事項国民投票の検討と措置が附則で規定されている。いずれも政治参加を目指す、貴重な意味を持ったもので、これらの実現を条件に制定法は実現した。また、最低投票率、有料意見広告の規制、公務員・教員の地位利用の禁止の限定等は、参議院の18項目の附帯決議に集約されている。本改定案で、これらの課題が適正に実現されているかどうかは、厳重かつ慎重に検討する必要がある。
  • 公務員の国民投票運動の自由について、現行附則11条が要求するのは、公務員法制による政治活動禁止から、国民投票運動が除外されることを条文上明らかにすることであった。そのためには改正法100条の2の本文を挿入すればよいだけであり、7年もかかった理由が理解できない。なお、賛否の勧誘、意見表明には、前提となる政治認識の表明を含まざるを得ず、ただし書きを不当に拡張すれば、国民投票運動が行えなくなるため、ただし書きは、限定的な解釈をすべきことを確認しておきたい。
  • 本改定案の問題は、現行附則11条の射程を逸脱し、公務員の規制強化が盛り込まれていることである。制定法は、国民投票運動の原則自由が謳われているにもかかわらず、本改定案では、公務員の国民投票運動の自由が剥奪されている。しかも、組織による勧誘行為の企画等に関する新たな検討規定が加わり、公務員が加わった団体の憲法問題への関わりを遮断することになる。これにより、適法な公務員労働組合の活動に対し、国民投票運動を理由に規制や干渉が加えられることになり、結社の自由、労働基本権との関係で重大な問題がある。
  • 8党合意には、公務員・教員の地位利用に対する刑罰禁止の検討や地方公務員の政治的行為規制を国家公務員と同様に刑罰禁止とすることにまで触れている。このことは、制定時の見地から大幅に後退するもので、これを契機に公務員の政治活動一般に対し、一層の規制強化を図る危険性がある。公務員の政治活動の自由を拡大することが世界の趨勢であり、我が国でも2012年12月7日の堀越事件最高裁判決では、猿払事件判決を実質的に変更し、政治活動の自由を拡大している。本改定案の一連の流れは、制定法だけでなく、歴史の趨勢にも逆行するものである。
  • 現行附則3条が要求しているのは、施行までの3年間で18歳投票権を実現することである。しかし、7年間で18歳投票権を実現する公職選挙法改正案を提出した政党もなければ、18歳投票権を国民に訴える運動を展開した事実も確認できない。附則も拘束性を持った法規であるにもかかわらず、国会は自らが制定した法規を無視している。義務を履行できないなら、一旦白紙にすべきである。
  • 今回の改定案は、宿題に答えるものとはなっておらず、18歳選挙権について、附則で期限の明示のないものに後退しており、また、国民投票権年齢については、4年間は本則の18歳ではなく20歳とされている。与党は、放置すれば立法改憲が進展するため、9条改憲を急ごうとしており、若者を投票に参加させないまま、9条改憲が行われてしまう危険がある。18歳選挙権を先送りにした、改憲手続法の見切り発車は認められない。
  • 最低投票率、有料意見広告、地位利用の限定の問題等は、法案審議の経過で問われ続けた問題だが、残念ながら、これらの検討を含めて今回の法案が作成されているとは思えない。逆に、公務員の地位利用については、与党原案にあった、刑罰法規が復活されようとしている。これは、制定時の検討を裏切る重大な問題をはらんでいる。

3.検討と審議の在り方

  • 現行法制定時に特別委員会で行われた調査や検討は、慎重かつ公正なものと評価できるものであった。一方で、今回は審議を急いでいるように感じ、その理由も分からない。それでは、課題の解決もできず、公正中立であるべき改憲手続法を一層の政治の道具に貶めることにしかならない。政局の具の烙印を押された改憲手続法は、本来廃止すべきであるが、仮にできないなら、少なくとも制定当時の原点に立ち戻り、慎重かつ公正な国民的な検討をしていただきたい。

◎参考人に対する質疑者及び主な質疑事項等

古本 伸一郎君(民主)

<全参考人に対して>

  • 今回の改正案により、投票権年齢は遅くとも4年後には18歳に引き下げられるが、選挙権年齢についても18歳に引き下げるべきだと考えるか。

<発言>

  • 直近の世論調査によれば、投票権年齢の引下げの問題に対する賛否は拮抗している。これは、この問題が国会では盛り上がっているが、国民的議論の広がりがないことを示している。その要因として、大人と言えば20歳以上であるとの観念があること、国民投票権が付与される若い世代が教育現場で政治に触れる機会が少ないことが挙げられるのではないか。

<高橋参考人及び斎木参考人に対して>

  • 両参考人は、中学・高校の授業で、集団的自衛権とは何かについて社会科の先生から教わったことはあるか。また、説明に加えて、先生の意見を聞きたかったか。

<発言>

  • 裁判官、公安委員会委員などは国民投票運動が禁止されることとなるが、高校生がこれらの者と触れ合う機会は滅多にない。むしろ重要なのは、学校の先生が何をどこまで話すかということだ。

