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平成十五年四月八日提出
質問第四八号

沸騰水型原子力発電所の炉心シュラウド交換作業における労働者の被曝状況および再循環系配管の交換作業・点検作業における労働者の被曝状況に関する質問主意書

提出者  北川れん子




沸騰水型原子力発電所の炉心シュラウド交換作業における労働者の被曝状況および再循環系配管の交換作業・点検作業における労働者の被曝状況に関する質問主意書


 「電離放射線障害防止規則」は、原子力発電所(原発)の定期検査など、放射線にさらされるおそれのある業務に従事する労働者の放射線障害を防止する目的で一九五九年に制定されたものである。その後、放射線の人体に対する影響は従来考えられていたより厳しく見るべきであることが、だんだんと明らかになり、それにともなって、同規則も逐次、改正が行われてきた。
 放射線の人体に対する影響に関する最近の大きな見直しの一つとしては、国際放射線防護委員会(ICRP)による一九九〇年の勧告(ICRP公報六〇として刊行)がある。放射線業務従事者に対する年間の線量限度を五〇ミリシーベルトから二〇ミリシーベルトへと引き下げる、という内容を含むものである。
 国内においても、ようやくではあるが二〇〇一年三月に、この一九九〇年勧告を踏まえて、電離放射線障害防止規則の改正が行われた。
 厚生労働省(安全衛生部労働衛生課)は、その改正の内容の理解をはかる目的で、二〇〇一年十一月十二日に「電離放射線障害防止規則の解説」(中央労働災害防止協会発行)を刊行している。
 そこで、この規則の改正内容のうち作業員の健康管理に関すること、および、通常の放射線業務作業(事故時の緊急対応ではないという意味で)のうち最も被曝線量が高い作業の一つとしての沸騰水型炉心シュラウド交換工事と再循環系配管交換工事ならびにこれらの点検作業の状況について質問する。

