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平成十六年二月三日提出
質問第一三号

ITER(国際熱核融合実験炉)の六ヶ所村誘致に関する質問主意書

 提出者
 吉井英勝    高橋千鶴子




ITER(国際熱核融合実験炉)の六ヶ所村誘致に関する質問主意書


 二〇〇二年六月四日〜六日の三日間、フランスのカダラッシュで日本、EU、ロシア、カナダ(アメリカに代わって新しくITER計画に参加した国)の四極の第四回政府間協議が開かれ、ITER建設の候補地として、二〇〇一年六月のモスクワの会合でのカナダのクラリントン提案に続いて、スペインのバンデロス、フランスのカダラッシュ、日本の六ヶ所村の提案があった。それ以降、「サイト共同調査」、サイトの評価を経て今日では、カダラッシュか六ヶ所村かの絞り込みの段階になり、今年二月にも決定されるとも伝えられている。
 二〇〇二年五月三十一日の「国際熱核融合実験炉(ITER)計画について」という閣議了解時の留意点では、「立地促進のために特段の財政措置は講じないこと」、「関連する公共事業については・・・国による特別の財政措置は講じないこと」、「(誘致を希望した)地方公共団体に対して、ITER計画の円滑な実施を実現するため、所要の措置を講ずるよう要請すること」を付記している。
 またその二日前の五月二十九日の総合科学技術会議における「国際熱核融合実験炉(ITER)計画について」が、三十一日の閣議了解の基になっているが、この文書の中では、「経費分担については・・・経済規模を反映したものとすべき」「最終的な参加ないし誘致は、政府間協議の推移や国内外の情勢の進展を踏まえ、費用対効果を考慮しつつ決定することが適当」とした。
 これ以降の約二年間に、政府は関係各国とどのような協議を行ったのか。それぞれの協議内容とその中で政府としてどのような主張を行ってきたのか。これらの事が明らかにされなければならない。
 従って、次の事項について質問する。

一 ITER(国際熱核融合実験炉)の研究推進については、本来、工学設計を終えた段階で、建設に移ることのできる炉材料がすでに開発済みか、将来の実用炉の開発に繋がる現実的に意味のあるものとなりうるか、コスト計算が適切なのか、日本に誘致した場合の財政負担がどうなるのかなど、誘致場所の決定の前に、政府からITERに関する資料を総て国会に提出し、各分野の専門家などの参考意見もききながら、国会として深い検討がなされるべきものである。
 政府は、ITERを日本に誘致することや候補地として六ヶ所村と決めるのに、国会は考える必要はなく、国会は協定書の批准を承認するだけでいいという考えなのか。
二 いま問題になっている六ヶ所村とカダラッシュの二つの候補地について、どのような評価項目を挙げているのか。またその各評価項目について関係国の判断はどのように示しているのか。
三 日本に誘致する場合、
 @ ITER本体工事費と日本負担。
 A 用地取得費と日本負担。
 B 研究者等関係者の住宅、家族の教育施設その他の生活施設等の建設費と日本負担。
 C 動力費と日本負担。
 D その他維持管理費と日本負担。
 はそれぞれ幾らになるのか。
 結局、毎年度の日本の財政負担と全体での財政負担は幾らになるか。
 一方、閣議了解時の留意点に挙げた、誘致希望自治体に対して、「ITER計画の円滑な実施を実現するため、所要の措置を講ずるよう要請すること」を付記しているが、政府は青森県や六ヶ所村などに対しては、どのような措置を求めているのか。
 国は、日本の六ヶ所村誘致に幾ら使ってきたのか。
四 日本と欧州との誘致場所をめぐる対立の妥協案として、「物理的な研究施設(本体)」と「情報センター」を分離建設する案が取り沙汰されているが、具体的に何時の協議会で、どのような内容の検討が行われ、日本政府としてどのような見解をもっているのか。
五 ITERのコストを一兆円から半分にした、そのためにプラズマ主半径を建設コストを低減するためにおよそ半分に短縮している。
 ITERのプラズマ主半径がもとの八・一mの時、さらに七・一m、六・一m、五・一m・・・と短縮した時に、建設コストはそれぞれ幾らに低減するのか。
 その結果、主半径ごとに当初計画の実験目標値に較べて、プラズマ密度、エネルギー増倍率、燃焼時間、中性子負荷はそれぞれ幾らになるのか。
 建設コストの削減が中心になって、当初の実験目標が達成できなくなると、それは次の段階の実証炉に工学的、技術的に繋がるものにならないのではないか、あるいは国民の財政を投入するのに見合う意味のある研究になるのかどうかも問われる。こうしたことに検討が必要となるのではないか。どのような検討を行ったのか。
六 日本学術会議核融合研究連絡委員会や物理学研究連絡会などで、検討ワーキンググループを作り、物理学、工学の関係する研究者の間でITERに関する議論がなされた。
 これは、ITER計画の「当事者」や「推進」の研究者と、「中立的」「批判的」な人の多い物理学の研究者の間で議論されたこと、ITER計画を契機に「巨大科学計画に対する考え方、大型国際共同計画に対する基本的考え方、我が国に於ける大型計画の進め方」の議論を行って、合意した共同の報告書を纏めた意義は大きいと思う。
 両者の間で「ITER計画の基礎科学としての意義及び核融合工学に於ける技術開発上の役割と波及効果」について認識の一致をみた。
 同時に、物理学者の方は、ITER計画の推進を全面的には認めるに至っていないし、学術会議としてエネルギー問題や環境問題として検討を行う必要があること、さらに他の大型計画と比べて基礎科学としての重要性が高いかどうか十分吟味するべきだとしたのではないか。
七 原子力委員会の「開発戦略検討分科会報告書」で初めて、核融合炉の環境への影響を検討しだした。D+T→4He+nブランケット内で7Li+n→7He+T+nトリチウムの半減期は十二・三年、β線の最大エネルギーは18・6KeV。紙一枚で遮蔽できるが、体内に取り込むと危険であること。強力中性子線でブランケットが破損した時が危険であるとした。
 学術会議核融合研究連絡委員会では「報告書」を出して、例えば、「トリチウム生物影響」について、広島大学原爆放射能医学研究所を一つの拠点に、トリチウム生物影響関連実験を行うことなどを提起していたが、この研究はどのように行われたのか、その成果物としてどの論文の中で、日本に誘致した時に、「全く心配はない」と結論づけられたのか。
 また、文部科学省ITER安全規制検討会の「報告書」で、ITERの安全は十分確保されると考える根拠を示されたい。
八 学術会議核融合研究連絡委員会の「報告書」では、核融合炉のブランケットは、燃料であるトリチウムの生産と回収、エネルギー転換、中性子遮蔽など複合的機能を果たさねばならないことが示されている。高熱負荷、高中性子負荷に耐えられる材料の開発に必要となる、材料試験を行えるITERより強度の強い中性子源(設備)はすでに作られて、その実験は始まっているのか。
九 核融合についてヘリカル型、レーザー核融合など様々なタイプのものがあり、実現可能性もコスト面からの可能性もこれからの研究にかかっている。ITER誘致が他の核融合の研究や、大学や試験研究機関における様々な基礎研究の予算を削減することにならないと確約するのか、明らかにされたい。

 右質問する。



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