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第201回国会
難病・長期慢性疾病・小児慢性特定疾病対策の総合的な推進に関する請願

【請願要旨と処理経過(所管省庁における処理要領)】
請願要旨

 二〇一五年一月に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」によって、我が国の難病対策は法的根拠を持つ総合的対策として新しく出発した。国及び地方自治体には難病対策の総合的な推進と国民への周知が進むよう一層の努力を求める。  ついては、次記事項を措置されたい。 一 未診断疾患を含めた難病の原因究明、治療法の早期開発、診断基準と治療体制の確立を急ぎ、指定難病対象疾病の拡大及び国民への難病に対する理解と対策の周知を進めること。 二 難病患者と家族が地域で尊厳を持って生活していくことができるよう、長期にわたり治療を必要とする難病や長期慢性疾病患者の医療費を初めとする経済的負担の軽減を図るとともに、障害者総合支援法による福祉サービスの提供などの政策をさらに進めること。 三 難病や小児慢性特定疾病の子供に対する医療の充実を図り、成人への移行期医療を確立すること。また、医療的ケアの必要な子供たちの教育を保障すること。 四 全国のどこに住んでいても我が国の進んだ医療を受けることができるよう、専門医療と地域医療の連携を強化すること。また、医師、看護師等専門スタッフの不足を原因とする医療の地域格差を解消し、リハビリや在宅医療の充実を図ること。 五 就労は難病患者にとって経済的な側面のみならず、社会参加と生きる希望につながるものである。そのため、幼児期からの教育の保障、障害者雇用率の対象とすることによる就労の拡大や就労支援を充実すること。 六 全国難病センター(仮称)の設置等により、都道府県難病相談支援センターの充実や一層の連携、患者・家族団体活動への支援、難病問題の国民への周知等を推進すること。

