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平成十六年五月二十八日提出
質問第一二四号

化学物質過敏症等に関する質問主意書

提出者  井上和雄




化学物質過敏症等に関する質問主意書


 掲題に関する事情を鑑み、化学物質過敏症及びシックハウス症候群等の症状に係る適切な対処を確保するため、その実状及び政府の所見を明らかにする必要がある。
 近年、いわゆるシックスクールや化学物質過敏症等、化学物質による汚染問題が新たな社会問題となっている。我々の日常生活において、化学物質による汚染度が高まったことから、アトピー性皮膚炎や喘息等のアレルギー疾患を訴える児童・生徒・学生らの数が激増している。
 平成十五年十月に開催された日本弁護士連合会主催の第四十六回人権擁護大会のシンポジウムにおいて、化学物質過敏症患者からシックスクール被害に悩む子供が学校の無理解や偏見、いじめに苦しめられたという実状が報告された。化学物質に曝露された結果、化学物質過敏症となった児童・生徒・学生が学校教育の場で差別され、他の一般の児童・生徒・学生と同様に教育を受ける権利を奪われるということは許されないことであり、今後、そのような差別を是正するための解決策を整備することが急務であると言えよう。
 さらには、教室の壁紙や建材等から発生するホルムアルデヒドやトルエン等に曝露された結果、児童・生徒・学生に健康被害が生じるシックスクール問題以上に、重大な問題だと懸念されるのが医学部及び歯学部における解剖学実習に伴う、ホルムアルデヒドに代表される化学物質への曝露である。
 過去に文部科学省は、高等医学教育において「ホルムアルデヒドに代表される化学物質への曝露問題」が顕在化した実態を鑑み、医学部又は歯学部を設置する国公私立大学事務局長に対し、「系統解剖実習時の環境向上について」通達した。そして趣意として、解剖学実習において「ホルマリン使用時には、その濃度に応じて室内にホルムアルデヒドが気化し、毒性を持つことがあるために室内空気環境の改善に努めること」と通知した。その通達を受けた、各大学では実習時の注意事項に盛り込み、学生らに喚起したはずであった。
 しかし、人体に対し著しい毒性を有するとされるホルマリンの取扱について、医学及び歯学教育の現場ではその通達が周知徹底されていない現状があると認識している。
 化学物質過敏症等の症状を訴える国民が激増する今日、発症者らは頭痛、めまい、咳、悪心等の重篤な健康被害に悩まされるのみならず、農薬や添加物入りの食べ物は食べられない、タバコの煙のあるところや、新築の建物、工事現場の近く、満員電車には近づけない等、あらゆる日常生活において不自由を余儀なくされている。これらの事実は、重大な人権問題であり、政府として早急に対策を講じるべきである。
 以上を踏まえ、次の事項について質問する。

一 いわゆる化学物質過敏症について
 (一) 政府は、化学物質過敏症の定義をどのようなものと認識されているか示されたい。
 (二) 当該疾患の発症原因としては、どのような原因が考えられるか、把握及び特定している物質等の事実をすべて明らかにされたい。
 (三) 発症者に対する診察基準及び主な各症状を予見可能な限り、それぞれ明らかにされたい。
 (四) 当該疾患を診断できる専門外来を有する病院が国内に何箇所あるか。また、専門医は何名いるか明らかにされたい。
 (五) いわゆる化学物質過敏症は、未だ「発症原因が未解明」等と主張され、日本の医学界において見解の統一が得られていないようである。この現状を踏まえ政府は以下の事項に関してどのような対策を講じるべきか見解を示されたい。
   @ 診療機関が極少である実状について
   A 保険適用疾患と認められていないために、労災や生活保護等の公的支援の認定が困難である。また、化学物質過敏症の専門外来においては診察時に保険診療が認められず、発症者の経済的負担が非常に大きい実状を鑑み、
   (a) 労災認定について
   (b) 障害者手帳交付について
   (c) その他、検討している社会的保障について
   B 一般健常者には理解がされにくい、微量の化学物質でも反応する発症者にとって、就学や就業等のあらゆる日常・社会生活にも支障をきたし、極めて社会的な孤立を強いられ、困難な場合が多いという実状について
二 医学部及び歯学部教育について
 (一) 平成十三年四月、文部科学省が関係機関に「系統解剖実習時の環境向上」に関する通達をしたが、本通達に至った経緯はどのような事実に基づくものか、詳しく明らかにされたい。
 (二) ある大学の調査によれば、解剖学実習時あるいは実習後のいわゆるホルマリン使用による症状は、受講学生の半数以上が認めた報告がある。多くの医学部及び歯学部学生らが解剖学実習時に使用しているホルマリンには、様々な健康被害の懸念がされている。
   @ 半数以上の学生らが何らかの症状を訴える調査結果を踏まえ、ホルマリンの毒性に関して化学的根拠を示されたい。なお、未調査であるならば、早急に調査され報告されたい。
   A ホルマリン使用時に係る化学物質過敏症による発症例及び当該因果関係をそれぞれ明らかにされたい。
   B ホルマリン使用時における担当教官に対する取扱上の注意及び教官から学生への安全配慮に関して、いかなる指導を図ったか、具体的に明らかにされたい。
   C 当該通達後、解剖学実習時における健康被害が認められた事例はあるか。平成十年、平成十一年、平成十二年、平成十三年、平成十四年、平成十五年、各年における事案概要及び件数を明らかにされたい。
   D 医学部及び歯学部において解剖学実習の際にホルマリン等の化学物質に曝露されたために、健康被害を受け、そのために、勉学の継続を断念させられた学生が何名いるか、平成十年、平成十一年、平成十二年、平成十三年、平成十四年、平成十五年、各年における事案概要及び件数を明らかにされたい。
   E 政府は、学生らに対する健康被害を生じさせないためにいかなる対策を講じているか。
   F 健康被害を受けた学生でも他の学生と同様に学業を継続し得るために、どのような対策を講じているか、明らかにされたい。また、過去において当該実習が原因で自主退学等を余儀なくされた元学生らに対し、どのような対策を講じるべきであるか、明らかにされたい。
   G 解剖学実習時にホルマリンの代用品として検討されている教材はあるか。検討されているとすれば、何かを示されたい。
三 化学物質過敏症の発症者が抱える諸課題の解決及び予防策について政府の見解を問う。

 右質問する。



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