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平成十五年一月三十一日提出
質問第一二号

電子投票制導入に関する質問主意書

提出者  石井 一




電子投票制導入に関する質問主意書


 アメリカでは昨二千二年(平成十四年)十月、二千四年(平成十六年)大統領選挙までに、三十九億ドル(一ドル百二十円換算で四千六百八十億円)の連邦補助金(補助率=総額の九十%以上)を投入して電子投票を全国に普及する選挙改良法が成立した。また、同年十二月の韓国大統領選挙(記号式投票)に電子開票機を導入した結果、日本の国政選挙集計は一泊二日もかかるのに、「各開票所の集計が平均一時間三十九分で終了し、開票作業者数も半減した」と、韓国選管当局から発表された。日本と同じ自書式投票制をとっていた最後の国フィリピンさえ、財政難にも拘らず、来年五月の大統領・国会議員選挙から電子投票制を導入する予定である。
 IT(情報技術)の世紀を迎えた民主政治体制をとる国は、国家体制の基盤である投票制の電子化を競っているのである。日本もIT社会・政府実現を目指すEジャパン重点計画の主要項目に、電子投票事業を掲げている。
 しかるに日本では、平成十四年四月一日施行の『地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律』(以下「電子投票特例法」という)で地方選挙の投票日当日投票だけは電子投票を可能にしたが、不在者投票を自書式投票のままに規制(電子投票特例法第三条)して、電子投票の完全実施を禁止した。電子投票を導入した国で、不在者投票の電子投票を禁止している前例は無い。
 不在者投票を「投票が直接記録される」電子投票に改正すれば(そのための費用を必要とせず)、自治体職員を大量動員しても長時間に及び、人為的ミスが絶えない開票作業が投票管理事務過程から廃止される。自治体職員動員及び投票管理コストの大幅削減、「疑問票や無効票が無い」上に集計ミスも無い投票制を実現できるのである。
 しかし、現行の電子投票特例法では不在者投票が自書式のため開票作業を廃止できず、同法の趣旨(第一条)である「開票事務等の効率化及び迅速化」を絶対に実現できない費用対効果の悪さを、日本最初の電子投票だった同年六月の新見市長・市議会議員選挙で証明した。
 そのため、平成十四年度内に電子投票を実施する自治体は、電子投票特例法提案以前に電子投票導入を既に表明済だった新見市、広島市の二つに止まる。電子投票特例法の内容は電子投票導入を促進するどころか、導入を阻止する歯止めになったのである。同法の立法趣旨を実現するためには、同法の瑕疵条項を改正するか、同法を廃止した上の新規立法しか方法が無い。それなのに、未だにその方法をとらないのは、同法を提案した政府の怠慢と言わざるを得ない。
 さらに、国の導入補助率(五十%)が低いために過重になる自治体負担が、電子投票導入条例案を否決した自治体議会の導入反対理由であった。民主政治体制の基盤である投票制を改善する電子化は、米韓比三ヶ国の前例を挙げるまでもなく、民主政治国家の義務的投資なのに、我が国(有権者約一億百万人)の平成十五年度予算に計上された電子投票導入補助金はアメリカ(登録有権者約一億三千万人)の約二千分の一(〇・〇五%)、わずか二億四千六百万円に過ぎない。
 地方選挙の電子投票全面実施を禁止した電子投票特例法と、国の義務的投資を怠る予算措置が自治体に過大な導入費負担を課して自治体の導入意欲を喪失させ、電子投票導入を阻害しているのである。
 そんな矛盾した施策では、小泉内閣のEジャパン計画達成が困難どころか、二千年沖縄サミットで議長国の日本が起草した「ITの世界的普及を牽引する」IT憲章にも背反する。その結果、米韓などのIT先進諸国に比べて、現在でさえ劣勢な日本のデジタルデバイド(情報格差)がさらに拡大する国家的損失を蒙る。
 例えば、日本で電子投票を開発、生産しても、政府の需要抑制策のため採算がとれない。一方、自国政府の莫大な補助金による電子投票大型需要でコストダウンが可能となった米韓などの企業が余勢を駆って日本に進出(打診中)すれば、日本企業は太刀打ちできず撤退のやむなきに陥る。世界の政治、産業(特にIT)進歩の趨勢を無視した「井の中の蛙」的鎖国施策が国内産業の国際競争力を衰弱させ、景気を後退させる典型的実例である。
 一方、電子投票導入に多額の連邦補助金を投入するアメリカでは、電子投票の全国普及事業が新規IT産業を創出して景気浮揚、雇用促進の一翼を担い、政治、経済両面に「一石二鳥」の相乗効果を上げている。
 従って、次の四点について質問する。

一 電子投票特例法の趣旨(第一条)である「開票事務等の効率化及び迅速化」を実現するためには、同法第三条及び公職選挙法等の不在者投票に関する規定を早急(統一地方選挙以前)に改正しなければならないと考えるが、改正するのか、しないのか、政府の見解を示されたい。改正するのなら、その提案時期を提示されたい。改正しないのなら、その理由を回答されたい。
二 国政選挙に電子投票を導入しなければ投票制のIT化は達成しないと考えるが、地方選挙に電子投票を導入する電子投票特例法は国政選挙に電子投票を導入する先行試行であるのか、ないのか、政府の見解を示されたい。
三 電子投票を国政選挙に導入するのか、しないのか、政府の見解を示されたい。導入するのなら、何年先の衆参いずれの選挙を想定にしているのか、その想定時期を提示されたい。国政選挙に導入しないのなら、その理由を回答されたい。
四 電子投票導入費は、民主政治国家の基盤「投票制」を改善整備する義務的投資である。地方選挙といえども国政選挙導入の予行演習にもなる初期導入は、国庫負担の補助率を、日本と同じ方式の電子投票システムを導入しているアメリカ並みにアップするべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。大幅な補助率アップが不可能なら、その理由を回答されたい。

 右質問する。



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