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平成十六年一月二十六日提出
質問第六号

インフルエンザの予防接種に関する質問主意書

提出者  阿部知子




インフルエンザの予防接種に関する質問主意書


 かつて幼児や学童に対して強制接種が行われてきたインフルエンザワクチンは、有効性や安全性の点で問題があることから、一九九四年に予防接種法の対象から除外された経緯がある。その後、高齢者についてある程度の有効性が認められるとする一部の学者の主張を根拠に、二〇〇一年の予防接種法改正で高齢者のみが対象となった。
 今なお、インフルエンザワクチンの有効性は明確となっておらず、その一方で重大な健康被害が数多く報告されているにも関わらず、厚生労働省は副作用情報を国民に隠蔽したまま、接種の勧奨を続けてきた。最近では、SARSや鳥インフルエンザを理由に、インフルエンザ予防接種キャンペーンを強化しているが、その科学的根拠は明確にされていない。
 そこで、予防接種の有効性や安全性等について、以下質問する。

一 厚生労働省国立感染症研究所が作成したインフルエンザQ&Aでは、「インフルエンザワクチンを接種した方がよいのはどのような人でしょうか?」という問に対し、「基本的にはインフルエンザの発症と重症化を防ぎたい方すべてに、接種をお勧めします」とし、乳幼児・学童を含むすべての国民に対して予防接種を勧奨している。
 (一) 改正予防接種法(平成一三年法律第一一六号)に基づくインフルエンザの予防接種の対象は高齢者に限定され、しかも努力義務は課せられず希望者が自己判断に基づき実施することとされていることにかんがみると、右記インフルエンザQ&Aに基づくすべての国民への接種の勧奨は、立法者の意思を無視した対応であると考えるが、政府の見解如何。
 (二) すべての国民に対してインフルエンザ予防接種を勧奨する科学的根拠を、個別具体的に示されたい。
 (三) 右記インフルエンザQ&Aにおいて、厚生労働省はすべての国民に対しインフルエンザ予防接種を勧奨しているが、予防接種法の対象者以外の者が接種を受けた後に健康被害が発生した場合、政府は如何なる法的根拠に基づいて、如何なる救済措置を講じるのか。
二 痴呆などにより本人の意思確認ができない高齢者に対するインフルエンザ予防接種の強制はあってはならないことであり、この点については二〇〇一年の予防接種法改正時の国会審議において大きな争点となり、厚生労働大臣及び健康局長は「最終的に高齢者の意思が確認できない場合には、接種されることのないよう、市町村等に対し指導を徹底してまいりたい」と答弁している。
 しかしながら、現実には高齢者施設等において、高齢者の意思確認をすることなく半ば強制的に接種が行われている実態があることについて、政府の認識如何。また、かかる強制接種が行われることのないよう、医療機関や高齢者施設等に対し指導の徹底を図るべきと考えるがどうか。
三 厚生労働省のホームページに掲載された「インフルエンザQ&A」においては、明らかに虚偽と考えられる記載が散見される。
 (一) 「一般の方々のために」の「Q六」において、「予防接種を受けないでインフルエンザにかかった人の七〇%から八〇%の人は、インフルエンザの予防接種を受けていれば、インフルエンザにかからずにすむか、かかっても症状が軽くてすむという有効性が証明されている」とされている。これは予防接種の有効性を不当に過大評価した記載であると考えるが、当該記載の科学的根拠となる疫学的なデータは存在するのか。するならば個別具体的に示されたい。
 (二) 「医療従事者の方のために」の「Q二一」において、予防接種後の死亡事故について、「これまでの我が国での統計では、インフルエンザワクチンによる可能性があると認定された死亡事故は約二千五百万接種あたり一件」とされている。しかし、医療機関から厚生労働省に報告されただけでも、二〇〇〇年に三件、二〇〇一年に四件、二〇〇二年に五件の死亡事例が存在することを考えると、Q&Aの記載は不当な虚偽の記載であることは論を待たない。インフルエンザワクチン接種後の死亡事故の発生確率についての政府の見解如何。
