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平成十六年五月十九日提出
質問第一〇四号

検視、検案、司法解剖等に関する質問主意書

提出者  細川律夫




検視、検案、司法解剖等に関する質問主意書


 かねてから、誤認検視により、事件性のある事案が病死あるいは単なる事故として処理され、犯罪捜査の公平性を阻害する例がみられる。その背景にはわが国の検視から司法解剖に至る制度の不備と財政上の問題がある。死者及び遺族の人権が守られるよう、同時に社会的正義の実現が妨げられることのないよう、政府が死因決定の制度をより公正、厳格なものとするよう要望し、以下のとおり質問する。

一 刑事訴訟法第二二九条第一項で、「変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。」と規定されている。そして、法務省は、この刑訴法上の検視とは「変死者又は変死の疑いがある死体に対して、その死亡が犯罪に起因するものであるかどうかを判断するために、五官の作用により死体の状況を見分する処分」であると解釈している。しかしながら、死因の決定を五官により、言い換えればほとんどの場合目視、触診及び穿刺で行うには限界があり、誤認検視につながる可能性が大きくなる。一方、検視の際は医師の立会いと医師による検案が行われるのが一般的である。刑事訴訟法制定当時とは科学技術の水準も変わった現在、検視の定義から「五官によって」との前近代的言辞を除き、医師の補助のもとにCTや薬物検査を行うことのできるようなものとすべきだと考える。政府の意見をうかがう。
二 都道府県警察が医師あるいは法医学者に対して検案及び司法解剖を委託する場合、警察法と警察法施行令に基づき、検案解剖委託費及び謝金を国庫より支弁することになっている。平成十五年度予算でみると、検案については検案謝金として一件三千円が検案を行う医師に対し、また、司法解剖については司法解剖謝金として一件七万円が鑑定人個人に対し支払われている。これらの金額は検案又は解剖の委託費としてはあまりにも低額であり、誤認検視や司法解剖が実際には行われなかったと疑われる事件の一因となっている、との指摘がある。一方、東京都においては、警視庁ではなく東京地検が鑑定の嘱託をし、その際は十三万円から十四万円程度、検査の内容によっては二十万円から三十万円を超える金額が鑑定人に対し支払われている。また、司法解剖に要する費用は一体あたり少なく見積もっても二十二万円かかる、との法医学者の試算もあり、現在警察庁予算から支払われている金額と大きな差がある。政府は、検案解剖委託費及び謝金の現状をどう考え、どういう性格付けをしているのか。もし、司法解剖謝金が鑑定書作成の対価であるとするなら、司法解剖全例について鑑定人に対し適正な鑑定書の提出を義務付けているのか。施行令における委託費が運用でいつのまにか謝金になり、それに技術料や補助員の人件費あるいは検査費が含まれないとすれば、それ自体法令に違反していることにならないか。
三 大学の法医学教室で行われている司法解剖については、大学の研究・教育に貢献しているとの側面もあり、それ故従来文部科学省の予算から支出されていた、との指摘も承知している。犯罪の増加と職員の減員のため多くの法医学者が司法解剖に明け暮れ、本来の研究に支障をきたしているとの現状からすると、この立論自体に問題があるが、文科省が国立大学に対し細部に亘って予算を措置してきた昨年度までは一応の根拠があった。しかし、国立大学が独立行政法人となった現在、国から大学法人に支出される運営費交付金が司法解剖に充てられるとの保証はなくなり、大学法人が検査施設の更新や、解剖や検査のための人員確保を行わなくなるおそれがある。そうした場合、現行の司法解剖のシステムそのものが崩壊することにならないか。
四 今後は、警察法等の趣旨を生かす意味から、また、国立大学法人の経営と司法解剖の実施を両立させるためにも、警察が、法医学教室に対し司法解剖を委託する際、解剖技術料、検査費を含めた委託費を支払う旨の契約を、鑑定人あるいは大学法人と結ぶべきであると考える。と同時に、検案についても、技術料は無論のこと、死因決定に資する必要な検査を含めた委託費を支払うべきである。これに関して政府の見解をうかがう。
五 薬物検査についても、個々の死体について充分な措置がとられているとは言い難く、そのために犯罪に起因する死亡が、病死あるいは事故死として処理される例が多いものと推測される。現在、科学警察研究所などの施設で、変死体について青酸カリ、トリカブト、覚醒剤、睡眠薬、濫用薬物以外の毒薬や医薬品に関する薬毒物スクリーニング検査が充分に行われているのか。また、政府の主導のもと、薬物の検査拠点を充実させる必要があると考えるがどうか。
六 そもそも、法医解剖を司法解剖と行政解剖に分類している国はほとんどない。行政解剖の結果犯罪の疑いが現れることもあり、犯罪可能性の有無によって、二種に分類するという制度自体、本末転倒であると言わざるを得ない。今後、法医解剖の制度を改めるため、検討する考えはあるか。

 右質問する。



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