衆議院

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平成十六年五月二十五日提出
質問第一一一号

新生銀行と潟C・アイ・イーインターナショナル破産管財人及びEIEI関係者との和解金合意に伴う預金保険機構の補償に関する質問主意書

提出者  小林憲司




新生銀行と潟C・アイ・イーインターナショナル破産管財人及びEIEI関係者との和解金合意に伴う預金保険機構の補償に関する質問主意書


 新生銀行に対してこれまで預金保険機構から瑕疵担保条項により支払われた一兆円近い金額を含めて、八兆円に及ぶ国民の税金、公的資金が投入されています。
 平成一六年二月一九日に、新生銀行の株式は、東京証券取引所に再上場されました。新生銀行の単一株主であった外資系投資組合は、持株の約三分の一を売出して二二〇〇億円の売却代金を得ました。保有全株式の取得コストである株式買取代金一〇億円と、第三者割当増資払込金一二〇〇億円の合計一二一〇億円を差し引いても一〇〇〇億円の非課税の利益が残ります。現在保有している九億一八〇〇万株はコストゼロであり、数千億円の含み利益が残っているのです。国民が負担した税金を利用して、ハゲタカファンドと呼ばれる外資だけを儲けさせるような金融行政に対し、国民は深い疑念を持っています。
 新生銀行は、株式会社イ・アイ・イーインターナショナル(以下「EIEI」という。)破産管財人及び関連他社から国内・国外で巨額訴訟を提訴され、その賠償金額が予測もつかない状況の下で、東京証券取引所に株式を再上場しました。「国内並びに海外市場で新生銀行株式の売出しを行うことは、投資家に不測の損害を与える危険性がある」、「旧長銀の不法行為の損害を預金保険機構が国民の税金を使って補償することは許されない」との観点から、衆議院予算委員会で本年二月一六日、二月一八日、三月一日、三月三日、決算行政監視委員会で四月二一日と、五回にわたり質問をいたしました。
 二月一六日の予算委員会において、これまでの新生銀行に対する巨額の公的資金投入に加え、新生銀行がこの訴訟で敗訴した場合、または和解調停の場で、損害賠償金が発生した場合に関し、預金保険機構が補償するとの契約があるのか否かについても質問しました。預金保険機構理事長松田参考人は、サイパン訴訟に関連して、「預金保険機構とリップルウッド社との間で偶発債務の補償という協定を結んでいる。サイパン訴訟で新生銀行に損害賠償債務が発生した場合について、最終的判断をする段階にはないが、将来、このような訴訟が我々がいう偶発債務の対象になるのかどうかは、非常に慎重に考えなければならないので、場合によっては対象にならない可能性もある。新生銀行との民事契約であるから、双方の意見が対立した場合には、訴訟に発展するかもしれない。」と答弁されました。
 新生銀行が、平成一六年五月二四日、関東財務局宛に提出した臨時報告書の中で、提出理由として、(1)EIEI破産管財人をはじめとしてEIEI関係者との間で、和解の合意に達したこと。(2)和解金二一八億円をEIEI破産管財人に対して支払うこと。ただしEIEI破産管財人およびEIEI関係者により和解条項が履行されることを条件として、その全額を平成一六年六月一六日のクロージング(受渡)日に支払う予定であること等が記載されています。そして、さらに、その他の項目の中で、(3)「預金保険機構、ニュー・エルティーシービー・パートナーズ・シー・ヴィおよび当行との間で締結された平成一二年二月九日付株式売買契約書の下で、当行は、平成一二年三月一日以前の事実に関する訴訟により負担した費用に対する補償を含め、預金保険機構より訴訟に関連して一定の補償を受けることが可能となっております。かかる補償は、当該費用を含め特定の損失について当初の五〇億円を超える部分について行われます。当行は、五〇億円全額の引当金を平成一三年三月期に計上しております。当行は、上記株式売買契約書上は和解金額の全額が同補償の対象であると考えていますが、今回の和解に至る経緯に鑑み、このうち四四億円については、同機構に補償請求することを差し控える予定です。一方、残額の一七四億円については、同機構に補償請求する予定ですが、同機構による補償の範囲または補償金額の支払手続に関して、今後同機構との間に紛争が発生しない保証はありません」と、長銀処理のための国民の税負担がさらに増える可能性があることが付記されています。
 マスコミ等の報道の中で一兆円訴訟ともいわれていた巨額賠償請求裁判が、当初の予測と違って、低額で和解した背景には、新生銀行と争っていたEIEI破産管財人、精算人、EIEI関係者(高橋治則氏及び刑事担当弁護人)の譲歩、協力を引き出した整理回収機構(RCC)弁護人の調停が成果を上げたと聞いています。賠償和解金が巨額であった場合、再生された新生銀行の根幹を揺るがしかねない問題になったと考えると、二一八億円の和解金については、当然、新生銀行が全額支払うか、新生銀行が契約する保険会社によって支払われるべきと考えます。
 国民の税負担が今後、さらに増えることのないよう、この点を明確にすべきであります。
 以上の指摘を踏まえ、政府に対し次の事項について質問します。

