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平成十五年十月六日提出
質問第二七号

文部科学省と東京都の「特別支援教育」に関わる調査の教育的意義に関する質問主意書

提出者  保坂展人




文部科学省と東京都の「特別支援教育」に関わる調査の教育的意義に関する質問主意書


 東京都教育委員会は平成十五年七月十一日、「通常の学級に在籍する児童・生徒の学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症等に対応した教育的支援に関する研究」に関わる調査実施依頼を各区市町村教育委員会に命じた。これにより、全都の普通学級の児童生徒約七十五万人(二〇〇七校)を対象に調査が実施された。この調査は、昨年、文部科学省(以下、文科省とする)が全国の児童・生徒約四万人を抽出して行ったものと同様の内容である。
 この調査内容は、文科省に依頼された調査研究会が検討し作成したもので、各学級担任が点数化されたチェックリストに従って、クラスの子ども一人一人について七十五項目にわたり評価・集計するものである。それらの項目には、「日々の活動で忘れっぽい」「聞き違いがある」「大人びている」「常識に乏しい」「独特の目つきをする」などがある。担任教員の主観でしか答えようのない内容を含み、これらの結果によってその子の「障害」が判定されかねないような調査が本人や保護者に知られることもなく実施され、その結果が報告されることは人権侵害であると、保護者、教職員団体、市民団体などから中止を求める声があがった。しかし東京都は、「文科省も実施していることであり、問題はない」と、これらの声を無視して実施を強行した。
 本年三月に文科省の特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議は「今後の特別支援教育の在り方について」の最終報告を出し、五月には東京都心身障害教育改善検討委員会が「これからの東京都の心身障害児教育の在り方について」の中間まとめを発表している。これらによれば、これからの「障害」児教育は、「特殊教育」から「特別支援教育」に変わっていくとあるが、今回のような調査を実施しながら進められる「特別支援教育」は、世界のノーマライゼーションの流れに逆行し、子どもたちを能力により差別、分離していくものになると危惧をする。
 従って、次の事項について質問する。

一 調査項目は子どもたちをマイナスの視点でとらえ、評価するようになっている。問題であると反対した教員も調査結果の提出を強制された事実がある。このような調査をすることによって、教員の子どもを見る目がゆがめられる恐れがあり、教育の在り方として問題である。このような調査項目がつくられた経過の説明と、このような調査が実施されることの教育的影響について政府の見解を明らかにされたい。
二 この調査は、本人や保護者に知らされないまま実施され、その結果が報告された。東京都は「人数の把握であり、個人名は特定されないので問題はない」と答えているが、実際に教員は一人一人の子どもを思い浮かべて作業し答えている。保護者や子どもとの信頼関係を崩すものであり、プライバシーの侵害であると訴えている保護者も多くいる。このような調査を、保護者や本人に知らせることなく実施することは人権侵害ではないか。今後もこのような調査を実施するのか。
三 LD、ADHD、高機能自閉症などの診断は医師でも難しいとされている。今回の調査では、充分に「障害」についての認識や専門的知識のない担当教員がLDなどの判定をしている。医師でもない者たちが、この程度の調査でLDなどの発見ができるとの誤解や偏見を与える危険がある。
 また、調査項目にあげられた子どもの行動などは学級の状況や担任の主観によって判断が大きく異なる。これらの問題を指摘し、質問に至った保護者に対して、「上からの指示である」としか答えられなかった担任教員、管理職、教育委員会担当者がいたとも聞いている。これらの実態から信憑性に大きな疑問を感じる調査であるが、文科省の発表した普通学級内におけるLDなどの割合が六・三%であるという数字が一人歩きしているように、今回の調査も結果として出された数字が一人歩きしていく危険がある。これらの数字をもとに、新たな障害児探しが進められるようなことがあってはならないと考えるがどうか。
四 今回の調査から、文科省の「特別支援教育」とは、教員や専門家の視点で学習面や行動面で問題があるとされた子どもは「特別支援教育」の対象とされ、普通学級に籍はあっても別室で教育を受けるようなシステムを進めていくものであると受け止めざるをえない。これは世界のノーマライゼーションの流れに逆行するものであると考えるがどうか。どんな支援を必要とし希望するかを判断する主体は本人、保護者であると考えるが政府の見解はどうか。

 右質問する。



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