第208回国会
腎疾患総合対策の早期確立に関する請願
請願要旨 |
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我が国では腎臓病患者が千三百万人を超えると推計され、国民病の一つとも言われている。発症すると長期にわたる治療が必要で、慢性腎不全に至ると人工透析治療か腎臓移植となる。現在、人工透析患者は三十四万人を超え毎年増加し続けており、移植希望登録者は一万三千人以上に上っている。透析患者の増加率こそ鈍化傾向となったが、減少するまでには至っていない。早期発見、適切な治療により透析導入の時期は遅くなったが、患者の高齢化が顕著となり通院支援の必要性、介護の確保などが喫緊の課題となっている。また、大規模地震、異常気象による災害などが発生した場合、年間百六十回近くの通院を要する透析患者には大きな不安要素となる。さらに、新型コロナウイルス感染症への最大の対抗手段はワクチン接種とされているが、接種効果の有効期間、再接種の必要性などについてエビデンスがない中で基礎疾患保有者は不安を感じている。 ついては、次記事項を措置されたい。 一 新型コロナウイルス感染症対策において、私たち腎臓病患者を含め基礎疾患を有する者に対する感染防止策の強化はもちろんのこと、ワクチン接種、有効な治療薬の開発及び治療体制の確保等についてもしっかりと推進すること。 二 腎臓病の早期発見と重症化予防に向け、総合的対策とともに多職種が連携した取組についても推進すること。 三 医療ニーズのある腎臓病患者の利用者であっても、安心して介護保険施設に入所できるよう、人的・財政的措置を検討すること。 四 高齢人工透析患者の増加により通院困難者が増えている。国と地方自治体が連携し、通院を保障する体制を整備するよう努めること。 五 広域災害発生時における人工透析患者について、治療施設の確保を初め生活の場及び通院手段の確保など国と地方自治体が連携し、患者目線での対策を策定すること。 六 改正臓器移植法による腎移植の推進及び再生医療の研究が進むよう努めること。 |
処理経過(所管省庁における処理要領) 【主な所管省庁:厚生労働省】 |
一 新型コロナウイルス感染症への対応については、「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」(令和三年十一月十二日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)に基づき、ワクチン、検査、治療薬等の普及による予防、発見から早期治療までの流れを強化する取組を進めてきたところである。さらに、「Withコロナに向けた政策の考え方」(令和四年九月八日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)に基づき、重症化リスクの高い方を守るとともに、通常医療を確保するため、保健医療体制の強化・重点化を進めている。 新型コロナワクチン接種については、接種対象となる全ての方に無料で接種の機会を確保している。令和四年九月二十日より開始したオミクロン株対応ワクチンの接種については、重症化リスクが高い等の理由で、基礎疾患を有する者を含む従来ワクチンの四回目接種の対象となっている者であって、当該接種を未実施であるものから接種を開始している。 また、新型コロナウイルス感染症の治療薬については、研究開発への支援のほか、治験費用への補助など実用化を加速するための支援を実施している。 治療体制の整備に関しては、新型コロナウイルス感染症の経口治療薬について、一部の薬剤においては、一般流通が開始されており、その他の薬剤については、医療機関や薬局の発注に応じた迅速な供給等を可能としている。 引き続き、これらの必要な対応を行ってまいりたい。 二 厚生労働省では、平成三十年七月に腎疾患対策検討会で取りまとめた「腎疾患対策検討会報告書」に基づき、総合的な腎疾患対策を実施している。 報告書では、重症化の徴候がある際に速やかに専門医に紹介し、早期に適切な介入を行うことで重症化を予防できるよう、かかりつけ医から腎臓専門医療機関、糖尿病専門医療機関等への紹介基準を普及すべきであるとされている。また、厚生労働科学研究において、連携の好事例を把握する等しながらこの紹介基準の関係者への普及に努めているほか、腎臓病の早期発見につながるよう動画等を用いた効果的な普及啓発資材の作成も行っている。令和二年度からは、慢性腎臓病患者に特有の健康課題に適合した多職種連携による生活・食事指導等の実証研究を開始しており、実態調査やエビデンスの収集を進めている。 