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平成十四年十二月十二日提出
質問第三四号

土地区画整理事業に関する質問主意書

提出者  川田悦子




土地区画整理事業に関する質問主意書


 第一五四国会質問第一五八号「土地区画整理事業に関する質問主意書」において、土地区画整理事業がその事業地域において惹起しているさまざまな問題、過去の事業における問題及び今後の事業のあり方等について政府の見解を尋ねた。
 上記質問主意書に対する政府の答弁書には不十分な点があるので、土地区画整理事業に関する問題についてあらためて政府の見解を問う。
 以下、質問する。

一1 答弁書「一について」において、「一九三一年(昭和六年)に施行認可の公告があり、一九九四年(平成六年)に終了認可の公告があった地区(事業施行期間六十三年)が最長」の事業であるとしている。
 そもそも、わが国における土地区画整理は、一八九七年(明治三〇年)法律第三九号「土地区画改良に係る法律」に端を発し、一九二九年(昭和四年)には内務省令第二号で「土地区画整理の施行に関する件」が発令され、一九〇九年(明治四二年)農務省令第三九号耕地整理法施行規則を準用するとある。
 すなわち、前述の一九三一年(昭和六年)に施行認可の公告があった事業は旧憲法下における法律に基づいて始められたものである。
 新憲法においては、周知のとおり、幸福追求権、財産権等の国民の権利が拡充された。そして、新憲法制定後、一九五四年(昭和二九年)に法律第一一九号「土地区画整理法」が制定されている。
 しかるに、土地区画整理事業が、現憲法の幸福追求権、財産権等の人権規定の趣旨を十分生かして運用されているのであれば、旧憲法下において開始された事業が今に至っても終了せず、これほどまで長期化することはないと考えるが、政府の見解を問う。
 2 答弁書「六について」において、「土地区画整理事業の実施に当たっては、住民の意向を十分に踏まえつつ、その理解と協力を得ながら進められることが望ましいと考えている。」としている。もとより、土地区画整理法は、現憲法の民主的な理念に基づいて制定され、また、旧建設省は一九七八年(昭和五三年)「区画整理計画標準・追録2」において、「区画整理のための区画整理に陥ってはならない」とする理念を明示している。
 ところが、一九九九年九月発行の雑誌「区画整理」(社団法人日本土地区画整理協会発行)において、実際の事業の現場において住民の間から、以下のような不安の声が上がっていることが当該事業施行者によって指摘されている。
 「施行者が一方的な話をしただけで『説明は終わった』といって事業を進めていく。そういうやり方は協働のまちづくりではない」「『区画整理語』とでもいう訳の分からない言葉を使う連中がやってきて『減歩だ、換地だ、清算金だ、土地を動かす、交換する、分筆だ、合筆だ』などという」「『自分の家は動かなければならないのか、補償金はいくら出るのか、土地が減るっていうが一体どのくらい減るのか、清算金はいくらだ、第一何時から始まるんだ』住民にとって本当に知りたいどの項目も確定していないのが現実で、事業を進めながら決めていこうということなのだ」
 このような不安の声が絶えないというのは、事業が上意下達の強権的な都市計画の姿勢で行われており、現憲法の企図する民主的な理念に則って行われていないことの現れではないのか。政府の見解を問う。
二1 答弁書「一について」において、「事業計画の決定等の公告のあった日から二十年以上又は三十年以上を経ても事業が終了していない地区の都道府県別の数及び面積については、別表のとおりである。」とし、その理由として、「仮換地の指定や建築物等の移転等に伴う損失補償についての関係権利者との合意形成の難航等により事業が長期化している事例もある」ことを挙げている。
 しかし、三十年以上も事業が終了していない理由を単に仮換地指定や移転損失補償について、権利者との合意形成の難航のみで説明していることは不十分である。
 そこで、長期化の理由について、現状の十分な分析をした上での見解を改めて問う。
 2 また、これほどまでに事業が長期化しているのであれば、土地区画整理事業そのものが破綻しており、運用に耐えないものになっていると考えられる。
 例えば、昨年総務省が指定した「土地開発公社経営健全化団体」のひとつである埼玉県飯能市では、一九九八年(平成一〇年)度における標準財政規模に対する公社借入金残高は六二・五パーセントにも達しており、飯能市土地開発公社運営方針によると「市が買戻す土地については、土地区画整理事業の先行取得用地が七件あり、全体の四四パーセントに当たり大きな比重を占めている」としている。そして、中でも事業規模の大きい飯能市笠縫地区への投下予算を見ると、計画予算と実効予算とが著しく乖離しており、同地区土地区画整理事業は破綻していると言わざるをえない。
 すなわち、事業が長期化しているのは、事業そのものが破綻しているからではないのか。政府の見解を問う。
三1 地方公共団体施行の土地区画整理事業については、住民の意見がほとんど反映されていない。各段階の説明会や意見書の提出は単なる推進のためのステップとして、住民を押さえ付けるために行われているのが現状である。
