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平成十五年九月二十六日提出
質問第一二号

川辺川ダム建設事業計画と球磨川水系治水事業に関する質問主意書

 提出者
 小沢和秋    赤嶺政賢




川辺川ダム建設事業計画と球磨川水系治水事業に関する質問主意書


 今年五月十六日、福岡高等裁判所において川辺川利水訴訟控訴審判決が下され、国が川辺川ダム建設を前提に進めようとした利水事業が土地改良法の定めで必要な対象農民の三分の二の同意率に達しておらず、違法であると断じられた。この判決は、国が上告を断念したことで確定している。
 川辺川ダム建設をめぐっては、事業認定後に漁業権や五木村内の土地について収用裁決申請が国から熊本県収用委員会に提出され、既に二年ごしで審理が行われてきた。しかし、事業計画の前提となる利水事業計画が無効になり、農林水産省から「新利水計画案を提出する」と表明されているものの裁決申請の前提条件が宙に浮いてしまい、県収用委員会の塚本侃会長からは「ダム計画に著しい変更が生じたと収用委が判断した場合は、土地収用法に定める却下裁決もありうる」(「熊本日日新聞」本年五月二十七日付)との見解が示されている。
 更に来年度予算の概算要求において国土交通省は、ここ五年間毎年度ダム本体工事予算を一億円から九億円計上してきたにもかかわらず、今回は「熊本県収用委員会における審理状況、新利水計画策定に向けた取組み状況等を踏まえて」本体工事費を要求しなかった。
 土地収用法の目的は、第一条において「公共の利益となる事業に必要な土地等の収用又は使用に関し、その要件、手続及び効果並びにこれに伴う損失の補償等について規定し、公共の利益の増進と私有財産との調整を図り、もって国土の適正且つ合理的な利用に寄与すること」にあるとしている。この条文に照らせば多目的ダム事業である川辺川ダム建設事業計画のうち、「公共の利益となる事業」を構成する重要部分である「利水計画」が存在せず、国としても来年度に予算も計上しないことから、土地収用法上の目的を喪失していると言わざるを得ない。
 また、球磨川中流域では、「市房ダムや荒瀬ダムができた後、水害がひどくなった」との理由で川辺川ダム建設に反対している住民が多い。現に坂本村では議会、村長ともに反対している。実際、芦北郡芦北町告薄口の集落を調べたところ、一九六五年七月六日の大水害以降、七一年八月五日、七二年七月六日、八二年七月二十五日、九三年八月一日にも家屋二階部分に至る洪水被害を受けている。明治時代以来同集落に代々住んできたというある高齢の女性は、「私も五十年以上ここに住んでいるが、ダム完成以前には二階が漬かるような洪水は無かった。せめて生きているうちに安全にしてほしい」と切実に訴えていた。こうした切実な要求があるにもかかわらず、一番水位の高かった八二年の時はおろか、六五年の水害レベルに対応できる堤防工事や集落嵩上げ事業さえ着手されないまま、現在に至っている。国土交通省八代河川国道事務所の説明では、「こうした支流の合流地点で嵩上げ等をすべきところは球磨川中流域の球磨村、芦北町、坂本村に多数あるが、事業が完成したのは八箇所、現在着手は二箇所のみ」だという。
 以上を踏まえ、この際長年にわたり漁民、住民の反対を受けてきた川辺川ダム建設事業は中止すべきであり、新たな利水計画策定や球磨川水系の治水事業については農民、住民、漁民等の関係者の意見を十分に反映させて検討していくべきだと考える。また、球磨川中流域の水害を防ぐための河川改修、嵩上げ工事を急いで進めるべきだと考える。
 よって、以下の通り質問する。

(一) 土地収用法の前提である「公共の利益となる事業」の構成要素となる「利水計画」が違法と確定し、それに代わる新利水計画が存在せず、本体工事費の予算計上も断念した川辺川ダム建設事業計画について、国は熊本県収用委員会に提出している裁決申請を取り下げるべきと考えるが、どうか。
(二) 違法と断定された利水計画に関係する相良村等の地区では、旧来から川辺川より引いた六角水路等で田畑への用水を賄ってきた。これらの水路は川辺川ダム事業計画の推移の如何にかかわらず、地域の農業に不可欠な役割を果たしているのであり、これらの老朽化に対応した補修工事に対して国は補助すべきではないか。
(三) 球磨川中流域での支流合流点等で、過去の水害を踏まえて河川改修や嵩上げ工事をすべき箇所はどれくらいあり、工事の進捗状況はどうなっているのか。今後、人命と財産を保護するため、早急に工事を進めるべきと考えるが、どうか。検討中のものを含め、今後の計画等を詳細に示されたい。

 右質問する。



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