一 電離放射線障害防止規則の健康診断について
 (一) 「電離放射線障害防止規則の解説」(以下、「解説」)の二五ページで、「過去の電離放射線健康診断の結果報告を検討した結果を基に」と書かれているが、この「結果報告」とは何か、また、それを「検討した」のはどのような機関か、明らかにされたい。
 (二) 「解説」の二五ページで、「眼及び皮膚の検査は、改正後は六月以内ごとに一回となった」とあるが、三月以内に一回がなぜ六月以内ごとに一回となったのか、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告の該当する部分を示すなど、その根拠を明らかにされたい。
 (三) 「解説」の二五ページで、「一年間で五ミリシーベルトを超えることのない労働者については、定期の健康診断において、原則として、血液、眼及び皮膚の検査は省略できることになった」と書かれているが、原則として省略できることにした理由を明らかにされたい。
 (四) ICRPの放射線被曝による晩発性障害の考え方は、しきい値がなく確率的にあらわれる、そして、一年間で五〇ミリシーベルトの被曝と、毎年五ミリシーベルトずつを一〇年の被曝とは、同等の発生確率になるというように、障害の発生確率は蓄積する、というものである。それ故、「一〇ミリシーベルトを五年間」の人は毎年健康診断を受け、他方「五ミリシーベルトを一〇年」の人は一回も受けないということになったとして、同じ危険性を有しているのに、一方は診断を受け、他方は受けないということになる。一年間に五ミリシーベルトを超えることの無い労働者であっても長期間被曝労働に従事すれば発ガン等の危険は高まることになるのであり、何年かごとには血液の検査等を省略せずに行うべきと考えるが如何か。見解を明らかにされたい。
 (五) 「解説」の一五三ページには、解釈例規の(4)として「検査の一部又は全部を省略でき、・・・その省略等の可否を適切に判断できるように、放射線業務従事者の『自他覚症状の有無』を新たに調査項目として加えることにした。なお、『その評価』を加えたのは・・・検査の省略等の可否を判断するものであることを明確にしたものであること」と記載されている。そして一五四ページに(9)として、「省略等の可否の判断については、別途示す(基発第五六八号、基安労発第一八号)」、としている。
 三九四ページ以降に掲載されている基発第五六八号の第1の2の(2)のイに基づき聴取を行うとき、調査票や問診票のようなものはあるのか。また、誰が聴取し、その記録はどのように残すのか、明らかにされたい。
 (六) 基発第五六八号の第2の2の(1)にある二五〇ミリシーベルト以上、一〇〇ミリシーベルト以上の数字の根拠は何か、明らかにされたい。
 (七) 雇入れ時に正常の範囲内であった場合、その後省略を続けることにより、何年も検査をしないで健康状態をチェックできなくなることがあるが、これでは正常の範囲外になった場合も見過ごすことになり、健康診断の意味をなさないことになるが如何か。見解を明らかにされたい。
 (八) 四〇二ページ以降に掲載されている基安労発第一八号に関するもので、問診票のようなものはあるのか。また、疲れやすいという自覚症状があれば省略不可というような、省略の可否を評価するための基準のようなものの有無を明らかにされたい。
二 沸騰水型原子力発電所の炉心シュラウドに関して、福島第一原発三号炉で一九九七年五月〜一九九八年九月にかけての定期検査中に、ジェットポンプなどの炉内構造物とともに取替工事が世界で初めて行われた。その後、福島第一原発一号炉(二〇〇〇年十二月〜二〇〇一年十一月)、同二号炉(一九九八年八月〜一九九九年八月)、同五号炉(一九九九年十二月〜二〇〇〇年十月)、さらには敦賀一号炉(一九九九年八月〜二〇〇一年三月)、島根一号炉(二〇〇〇年五月〜二〇〇一年四月)でも、同様のシュラウド取替工事が行われて終了している。これら五基の原子炉で行われた工事に関して、ごく部分的には、原子力学会誌や国際放射線影響学会のシンポジウム予稿などで、労働者の被曝線量に関するデータが公開されているものの、全体像が必ずしも明らかとはいえない。
 (一) これらの五基の原子炉において、シュラウド取替作業にかかわった労働者の被曝線量について
  @ その定期検査全体の実際の総被曝線量はどれだけだったか、明らかにされたい。
  A シュラウド取替作業の総被曝線量はどれだけだったか、明らかにされたい。
  B 当該の定期検査において、被曝線量の人数分布を「原子力施設における放射性廃棄物の管理状況および放射線業務従事者の線量管理状況について」の形式で、原子炉ごとに明らかにされたい。
 (二) 前記五基それぞれの原子炉のシュラウド取替作業における作業環境について
  @ 炉内の実効線量率はどうだったのか。測定日時、測定器具、炉内中央部の上部・中部・下部、炉壁付近(炉壁からの距離も明記のこと)の上部・中部・下部、それぞれについて明らかにされたい。
  A 被曝線量の多かった作業はどの作業か、明らかにされたい。
 (三) 左記の作業件名ごとの個人最大線量と総被曝線量を明らかにされたい。
     炉心シュラウド取替、ジェットポンプ取替(敦賀以外)、ジェットポンプライザー取替、スパージャー等取替、ノズルセーフエンド取替、炉内構造物切断、化学除染、炉内遮蔽取り付け、その他。
 (四) 炉内の作業において外部被曝低減対策はどうなっているか明らかにされたい。
 (五) 炉内の空間中の放射性物質の濃度とその測定方法、頻度を明らかにされたい。
 (六) 炉内の作業において内部被曝防止対策はどうなっているか明らかにされたい。全面マスク着用による作業回数と時間を明らかにされたい。
 (七) 化学除染にともなう廃樹脂の放射能汚染の程度について、放射能の種類、重量、放射能量を明らかにされたい。
三 シュラウド取替作業で発生した放射性廃棄物について、どういう種類(起源の機器など)のものが、どういう状態で、どういう容器に入れられて、どれだけ保管されているのか、保管場所はどこか、明らかにされたい。
四 再循環系配管の交換作業について
 (一) 労働者の被曝状況(集団、個人等の線量について、シュラウド取替に関する被曝線量の質問と同等の内容)および作業環境(線量率等)を明らかにされたい。
 (二) 再循環系配管の点検作業においてはどうなっているのか明らかにされたい。

 右質問する。



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