<高橋参考人及び斎木参考人に対して>

  • 高校生が政治と触れ合う機会が少ない中、学校行事において特定の政党の議員が呼ばれたり、呼ばれなかったりしているのが現状だと思うが、学校は、政治との触れ合いに関しては中立かつオープンにすべきだと考えるか。

<発言>

  • 文部科学省に確認したところ「学校は、一般に政治的中立が求められており、学校行事に誰を呼ぶか等については各学校や学校の設置者が適切に判断する」とのことだった。18歳選挙権等を認めると、高校の校長は、一層難しい判断を迫られるのではないか。

<高橋参考人及び斎木参考人に対して>

  • 就職した18歳と就学した18歳では、社会的な自立の観点から彼我の差があると思う。将来的には、同じ18歳であっても、成年である者とそうでない者がいてもよいとの見解もあり得ると思うが、この点についてどのように考えるか。

大塚 拓君(自民)

<全参考人に対して>

  • 成年年齢の引下げについては、関係者間でも意見のばらつきがある。選挙権年齢引下げと成年年齢引下げとの関係について、両者を一致させるべきかどうかについて政府内でも意見が異なっている。成年年齢と投票権年齢は一致させるべきと考えるか。

<高橋参考人及び斎木参考人に対して>

  • 先生が意図するとしないとにかかわらず特定の方向に誘導するということは十分に起こり得るので、学習指導要領等に公平中立な教育の方法を定める必要性について伺いたい。

<百地参考人及び田中参考人に対して>

  • 公務員が行う国民投票運動と、違法な政治的活動との切り分けが困難であるとの指摘がある。国民投票運動を行う公務員に対する委縮的効果を防止することと、違法活動を抑制することについては対立関係にあるため、この同時運用は難しいと思うが見解を伺いたい。

伊東 信久君(維新)

<百地参考人に対して>

  • 公務員の組織的な勧誘運動の企画等については、自公案では禁止されていたが、本改正案では附則に検討条項として盛り込まれた。我が党は、地方公務員の政治的行為に罰則を科す法案を提出したが、これについて意見を伺いたい。

<田中参考人に対して>

  • 地方公務員の政治的行為は禁止の範囲が狭く罰則の規定もないが、国家公務員の政治的行為は厳しく制限され罰則もある。しかし、憲法改正の国民投票運動については、国家公務員法・人事院規則では禁止の対象としていないが、地方公務員法では「公の投票」に関する規定があるために禁止の対象となるという逆転現象が発生している。我が党は、公務員の政治的行為の規制は、国家公務員と地方公務員を同等に扱うべきであると考えているが、意見を伺いたい。

<百地参考人に対して>

  • 人事院規則では、政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又は反対することが禁じられているが、地方公務員にはこのような規定がない。我が党は、公務員の政治的行為の規制は、国家公務員と地方公務員を同等に扱うべきであると考えているが、意見を伺いたい。

<高橋参考人に対して>

  • 憲法教育そのものの重要性は共通認識だと思う。日本国憲法の制定過程等が現在の学習指導要領に入っているが、これらは学校教育においてさらに充実していく必要があるのではないか。

<斎木参考人に対して>

  • 斎木参考人は、18歳選挙権は権利であるとともに、責任でもあるとした上で、若者の政治的判断能力を育む必要性を強調していたが、憲法教育の充実について具体的な意見を伺いたい。

<田中参考人及び百地参考人に対して>

  • 民法の成年年齢を引き下げずに、公職選挙法の選挙権年齢を引き下げることは可能か。

斉藤 鉄夫君(公明)

<高橋参考人及び斎木参考人に対して>

  • 私どもは選挙権年齢と国民投票の投票権年齢をともに18歳にすべきと主張してきたが、議論の過程では、選挙は人を選ぶものであるのに対し、国民投票は長期にわたる政策・方針を選ぶもので、より長期を見越しているので、分離してでも投票権年齢を引き下げるべきとの意見もあった。このことについてどう考えるか。
  • 世論調査では18歳への引下げについて賛否は半々であり、慎重な意見も多い。これについてどう考えるか。
  • 諸外国では、若い人ほど投票率が高いというデータがある。これはなぜだと考えるか。また、その高い投票率を維持するためにできる工夫について何か考えはあるか。

<百地参考人に対して>

  • 百地参考人は、18歳選挙権に関して、民法や少年法との整合性を慎重に考えた方がよいという意見だと思うが、将来的には民法や少年法も18歳にそろえるべきだと考えるか。

<斎木参考人に対して>

  • 投票権年齢や選挙権年齢を18歳にすると、同じ教室の中で投票権・選挙権を持っている生徒と持っていない生徒に分かれ、混乱が起きるという議論もあった。これについてどう考えるか。

<百地参考人に対して>

  • 国民投票は政策を選ぶものだから、より自由に運動できるようにというのが我々の基本的な考え方である。これに対し、百地参考人は、国民投票は非常に長期にわたる日本の在り方を決めるからこそ、より規制が必要だという意見だと思うが、この二つの考え方の違いについてどう考えるか。

