衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十五年一月三十一日提出
質問第一三号

新福岡空港と交通政策審議会航空分科会答申に関する質問主意書

 提出者
 小沢和秋    赤嶺政賢




新福岡空港と交通政策審議会航空分科会答申に関する質問主意書


 昨年八月二十三日、国土交通省の「交通政策審議会航空分科会中間とりまとめ」(以下「中間とりまとめ」)がなされ、同分科会は昨年十二月六日、「今後の空港及び航空保安施設の整備に関する方策について」という答申(以下「答申」)を出した。
 この「答申」を受けて、新福岡空港問題が県民の関心を呼んでいる。
 「答申」が出された日に、今里滋九州大学教授は「新空港構想が着々とすすむなか、悠長に是々非々を論議している場合ではない。新空港が国の調査空港に明記された今、自分が立つしかないと考えた」とのべ、「借金残すな、海残せ」「いらんばい!新福岡空港」を合言葉に、県政に挑む考えを表明した。
 福岡県の試算でも概算建設費八千二百億円(交通アクセスなども加えると一兆円をこえる)といわれる新福岡空港建設に対して、「新福岡空港建設は不良債権になる」(福岡県男性/国土交通省「主要地域拠点空港に関するパブリックコメント」より)など国・県の財政破たんを懸念する声もある。
 そこで次の事項について質問する。