 (三) 「医療従事者の方のために」の「Q二一」において、「その他ギランバレー症候群、急性脳症、肝機能障害、黄疸、喘息発作、痙攣、紫斑などの報告がありますが、その関連については明らかな証拠は確認されていない」とされている。しかし、これらの健康被害と予防接種の関連については、ギランバレー症候群や急性脳症などの重大な健康被害が毎年数多く報告されており、因果関係があることは議論の余地がないと考えるが、政府の見解如何。
四 新聞報道によれば、厚生労働省はWHO(世界保健機関)の報告(二〇〇三年七月三日の第九四報)を根拠に、インフルエンザ予防接種を国民に推奨しているとされている。
 (一) WHO第九四報を根拠に、厚生労働省がインフルエンザ予防接種を推奨しているのであれば、如何なるバックグラウンド(年齢層や職業等)の者に推奨しているのか示されたい。
 (二) WHO第九四報は、SARSとの混同による混乱を避けるためにインフルエンザの予防接種を推奨したものであるが、そもそもわが国においてはインフルエンザの有効性が未だ科学的に証明されておらず、SARS対策の一環として一般国民にインフルエンザ予防接種を推奨するのは不適当と考えるが、政府の見解如何。
 (三) 仮にインフルエンザ予防接種に有効性が認められるとしても、日常的に感染患者と濃厚に接触する医療従事者にこそ予防接種を勧告すべきである。実際、WHO第九四報は医療従事者に対して予防接種を強く勧告したものであり、一般市民への予防接種を推奨するものではないと考えるが、政府はこれまで医療従事者に対して予防接種を勧告したことはあるか。また、今後、勧告する予定はあるのか。
五 厚生労働省国立感染症研究所が作成した鳥インフルエンザに関するQ&Aに記載されているとおり、現在使用されているヒトのインフルエンザワクチンはH5やH7などの鳥インフルエンザに対しては効果が無いことは言うまでもない。しかしながら、厚生労働省は「高病原性鳥インフルエンザ対策における留意点について」(平成一六年一月一五日厚生労働省健康局結核感染症課長)通知において、鳥インフルエンザに感染したトリと接触した者等に対して、インフルエンザ予防接種を勧告している。
 (一) 一月一五日通知において、トリと接触した者の体内において高病原性鳥インフルエンザウイルスと他のインフルエンザウイルスの遺伝子の再集合が起きるリスクがあると主張するが、トリと接触した者の体内で当該再集合が起きるリスクはどの程度の確率であるのか定量的に示されたい。
 (二) 現行のインフルエンザワクチンは鳥インフルエンザに対して効果が無いにも関わらず、トリと接触した者に予防接種を勧告するのは、如何なる効果を期待したものであり、かつ、接種を受けることにより当該効果が達成される見込みはどの程度であるのか定量的に示されたい。また、当該効果を裏付ける科学的根拠を個別具体的に示されたい。
 (三) 一月一五日通知に基づきインフルエンザの予防接種を受けた者に健康被害が発生した場合、国の勧告により実施された予防接種であるので、接種を希望する高齢者が予防接種法に基づき自己判断で予防接種を受けた場合よりもさらに手厚く救済する必要があると考えるが、政府の見解如何。
六 厚生労働省は、鳥インフルエンザ対策として、一月一五日通知においてワクチンと並び抗インフルエンザ薬の予防投与をWHOの勧告を根拠に勧奨している。また、厚生労働大臣は新型インフルエンザ対策としてオセルタミビルの国家備蓄を検討していると報じられている。
 (一) 一月一五日通知で投与を勧奨している抗インフルエンザ薬の具体的な名称を示されたい。また、当該抗インフルエンザ薬は如何なる作用機構により如何なる効果を期待したものであるのか、その裏づけとなる個別具体的な科学的根拠とともに示されたい。
 (二) オセルタミビルは、新型インフルエンザ対策として如何なる作用機構により如何なる効果が期待されるのか。また、投薬を受けることにより当該効果が達成される見込みはどの程度であるのか、その裏づけとなる個別具体的な科学的根拠とともに定量的に示されたい。
 (三) 鳥インフルエンザおよび新型インフルエンザの予防または治療を目的として既存の抗インフルエンザ薬を使用した場合に想定される副反応とその発生確率を各薬剤ごとに示されたい。

 右質問する。



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