処理経過(所管省庁における処理要領)
【主な所管省庁:厚生労働省】

一 難病の原因究明、治療法の早期開発及び診断基準の確立等の難病の研究等の推進については、令和二年度予算において、約百億円を計上しており、厚生労働科学研究費補助金等の難治性疾患政策研究事業及び難治性疾患実用化研究事業に取り組んでいる。引き続き、これらの研究を推進してまいりたい。   治療体制の確立については、都道府県において、新たな難病の医療提供体制を整備するための経費について、令和二年度予算において、約六億円を計上しており、引き続き、全ての都道府県で地域の実情に応じた医療提供体制が構築されるよう取り組んでまいりたい。   難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号。以下「難病法」という。)第五条に基づく指定難病の対象となる疾病の拡大については、難病法施行時の百十疾病から、令和元年七月時点において三百三十三疾病まで拡大したところである。また、ポスターの作成、リーフレットの配布、政府広報等を行っているところであり、これらの取組を通して、難病に対する国民の理解が促進されるよう、努めてまいりたい。 二 難病や長期慢性疾病の患者の経済的負担の軽減については、高額療養費制度により、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないようにするなど、その負担の軽減を図っている。また、特に難病患者については、難病法に基づく医療費助成制度により、更なる経済的負担の軽減を図っている。   障害福祉サービスについても、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)の改正により、障害者の地域での一人暮らしを支援する「自立生活援助」等の新サービスが創設され、平成三十年四月一日から施行されているところである。 三 難病患者については、高額療養費制度だけでなく、難病法に基づく医療費助成制度により、更なる経済的負担の軽減を図っている。また、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第十九条の二の規定に基づく小児慢性特定疾病児童等についても、小児慢性特定疾病児童等の健全育成及び福祉の向上を図ることを目的とし、児童福祉法に基づく医療費助成制度により、その家庭の更なる経済的負担の軽減を図るとともに、慢性的な疾病を抱える児童及びその家族の負担軽減並びに長期療養をしている児童の自立を図るため、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業を実施している。   また、難病の医療提供体制については、「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」(平成二十七年厚生労働省告示第三百七十五号)等を踏まえ、都道府県において地域の実情に応じた難病の医療提供体制を構築するに当たって参考とするための「難病の医療提供体制の構築に係る手引き」を示している。これらを踏まえ、引き続き、難病の医療提供体制の構築に向けて取り組んでまいりたい。さらに、児童福祉法第二十一条の五の規定に基づき、「小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に係る施策の推進を図るための基本的な方針」(平成二十七年厚生労働省告示第四百三十一号)を策定し、小児から成人への移行期医療支援体制を構築するため、平成二十九年十月に都道府県向けの移行期医療に係るガイドを策定している。さらに、都道府県の移行期医療支援体制を整備するための経費について、令和二年度予算において、約三千万円を計上しており、今後も、慢性的な疾病を抱える児童等の健全な育成に係るこれらの施策を推進してまいりたい。   難病及び慢性疾病等の障害のある幼児、児童及び生徒に関し、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の趣旨を踏まえ、特別支援学校、特別支援学級等において一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じた教育を行うなど、特別支援教育の充実に向けた取組を進めている。また、入院又は通院して治療を受けている児童及び生徒に対する教育支援体制を整備することを目的とした事業を実施している。さらに、学校において医療的ケアを行う看護師の配置に必要な経費を補助するとともに、学校における医療的ケアの実施体制の充実を図ることを目的とした事業を実施している。   今後も、「児童福祉法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成二十六年五月二十日参議院厚生労働委員会)の趣旨も踏まえつつ、難病や小児慢性特定疾病の子供に対する医療の一層の充実を図ってまいりたい。 四 難病の医療提供体制については、「難病の医療提供体制の構築に係る手引き」等を踏まえ、現在、都道府県において、医療提供体制の整備を進めているところである。専門医療と地域医療の連携については、難病が疑われながらも診断がつかない患者について、患者本人や管内の医療機関からの診療相談に応じる難病診療連携コーディネーターを配置するほか、管内の難病医療に携わる医療従事者に対する研修を実施する難病診療連携拠点病院を整備することにより、その強化を図っている。   医師の確保については、平成二十年度以降、医学部入学定員を臨時的に増員してきており、令和二年度は九千三百三十名としているほか、医師が不足している地域の病院に対する支援等を行っている。   また、医師需給の見通しや、その確保策、地域偏在対策等について検討するため、平成二十七年十二月から「医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」を開催し、同分科会での議論等を踏まえ、医師偏在対策等を内容とする「医療法及び医師法の一部を改正する法律案」を第百九十六回通常国会に提出し、同国会において成立、平成三十年七月二十五日に公布された。これを受け、具体的な取組について、平成三十一年三月に同分科会において取りまとめられた「第四次中間取りまとめ」を踏まえ、医師偏在対策を都道府県と共同して進めているところである。   看護師等の確保については、これまでも、離職する看護師等について都道府県ナースセンターへの届出制度を活用した再就業の支援等の対応を行っているところである。   また、令和元年十一月に「医療従事者の需給に関する検討会看護職員需給分科会」において取りまとめられた「中間とりまとめ」において、今後の看護職員確保策においては、これまで取り組まれてきた看護職員の総数不足への対応策だけでなく、看護職員の地域偏在や病棟から在宅領域への移行が課題となることが改めて示されたところであり、都道府県が各地域における課題を特定し、医療計画等において計画的に確保策を進められるよう支援等を行ってまいりたい。   さらに、消費税増収分を活用した地域医療介護総合確保基金(医療分)については、令和二年度予算において、公費約千百九十四億円を計上しており、各都道府県における医療従事者等の確保及び養成に資するため、地域の実情に応じて本基金を活用していただくこととしている。   難病患者に対するリハビリテーションについては、訪問リハビリテーション及び介護予防訪問リハビリテーションについて、特定医療費の支給対象とするとともに、在宅の難病患者の多様化するニーズに対応した適切なホームヘルプサービスの提供に必要な技能を有するホームヘルパーを養成するため、令和二年度予算において、約千万円を計上し、自治体が実施する研修事業に対して補助を実施している。   さらに、地域医療介護総合確保基金を活用した質の高い在宅医療の確保や、在宅医療に関する専門知識や経験を豊富に備え、地域で中心となって人材育成事業を支えることのできる高度人材の育成等の取組により、在宅医療の提供体制の充実に取り組んでまいりたい。 五 難病及び慢性疾病等の幼児、児童及び生徒の教育の保障については、三についてで述べたとおりである。また、特別な支援を必要とする子供が就学前から社会参加まで切れ目なく支援を受けられる体制の整備を行う自治体を支援している。   また、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)における「障害者」は、「心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」とされており、難病患者の就労支援については、公共職業安定所において、様々な難病の特性に応じた助言ができる難病患者就職サポーターを配置し、個々の特性を踏まえた職業相談等を行っている。   他方、障害者雇用率制度では、法的公平性と安定性を確保するため、対象を明確かつ容易に判定できるよう、対象障害者の条件を、障害者手帳等を所持していることとしている。   その上で、令和元年に成立した「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案」に対する衆議院及び参議院厚生労働委員会の附帯決議において障害者雇用率制度の対象障害者の範囲についても検討するよう指摘されており、まずは令和元年七月に厚生労働省内に立ち上げた「障害者雇用・福祉連携強化プロジェクトチーム」において検討することとしている。 六 難病患者等の療養生活の質の維持向上を図るため、難病患者等に対する必要な情報提供及び地域交流会等の活動に対する支援を行う難病相談支援センター事業を含む療養生活環境整備事業を難病法に位置付け、取組を推進しているところである。また、各都道府県等に設置された難病相談支援センターの活動を支援するため、同センターに勤務する職員等を対象とした研修の全国的な実施等に取り組んでいるところである。   今後も、同研修事業を行うとともに、難病相談支援センターにおける相談事例等の情報を共有するためのネットワークを活用し、都道府県等と難病相談支援センターとの連携強化及び相互支援に取り組んでまいりたい。

本請願の受理件数、付託委員会、紹介議員等は、請願情報をご覧ください。
第201回国会 850 難病・長期慢性疾病・小児慢性特定疾病対策の総合的な推進に関する請願(別ウインドウで表示)



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