一 平成一二年八月に国会に提出された報告書「破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告」の資料編にある、「ニュー・LTCB・パートナーズの長銀買収に係わる買収条件の概要」に、「貸出関連資産の瑕疵担保」という条項は存在します。
 しかし、この中では補償条項について「長銀買収時から三年以内の間に、戦争、自然災害、経済大恐慌等による債務者の状況の悪化が生じた時は、上記とは別に、機構と新生長銀は公平な負担のあり方について誠実に協議する」とあります。これはいわゆるフォース・マジョール(天変地異)条項です。しかし、新生銀行の売出届出目論見書に記載されているレプレゼンテーション・アンド・ウォーランティ(表明と誓約)、偶発債務、損害賠償の補償については、この「条件の概要」には記載がありません。この「条件の概要」は、株式譲渡契約が平成一二年二月九日に締結され、法律の要求により、平成一二年八月に国会に提出された報告書の参考資料です。その後、補償条項を含む新しい参考資料は国会に報告されているのですか。
二 新生銀行が東証再上場時に提出した売出届出書によると、預金保険機構、ニュー・LTCB・パートナーズおよび当行との間で締結された平成一二年二月九日付株式売買契約書の下で、「当行は平成一二年三月一日以前の事実に関する訴訟により負担した費用に対する補償を含め、預金保険機構より訴訟に関連して一定の補償を受けることが可能となっております。かかる補償は、当該費用を含め特定の損失について当初の五〇億円を超える部分について行なわれます。当行は、五〇億円全額の引当金を平成一三年三月期に計上しております。」と記載されています。
 本年二月一八日に行われた、衆議院予算委員会における松田参考人の答弁は、「通知の終了期限は平成一五年二月末日である。」と説明されました。
 サイパン訴訟は、平成一三年七月三日に訴訟が提訴され、同月に預金保険機構に通知がなされたが、平成一四年六月五日に訴えが取り下げられその旨の通知も預金保険機構に対して行われています。その後平成一六年一月二三日に訴えの取下げの取消しが裁判所により認容されています。これは一旦取下げの通知がなされ、新しい訴訟が提起されたものとの見解に立たれていると理解して宜しいですか。
三 今回の和解はグローバル・セットルメント(一括結着)として、国内・国外のEIEI関連訴訟を一括して解決するものであるとされています。この訴訟の中には、平成一六年に提訴されたシーコム訴訟が含まれていて、この訴訟は通知期間後に提起された訴訟で、当然補償の対象外と解釈されていると思われますが、いかがお考えですか。
四 新生銀行は今日までに瑕疵担保条項によって、一兆円近い国民の税金である公的資金で弁済されているにもかかわらず、今回も和解金二一八億円から四四億円を引いた一七四億円の補償の請求を予定しています。新生銀行は多くの株数がモルガン・スタンレーにより米国で機関投資家にプレース(私募販売)されているので、役員に対する株主訴訟リスクもあるため、会社役員保険に加入していたとしても、当然、預金保険機構に補償を求めるだろうとは考えられますが、契約書には、訴訟により負担した費用も含め、訴訟に関連して一定の補償を受けることが可能と規定されているとのことです。
 (イ) 「訴訟により負担した費用」とはどのような費用項目を指すのですか。
 (ロ) 「訴訟に関連して一定の補償」とは、どのような範囲、金額を意味するのですか。一定の補償の範囲、金額は預金保険機構が裁量権を持つのですか。
 (ハ) 和解金二一八億円に訴訟費用を加えた金額から五〇億円を差し引いた金額が、当然に補償されるものではないと理解して宜しいですか。
五 新生銀行の損害賠償の和解金二一八億円は、表面的には大きな金額ですが、税効果と、既に計上済みの五〇億円(有税引当)を考慮すると、新生銀行の経常利益に対する影響は実質的には少なく、あえて国民に税金による負担を求める必要はないと考えます。和解金二一八億円から引当金五〇億円を差し引いた一六八億円をさらに上回る一七四億円の補償請求は、焼け太りといっても過言ではないと思います。政府が把握している限りにおいて、今後なされる予定の補償請求の内容を明らかにしてください。
六 衆議院の予算委員会における質疑では、松田参考人は、二月一六日の答弁で、「我々がいう偶発債務の対象になるかどうかは非常に慎重に考えなければならない。裁判になる可能性もある。」と示唆されました。竹中金融担当大臣も、三月一日の予算委員会質疑で、「新生銀行と預金保険機構の間の関係もきちっとした手続を今後踏んでいかなければならない。」と答弁されました。新生銀行の要求のままに預金保険機構から補償金が支払われることのないよう、国民の負担を強いられないための方策を政府は検討しておくべきと思いますが、いかがお考えですか。
七 国政の場において疑念の残らない事情解明を行うために、新生銀行とリップルウッド社との「株式譲渡契約」の中における偶発債務保証契約の全容を政府が承知する限りにおいて明らかにしてください。

 右質問する。



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