平成12年2月17日(木)(第2回)

◎会議に付した案件

1.日本国憲法に関する件

憲法調査会の運営について、各会派からの意見を聴取した。

 葉梨 信行君(自民)

 鹿野 道彦君(民主)

 平田 米男君(明改)

 野田  毅君(自由)

 佐々木 陸海君(共産)

 伊藤  茂君(社民)

2.参考人出頭要求に関する件

日本国憲法に関する件(日本国憲法の制定経緯)について、参考人から意見を聴取することに協議決定した。


3.会長代理指名の報告

中山会長から、会長代理に鹿野道彦君(民主)を指名した旨報告があった。


◎各会派からの発言の概要

自由民主党 : 葉梨 信行君

  • 憲法について、広い角度からの検討を行い、適切な結論を導き出したい。
  • まず、日本国憲法制定前後の歴史的検証を行うことが必要である。歴史的経緯について、共通の認識を得た上で、議論を進めていくことが望ましい。
  • このため、第90回帝国議会の憲法改正案の議事録及び昭和32〜39年にかけて内閣に設置された憲法調査会の報告書の提出方を願いたい。
  • 今後は、各党推薦の参考人から意見陳述を求めることと致したい。


民主党:鹿野 道彦君

  • 21世紀の「この国のかたち」を構想する立場からの論憲の立場を表明する。
  • 従来の、護憲・改憲といった立場にとらわれない、幅広い開かれた議論をすべきである。
  • 「国民主権」、「基本的人権の尊重」及び「平和主義」の憲法3原則については、これからも憲法の重要な精神として大切にされるべきである。
  • しかしながら、国際環境の変化や社会・生活環境の変動などに照らして、今日の憲法は新しい時代にも十分に適合できるのか調査研究することは必要だ。
  • 「この国のかたち」を構想する立場から、20世紀に対する総括と、21世紀への展望という視点をもって議論を進めるべきだ。
  • 国民とともに議論を進めていくという立場を大切にしたい。


公明党・改革クラブ:平田 米男君

  • 現行憲法の3原則については不変のものであるということを確認した上で、21世紀へ向けた我が国の在り方を議論する。
  • 憲法の制定過程について、これが論議の対象であることは理解する。しかし、現行憲法が半世紀にわたり国民に深く定着し、支持されてきた事実は大変に重いものだ。憲法が国民の強い指示を受けるに至った過程についての検証も必要ではないか。
  • 現行憲法は「個人の尊厳」を中心に据えてでき上がっている点で、多くの国民の支持を得てきたものと考える。
  • 個人の尊厳を守るという視点で我が国のあるべき姿を見詰め直す論憲を進めていくべきだ。憲法調査に当たっては、世界的、歴史的、かつ、将来的視野をもって臨むべきである。


自由党:野田 毅君

  • 現行憲法は、制定以来半世紀余を経る間に、種々の問題が生じてきたことにより、その理念と現実との間に乖離を生じている。
  • 憲法とは、国のかたちの根幹をなすものである。20世紀を顧みつつ、21世紀を見据えて国家百年の国づくりの根幹となる「新しい憲法」をつくるという視点での調査を進める必要がある。
  • 議論に当たっては、可能な限りの客観的な事実を共有し、各委員が共通した認識を持てるよう努め、同時に国会の論議を公にすることで国民世論の形成に努めるべきだ。
  • 国民とともに21世紀の新しい国づくりを行うという視点から、調査会の各地域での開催やインターネットの活用など、広く国民の意見の吸収にも努めるべきだ。
  • 現行憲法の制定経過や解釈・運用の実際、国民の意識調査などは行っていくべきだが、憲法の国際比較の調査は特に重要である。安全保障や危機管理、国民の権利義務、地方分権、憲法改正手続に関する規定の比較が重要だ。
  • 調査に当たっては、明確なタイムスケジュールをもって調査を行い、明確な結論を出していくべきだ。


日本共産党:佐々木 陸海君

  • 憲法調査会は、「日本国憲法について広範かつ総合的な調査」を行うことが目的であり、憲法改正の足がかりとすることは許されない。
  • 21世紀を展望するに当たって、「国民主権と国家主権」、「恒久平和主義」、「基本的人権」、「議会制民主主義」、「地方自治」の5原則を掲げた日本国憲法の先駆性を調査することが大切だ。
  • 憲法と現実政治との乖離については、それがなぜ、どのようにして生まれたのかを点検していくことが大切だ。憲法の理念が現実の政治の中で活かされてこなかったことに問題がある。
  • また、憲法の制定過程と今日に至る歴史的な事実関係の正しい検証も必要だ。米国政府が、日本国憲法の施行後、わずか1年という時期に、すでに憲法9条の改正方針を検討し始めたというのは、今や明らかな事実である。
  • 憲法を守るという立場からの「広範かつ総合的な調査」を行うことが必要である。


社会民主党・市民連合:伊藤 茂君

  • 憲法調査は、21世紀の日本の進路に深くかかわる問題だ。
  • 改憲には反対である。憲法の3原則は近代社会の普遍的な原理と目標を鮮明にしたものだ。
  • 日本国憲法の理念は、21世紀への先見性を持ったものである。憲法の理念と目標を堅持し、具体化する方向で進めることが大切だ。
  • 条文の改正に関する論議よりも、日本の将来のビジョンに関する議論こそが重要だ。
  • 憲法に関する「広範かつ総合的な調査」として、憲法制定後に発生した憲法違反問題の洗い出しとその原因の検証こそが重要である。