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平成十六年四月九日提出
質問第七四号

揮発性有機化合物の排出規制に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




揮発性有機化合物の排出規制に関する質問主意書


 トルエン、キシレン、ホルムアルデヒドなど約二〇〇品目にのぼる揮発性有機化合物(VOC)は、一部に発ガン性を有するものがあるばかりでなく、人の健康への影響が明らかな光化学オキシダントや浮遊粒子状物質(SPM)の原因物質の一つとなっている。わが国におけるVOCの年間排出量は、溶剤使用一三四万トン、移動発生源一八万トン、給油所一四万トン、石油化学製品製造九万トン、石油製造・出荷一〇万トンと、総計一八五万トンにものぼっている。政府は、今通常国会に、固定発生源からのVOCの排出濃度規制を主な内容とする大気汚染防止法の一部改正案を提案しているが、大気汚染公害訴訟判決ではSPMの健康影響を明確に認めて排出差し止めが認められており、自動車排ガスのディーゼル排ガス微粒子(DEP)の排出削減とともに、SPMを生成するVOCの排出削減は緊急の課題ともなっている。
 したがって、次の事項について質問する。

一 これまでの揮発性有機化合物の削減対策について
 1 わが国では、大気汚染防止法において、九七年から事業者による自主的な有害大気汚染物質対策を推進してきたが、個々の事業所ごとに大きな格差があって、必ずしも全部がうまくいっているとはいえず、大気の濃度がさがらない状況になっている。また、事業者が自主管理をしている一二物質のうち一一物質がVOCに該当しているが、発生量は全国で三万八千トン程度で、固定発生源からのVOCの発生量一五〇万トンの二・五%程度にすぎず、一般的に大量に使用されているトルエン、キシレン等は入っていない。
 そこで、これまでの事業者による自主的な取り組みによって、固定発生源からのVOCの排出量をどのくらい削減できたのか。
 2 また、わが国では、化学物質排出把握管理促進法(PRTR)において、二〇〇一年から事業者からの化学物質排出量の届け出と国による公表が行われており、産業界からはこれまでのPRTR法の実効をよく眺めた上で規制を検討すべきという意見が強く出されていた。しかし、そもそもPRTR制度は排出抑制を直接の目的としたものではないため、VOCの排出削減としては不十分である。
 そこで、これまでのPRTR法にもとづく事業者の取り組みによって、VOCの排出量をどのくらい削減する効果があったのか。
 3 さらに、わが国では、移動発生源である自動車の排出ガス規制において、七三年から炭化水素の規制が行われており、二〇〇五年度規制によって九八%程度の炭化水素の削減が可能になるとしている。しかし、VOCの排出総量のうち依然として移動発生源からの排出量は一〇%の一八万トンが排出されている。
 そこで、これまでの自動車排ガス規制対策によって、移動発生源からのVOCの排出量をどのくらい削減できたのか。
二 今後の揮発性有機化合物の削減対策について
 1 政府は、自動車NOx・PM法で、二〇一〇年度までに浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準をおおむね達成するとしている。これは、二〇〇〇年一月尼崎大気汚染公害訴訟での神戸地裁判決で、SPMが一定限度を超えて大気汚染を形成してはならないとして、排出差し止めが認められており、人への健康被害が明らかな自動車排ガスのディーゼル排ガス微粒子(DEP)の排出削減とともに、SPMを生成するVOCの排出削減は緊急の課題ともなっている。
 そこで、自動車排ガスの二〇〇五年度規制強化とともに、今回の固定発生源からのVOCの排出を規制することにより、粒子状物質対策地域においてSPMにかかる環境基準の二〇一〇年度おおむね達成が可能になるのか。
 2 移動発生源である自動車からのVOCの排出は、二〇〇五年度規制によって九八%程度の炭化水素の削減が可能になるとしているが、依然としてVOCの排出総量のうち自動車からの排出量は一〇%の一八万トンが排出されている。同時に、尼崎判決は、SPMとりわけDEPの健康影響を明確に認め、排出差し止めを容認しており、自動車排ガスのDEPの排出規制をいっそう強化する必要がある。
 そこで、自動車排ガスからの炭化水素及びSPMとりわけDEPの二〇〇五年度規制以降の新たな排出規制とSPMのなかの微小粒子状物質(PM二・五)の環境基準の設定について何年度を目途に実施するのか。
 3 今回のVOCの排出口での排出濃度規制の導入は、九七年からの事業者による自主的な有害大気汚染物質の排出抑制対策や排出抑制を直接の目的としていないPRTR法と違って、排出量の削減効果があるとしている。VOCの排出施設は国内で約三〇万件あるとされているが、そのうち排出量の多い約一万の施設の印刷工場、自動車メーカーの塗装工場、化学製品の乾燥施設、VOCの貯蔵施設、機器洗浄施設、接着剤を使う施設など六業種の大規模施設が規制対象になるとされている。
 そこで、今回のVOCの排出口での排出濃度規制の導入によって、どの程度の施設が対象数となり、二〇一〇年度までに現行排出量のどの程度の排出量の削減ができるのか。
 4 今回の法改正は、VOCの排出口での濃度規制となっていて、濃度規制以外の規制手法である排出量規制、設備・構造規制、製品規制などが退けられている。排出量規制は、事業者にとって排出量の連続測定など多大な負担となり、都道府県等も立入調査等のための体制を整備することが必要となるなどを理由としている。しかし、既に、米国は九〇年に大気清浄法で使用施設等に技術基準、EUは九四年に貯蔵施設令で構造基準、九九年に溶剤指令で排出基準、韓国は九五年に大気環境保護法で構造基準及び放出基準が定められている。特に、VOCの排出上限を定めるEU指令により四〇%の総量削減が国際的に合意され、フランスでは二〇一〇年までに二〇〇一年比で三七%削減という目標が示されている。
 そこで、排出口濃度規制によるVOC排出量の低減状況をみて、今後、排出総量規制など新たな規制強化の枠組み等について検討する必要があるのではないか。
 5 今回の法改正は、VOCの排出口での濃度規制になっているが、本来、拡大生産者責任の立場に立って、塗料メーカーが低VOC製品を開発・販売し、排出事業者責任として自動車メーカー等が低VOC製品を塗装に使用することなどで、大幅にVOCの排出を削減すべきである。すでに、EU環境閣僚理事会では、VOCの削減を目指す指令案に合意し、建物や車両用の塗料やニスを対象として、これらに含まれる溶剤の量に上限値を設定するものとなっている。
 そこで、排出口濃度規制によるVOC排出量の低減状況をみながら、拡大生産者責任と排出事業者責任の立場にたって、今後、建物や車両用の塗料やニスからVOCを削減する制度を検討する必要があるのではないか。
 6 今回の法改正は、VOCの排出口での濃度規制となっていて、排出基準を遵守するために事業者は浄化装置の設置や代替品へ切り替えることによって、排出量を削減することになる。現在でも自動車の塗装に水性塗料を使用したり、印刷施設で大豆インクを使用するなどVOCの少ない代替品を使用しつつあるが、今回の排出濃度規制の対象にならない自主的な取り組みを行う事業者や中小企業等でも低価格で小型のVOC処理装置や、VOCを含まない代替品の使用を促進する必要がある。
 そこで、自主的な取り組みを行う排出事業者や中小企業等が、VOCの排出を大幅に削減できるような支援施策を講じる必要があるのではないか。

 右質問する。



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