<田中参考人に対して>

  • 国民投票法そのものが国民が今望んでいるものではないという意見だったと思うが、憲法96条には憲法改正の手続が定められており、それを担保するための法律がないということで、ある意味で国民の主権を行使する道が閉ざされていた。この主権行使の方法をきちんと決めるのは、憲法を守ることになるのではないか。

三谷 英弘君(みんな)

<百地参考人に対して>

  • 地方公務員や教員による違法な政治活動及び選挙活動が行われているとのことであるが、この点について詳しく説明してもらいたい。

<発言>

  • 様々な政治問題について偏った教育がなされた例もあるのではないかと感じている。

<高橋参考人、斎木参考人及び百地参考人に対して>

  • 生の政治に触れさせることと、政治的に偏った教育を行うことを切り分けることが可能かどうか、意見を伺いたい。
  • 18歳選挙権の理由として兵役の義務との関係という話もあったが、兵役の義務がない日本においては参政権に相応する義務は何であると考えるか、伺いたい。

畠中 光成君(結い)

<全参考人に対して>

  • 本改正案に係る議論の中で、私は、若年層の権利より公務員の権利のほうが大事なのかとの指摘をしてきた。参考人各位に、本改正案全体の印象を伺いたい。

<高橋参考人及び斎木参考人に対して>

  • 年齢引下げについては、法律以前の問題として、年齢と判断力は関係がないと考えている。人口構造が現行憲法制定時と比べて大きく変わっている中、財政問題等に鑑みると、若者の基本的人権さえ、十分に尊重されていないというような政治課題が山積しつつある。選挙権年齢引下げに賛成の立場の両参考人に、18歳に選挙権を認めた場合に、敢えて懸念する点があれば伺いたい。

<斎木参考人及び百地参考人に対して>

  • 我が党は、一般的国民投票について道を開くことを主張している。道州制、一院制等の統治機構、原発の是非を問う国民投票など、憲法改正以外の国民投票もあってもいいと考えるが、所見を伺いたい。

<発言>

  • 過去の内閣法制局長官答弁にもあるように、法的拘束力のない諮問的国民投票であれば、憲法の採用する間接民主制を害さない。欧州等では、こういったハイブリッドな国政制度が主流になりつつあり、今後も憲法審査会で検討していきたい。

笠井 亮君(共産)

<田中参考人に対して>

  • 改憲手続は、改憲の動きが国民の側から具体的な問題として現れたときに整備すればよいと考えるが、いかがか。
  • 投票権年齢については、7年前の法制定時の当初自公案では20歳とされ、併合修正案で18歳に引き下げられたが、法施行までの3年間で選挙権年齢も18歳に合わせることとされていた。今回の改定案では、投票権年齢を4年間は20歳に戻し、選挙権年齢の引下げは「検討」することとされている。現行法の立法趣旨に逆行しているにもかかわらず、投票権年齢を18歳に引き下げるというあたかも前向きのもののように宣伝されているが、このことについて、どう考えるか。

<高橋参考人及び斎木参考人に対して>

  • 我が党は、改憲手続法とは関わりなく、18歳選挙権の一刻も早い実現を主張してきた。選挙権年齢の引下げについては、法制定時に義務付けられた3年以内の引下げが7年を経ても実現せず、今回の改定案では「検討」となり、その実現は大いに懸念される。両参考人は、どのように受け止めているか。

<百地参考人に対して>

  • 公務員に求められるのは職務に対する公正性であるから、公務員の一市民としての国民投票運動を規制すべきとの議論は理解に苦しむのだが、いかがか。

<田中参考人に対して>

  • 今回の改定案は、公務員の国民投票運動について規制を強化するものであり、できるだけ多くの国民が運動に参加するべきであるとの7年前の法案提出者の立法趣旨にも逆行すると思う。この点に関し、諸外国における動向及びこの改定案によって懸念される問題を含めて、意見を伺いたい。
  • 改憲手続法の制定時の審議では、日弁連等から参考人・公述人として意見を伺っており、また、制定後も抜本的見直し、抜本的改正に関する意見書などが寄せられているが、この点についてどう考えるか。

鈴木 克昌君(生活)

<高橋参考人に対して>

  • 選挙権年齢を18歳に引き下げることは、国民投票の投票率が上がることへのインセンティブとなるか。

<斎木参考人及び高橋参考人に対して>

  • 若者に対する憲法教育も含めた政治教育が重要となるが、学校で先生により政治教育が行われることについてどのように考えるか、どのような教育体制を作ることが必要と思われるか、見解を伺いたい。

<発言>

  • 選挙権年齢の18歳引下げにより日本が良い形に変わるきっかけになると良いと考える。政治教育は、都市部では理想的な教育ができたとしても地方でそれと同じような教育ができるかどうかとの問題がある。制度設計について時間をかけしっかり議論する必要がある。

<百地参考人に対して>

  • 国民投票運動を行う公務員に萎縮的効果を与えることとならないよう、政府に配慮を求める合意事項に対する見解を改めて伺いたい。

<田中参考人に対して>

  • 公務員の国民投票運動に対する規制を慎重に考える必要があるとの意見についての見解を改めて伺いたい。