また、令和四年度においても、総合的な腎疾患対策を推進するため、都道府県等における患者等一般向けの講演会等の開催や医療関係者を対象とした研修の実施等に係る補助事業費を計上しており、慢性腎臓病に関する正しい知識の普及や対策に必要な人材育成等を推進するとともに、慢性腎臓病の診療連携体制を構築するためのモデル事業を引き続き実施する。 三 介護保険は、要介護認定又は要支援認定(以下「要介護認定等」という。)により要介護者又は要支援者(以下「要介護者等」という。)であると認められた介護保険の被保険者に対して、介護サービスに係る保険給付を行うものである。六十五歳以上の者は原因を問わず、四十歳以上六十五歳未満の者は糖尿病性腎症等の加齢に伴って生じる疾病が原因で、要介護状態又は要支援状態になったときに、要介護認定等を受けることができ、要介護者等と認められた腎臓病患者は、必要な介護サービスを受けることが可能である。 透析が必要な方も含めた、特別養護老人ホームの入所者の医療ニーズについては、令和三年度老人保健健康増進等事業において調査研究を実施したところであり、また、令和四年度においても、透析患者の送迎の実態を含め、特別養護老人ホームと外部の医療機関との協力・連携体制の現状・課題などについて、調査研究を実施している。こうした調査結果等を踏まえ、特別養護老人ホームにおける医療ニーズへの適切な対応のあり方について、検討を進めてまいりたい。 なお、いわゆる血液透析や腹膜透析については医療保険の対象となっており、介護老人福祉施設や介護老人保健施設に入所している要介護者等についても、透析に係る費用は医療保険から給付されることとなっている。また、医療保険制度においては、人工腎臓を実施している慢性腎不全について、自己負担限度額を軽減し、月額一万円(七十歳未満で、所得の額が一定以上の者は二万円)としているほか、高額介護合算療養費制度により、医療保険と介護保険における自己負担額の合計額が高額になる場合に、その負担を軽減する仕組みを構築している。 四 地域における移動手段として透析患者が利用できるものの確保については、地域の実情に応じて、地方公共団体等が中心となって様々な事業が行われているほか、要介護認定等や障害福祉サービスの支給決定を受けた透析患者は、介護保険制度又は障害福祉制度により居宅から医療機関に通院する際の介助等のサービスを受けることが可能である。また、市町村、NPO法人等が自家用車を用いて透析患者等を有償で運送できる福祉有償運送の実施円滑化の取組を推進してまいりたい。 五 災害時における人工透析の提供体制については、「厚生労働省防災業務計画」(平成十三年二月十四日厚生労働省発総第十一号)に定めるとともに、東日本大震災の教訓を踏まえ、公益社団法人日本透析医会災害時情報ネットワークシステムの機能強化に対する補助を行い、災害時の透析患者の受入体制の充実を図ったところである。令和四年三月の地震による災害等においては、同ネットワークシステムを通じ、国、地方公共団体及び公益社団法人日本透析医会が連携して、人工透析の提供体制の確保に努めたところである。 また、腎疾患政策研究事業において、令和二年度から慢性腎臓病患者(透析患者等を含む。)に特有の健康課題に適合した災害時診療体制の確保に資する研究を開始しており、広域における災害の対応や、災害発生時の患者のメンタルヘルス等も含めた多角的な検討を行っている。 引き続き、地方公共団体及び公益社団法人日本透析医会と連携するとともに、腎疾患政策研究事業を通じて得られた知見を踏まえ、災害時の透析患者の受入体制の整備に取り組んでまいりたい。 六 腎臓移植を含めた移植医療の推進については、国民への普及啓発を実施するとともに、令和四年度予算において、臓器提供施設の整備及び連携体制の構築のため、臓器提供に関する情報提示の推進や院内マニュアルの整備等及び臓器提供事例が多い施設が、当該事例が少ない施設に対して行う研修等を支援するための経費を引き続き計上した。 また、再生医療については、令和四年度予算において、実用化に近い臨床研究を重点的に支援する経費等を計上し、研究体制の充実を図っている。 再生医療の研究の推進に資するよう、引き続き、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)及び再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成二十五年法律第八十五号)の規定に基づき、制度の円滑な運用に努めてまいりたい。 |
本請願の受理件数、付託委員会、紹介議員等は、請願情報をご覧ください。
第208回国会 622 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願
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