(一) 「答申」は、福岡空港について、「将来的に需給が逼迫する等の事態が予想される」とのべている。福岡空港の現況と需給状況をどのように分析し、「将来的に需給が逼迫する等の事態が予想される」と答申するに至ったのか、その根拠と理由を明らかにされたい。「逼迫」の時期はいつ頃からと想定しているのか。そのときの年間旅客数、離着陸回数(ピーク時を含めて)はいくらと予測しているのか。
(二) 「答申」は、福岡空港について「既存ストックの有効活用方策、近隣空港との連携方策とともに中長期的な観点からの新空港、滑走路増設等を含めた抜本的な空港能力向上方策等について、幅広い合意形成を図りつつ、国と地域が連携し、総合的な調査を進める必要がある」とのべている。
 麻生渡福岡県知事は「答申」を受けた昨年十二月六日、「中長期的な観点から新空港建設も含めた形で抜本的な対策まで踏み込んで調査するようになっているのは大きな成果」と評価した。
 本「答申」は、新空港を視野に入れた総合的な調査の必要性を指摘しているが、「中間とりまとめ」からどのような議論があり、どのように分析して、このような結論に至ったのか明確にされたい。
(三) 今年一月六日、麻生渡福岡県知事は、福岡県が新宮町沖への早期建設を前提に本年度、計画していた交通アクセスなどの県独自調査事業(総額約四千六百万円)の実施見送りを表明した。
 同月十四日には、日本共産党・瀬川康之県会議員の福岡県議会国際空港誘致等対策調査特別委員会での質問に、権現昭二福岡県空港対策局長は「新宮沖は基本構想の優位な条件を備えているというふうに整理しておりますけれど、住民の意見を交えながら調査するのであれば、そこ(新宮沖)は白紙で臨んだ方がいい」と答弁した。
 こうした態度や発言を受けて、「福岡県が新空港構想を白紙に」「新福岡空港知事方針転換」などとマスコミで報じられ、新福岡空港建設が「取り下げ」であるかのような印象を福岡県民にあたえている。候補地を白紙で臨むから、交通アクセスなどの福岡県独自の調査事業予算が執行できないだけである。福岡県から「答申」後「新福岡空港建設は中止してほしい」という主旨の連絡が国にあったのか。
(四) 今年一月十四日、麻生渡福岡県知事は「県が新空港建設という立場を取り続ければ、現空港の機能強化や近隣空港との連携を捨てるということになり、国の調査ができなくなる」と発言した。
 国は、福岡県の新空港建設の立場とは関係なく、「答申」にあるように国と地域が連携して、新空港も視野に入れた総合的な調査を実施する方針だと考えるがどうか。総合的な調査をいつから行い、調査期間をどのくらいと考えているのか。
(五) 「答申」は、空港整備及び航空保安システム整備に係る財源問題について「空港の配置的側面からの整備は概成」などとして、「国と地方の負担割合のあり方について検討」し、羽田空港の再拡張事業についても「地方負担を導入する方向で検討」とある。
 この「答申」の方向でいくと、新福岡空港を建設した場合、地元への負担は従来の空港建設より増すと考えるがどうか。
 今国会では、空港整備法の一部を改正する法律案が出される予定で、福岡など国が管理する二種A空港では、これまで国が整備費を全額負担する『空港付帯施設』としていた照明施設と無線施設用地を、滑走路などと同様の『空港基本施設』とし、自治体に三分の一の費用負担を求めるとしている。
 福岡空港の場合、空港整備費について、現在の国と地方の財政負担(額と比率)を示すとともに、来年度、福岡空港は空港南側にILS(計器着陸装置)が完成する予定であり、この改正案が成立した場合、自治体の負担が増えると思われるがどうか。いくら増えるのか示されたい。
(六) 「答申」では、新規事業採択における合意形成手続き明示について、「住民の合意形成等の手続きがルール化されておらず、透明性の向上の観点から問題があるとの指摘もあった」とあるが、どのような問題が生じていたのか。
 今里滋九州大学教授は「事業者側が情報公開して、意思決定過程への市民の具体的参画を実現しなければならない。従来の公共事業の大半は、まず実施決定があり、後で合理化が図られた」と指摘している。
 「答申」は、福岡空港について「幅広い合意形成を図り」とあるが、調査などの情報公開、意思決定過程への市民の具体的参画などは保証されるのか。具体的にどのような手順をふんで合意形成を図ろうと考えているのか示されたい。
(七) 福岡空港の空港処理能力についてお尋ねする。福岡空港の場合、一時間あたりの発着回数の平均値および最高値はいくらなのか、時間帯ごとに示されたい。
 現在の空港処理能力で着陸機と離陸機が交互に離着陸する場合、一時間あたり何回まで離発着が可能なのか。積算根拠も示されたい。
 福岡空港では空港東側に新しい誘導路が完成し、今年一月二十三日から供用がはじまった。来年度、空港の南側にILS(計器着陸装置)が完成する予定である。誘導路の完成、ILSが完成した場合、それぞれ、どの程度空港処理能力の向上が見こまれるのか示されたい。
(八) 福岡空港は、目的地では福岡−羽田間が一番多く約三割をしめる。その羽田間でも一便あたりの座席利用率は六三・七%(二〇〇一年度)で、輸送能力にも余裕もある。昨年十月十日に、日本共産党福岡県議団が調査に赴いた際、国土交通省福岡空港事務所は「『あと数年で容量がいっぱいになるか』というお尋ねでございますが、私どもはそのような認識はもっておりません」とこたえた。
 あと数年で容量がいっぱいになるということはないと思うがどうか。需要予測を出している二〇一二年までは現空港の処理能力で対応できると考えるがどうか。
(九) 扇千景国土交通大臣は昨年十月一日、日本経済新聞記者のインタビューで、「まず現行の福岡空港を最大限活用すべきだ」とのべ、「福岡県などが『現空港の発着能力は限界にきている』と主張していることに対し、『管制システムの見直しで五分ごとの発着を三分ごとにして発着回数を増やす』ことを提案。さらに大型ジャンボジェット機を導入すれば、一回の発着でより多くの旅客を運ぶことができると指摘した」と報じている。
 福岡空港の航空機機材の構成比は四百席以上の構成比が一四%(平成十一年度実績)で、羽田の二五%、新千歳の二三%と比べても少ない。誘導路やILS(計器着陸装置)の完成で、空港処理能力もあがる。
 「需給が逼迫」したと仮定しても、大臣が指摘するように航空機機材の大型化や管制システムの見直しをすれば、現福岡空港で対応できると思うがどうか。
(十) 総務省行政評価局が二〇〇一年五月に発表した「空港の整備等に関する行政評価・監視結果報告書」によると、「新設あるいは滑走路延長事業を実施し平成元年度以降十年度までに供用開始した空港で、需要予測値と利用実績値の対比が可能な一五空港のうち九空港で実績値が予測値を下回り、うち四空港では予測値の半分以下の実績」と過大な需要予測が指摘された。
 事実、一九九八年度開港した佐賀空港では、年間旅客数を二〇一二年度八十一万人(一九八六年度予測・佐賀空港飛行場設置許可申請書)と需要予測したが、二〇〇一年度三十三万人の実績と大きく隔たりがある。二〇〇一年度で歳入は着陸料など約七千九百万円、歳出は施設維持費など約四億五百万円で、過大な需要予測が自治体の財政を圧迫している。
 佐賀空港の場合、需要予測が大きく外れた要因は何か。国土交通省として、過大な需要予測に対して、具体的にどう改善しようとしているのか。
(十一) 福岡空港の年間旅客数は、国内線が一九九九年度千七百九万人、二〇〇〇年度千七百四万人、二〇〇一年度千七百四十一万人と推移している。国際線も含めると、一九九九年度千九百五十万人、二〇〇〇年度千九百五十六万人、二〇〇一年度千九百五十万人と、ここ三年旅客数の伸びは頭打ちである。国内線では福岡空港と現北九州空港の年間旅客数をあわせると、二〇〇一年度で千七百六十万人となっている。
 ところが、福岡空港と二〇〇五年度開港予定である新北九州空港の国内旅客数の需要見通しは、二〇〇七年度で福岡空港千八百十万人、新北九州空港二百八十三万人、合計二千九十三万人、二〇一二年度で福岡空港二千百六十万人、新北九州空港三百二十八万人、合計二千四百八十八万人となっている。全国人口のピークは二〇〇六年であり、新北九州空港の開港で、福岡空港の旅客数も移る。二〇〇一年度の福岡空港と北九州空港の実績からみても、過大な需要見通しといえないのか。調査をする中で需要見通しを見直しする考えはないのか。
(十二) 北部九州には、福岡空港、佐賀空港、北九州空港の三空港があるが、福岡空港に乗客が集中している。その要因は、便数の多さ、交通アクセスもあるが、国が一九九五年に幅運賃制度を導入し、それに端を発して航空会社による割引運賃合戦が行われ、福岡発着便が価格設定された影響も大きいと考えるがどうか。
(十三) 福岡県も参加する福岡空港調査会が作成した「福岡空港の国内線利用者の内訳」によると、北九州都市圏で福岡空港を利用するものは九・五%、筑豊地方圏も含めると二百万人をこえるとされる。新北九州空港が完成すると、山口県、大分県利用者とあわせ、これらの乗客が移る可能性を有している。羽田、大阪、名古屋路線につぐ多便数の福岡−鹿児島路線(一日往復十三便・二〇〇三年二月)は、二〇一三年予定の博多−西鹿児島間の九州新幹線が全面開通で、利便性から考えても、激減・廃止につながると思われる。すでに、今年四月からエアーニッポンが福岡−鹿児島路線の休止を表明し、往復四便減少する。
 航空運賃にみられる福岡空港に集中するような政策誘導をせず、近隣空港や他の交通手段と機能分担をすれば、福岡空港が「将来的に需給が逼迫する等の事態」は回避できると考えるがどうか。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.