 東京都羽村市では住民監査請求を踏まえて、住民訴訟が行われている。この事例は東京都羽村駅西口土地区画整理事業という個別案件とはいえ、羽村市民百二十九名が原告となって住民訴訟が提起されたことは、地方公共団体施行の土地区画整理事業が、住民の理解と協力を得られなかった権力行政であることの証左である。
 住民訴訟が起こらざるを得ないこの現実は、住民の意思が事業に反映されていないことの現れであると考えるが、この点について政府の見解を問う。
 2 答弁書「二及び四の(1)について」で、土地区画整理事業は、「利害関係者の意見が反映される仕組みとなって」おり、地方公共団体施行の土地区画整理事業についても、「事業の立ち上げの段階から住民の意見が十分に反映される仕組みとなっている。」としている。
 確かに、形式的には、事業計画又は換地計画の縦覧、利害関係者による意見書の提出等の手続が定められているが、実質的に機能しているとは言い難い状況にある。
 なによりも、都市計画審議会の委員は公正な構成になっていない。そのことは、現場の担当者の発言等からも明らかである。
 例えば、土地区画整理事業を認可する段階で、埼玉県都市計画審議会を運営する住宅都市部都市計画課担当は「審議会に住民が参加すれば審議が纏まらない」という発言を行った。また、土地区画整理事業の長期化をチェックする段階で、同県土木部建設管理課が設置する公共事業評価監視委員会は住民の参画を容認していない。
 そこで、住民の声が事業に実質的に反映されるようにするために、都市計画審議会や公共事業評価監視委員会に公募など住民の目線を取入れるシステムを取入れるべきであると考えるが、政府の見解を問う。
四 答弁書「七について」において、「公共事業の説明責任の向上を図るためには、地方公共団体の積極的な取組が不可欠であり、地方公共団体が当該行動指針を参考に同様の取組を行うことが望ましいと考えている。なお、都道府県及び指定都市に対して、当該行動指針を参考として送付している。」という。
 しかし、現在、住民に対する説明責任が果たされているとは言い難い。
 住民の意思を事業に十分反映させるためには、その前提として、住民側に判断材料としての情報が不可欠であり、説明責任は非常に重要な意味を持つ。
 そこで、事業の各段階で説明責任を法律で義務付けると共に、第三者機関の査察制度を規定すべきであると考えるが、政府の見解を問う。
五1 答弁書「九について」において、「土地区画整理事業についても、引き続き当該実施要領(国土交通省所管公共事業の再評価実施要領)に基づき、適切に評価を行ってまいりたい。」としている。
 しかし、「再評価実施要領」によれば、施行者自身によって事業の評価が行われているのであり、これでは、事業を進めてきた本人が進んで休止や中止を決断することは期待出来ず、適正な評価がなされるとは言えない。
 そこで、事業継続の可否を当該施行者とは利害関係のない第三者機関による評価の必要があると考えるが、政府の見解を問う。
 2 また、再評価の際に、計画に無理があると考えられる事業については廃止を含めた抜本的な見直しをすべきである。
 事業が長期化すると、仮換地指定を受けても事業が進展せぬ一方で、土地区画整理法第七六条により地権者には建築制限の期間も長期化することになり、地権者は著しく不利益を被ることとなる。仮換地指定後十数年も経って、家屋の老朽化や家族構成の変化に対して、施行者の不作為が住民の生活を圧迫する。
 仮換地指定で「使用収益できる日を別に定める」と通知しながら、十年間も土地や建物が使えないでいる仮換地指定は明らかに違法であると考える。
 そこで、一定の期間(例えば、二十年)を経過しても終了しない事業については、抜本的に見直すか、または廃止すべきであると考えるが、政府の見解を問う。
六 答弁書「八について」において、「工事のために必要がある場合においては、換地計画に先立って仮換地を指定することができる」として、「法九八条一項前段の前半所定の『土地の区画形質の変更若しくは公共施設の新設若しくは変更に係る工事のため必要がある場合』には、事業の規模の大小にかかわらず、また、換地予定地的仮換地の指定処分をするときでも、換地計画に基づくことを要しないものと解するのが相当である」旨判断されていると、最高裁判例を引用している。
 しかし、法務省訟務局行政訟務第一課長・石井忠雄氏が監修する「判例概説・土地区画整理法」では、「換地とすることを予定した仮換地の指定処分をなすには、必ず換地計画に基づいて、これをおこなわなければならず、換地を予定しない一時使用的な仮換地の指定の場合のみ、換地計画に基づかないで仮換地指定処分ができるに過ぎないと解するのが相当である」とし、これに違反した仮換地指定処分は重大かつ明白な瑕疵あるものとして無効たるを免れないとしている。
 すなわち、換地計画を立てた上で、仮換地指定を行うのが原則であり、工事のために必要がある場合においては、換地計画に先立って仮換地を指定することができるのは例外的な場合である。
 ところが、地方公共団体の現在の運用状況を見ると、原則と例外が逆転している。
 そこで、政府は土地区画整理法の趣旨を逸脱した運用を改めるべきであると考えるが、政府の見解を問う。

 右質問する。



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