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平成十六年六月十五日提出
質問第一九七号

瀬戸市紺屋田町・東印所町の珪砂採掘計画に関する質問主意書

提出者  佐藤謙一郎




瀬戸市紺屋田町・東印所町の珪砂採掘計画に関する質問主意書


 瀬戸市の市街地でガラスの原料である珪砂を採掘する計画があり、県有林が鉱山として開発されようとしている。この鉱山の事業を行うのは愛知県珪砂鉱業協同組合という団体である。またこの開発予定地は瀬戸市紺屋田町と東印所町の山林十五ヘクタールであり、そのほぼ全域が愛知県の県有地である。そのためこの団体は平成十五年に愛知県から租鉱権を取得している。また、現地には保安林指定されている地区が八・五七ヘクタール含まれているため、同年九月に愛知県に保安林解除申請を提出し、愛知県からは当該申請書類が本年四月に国に進達されている。したがって九〇日間の審査期間を経て、問題がなければ愛知県瀬戸市に保安林指定解除が告示され、早ければ本年度中にも採掘が始まる。開発期間は十年と定められているが、この開発について質問する。

一 本事業により周辺の自然環境と生活環境が著しく破壊される危険性について
 1 現地では環境省が平成十二年に取りまとめたレッドデータブックで絶滅危惧U類に指定されたギフチョウが舞い、やはり絶滅危惧U類のオオタカが飛来している。現地の湿地にはサギソウやイシモチソウ(いずれも絶滅危惧U類)などが生息している。このように貴重な自然環境の存在が指摘されていながら、当該事業者は事業計画にあたっていまだに自然環境を調査していない。そればかりか砂防指定地内行為許可申請書で「特に保全すべき自然環境は存在しない」と結論付けている。調査をしていないのであるから「特に保全すべき自然環境は存在しない」とするのは根拠がない記述ではないか。政府の見解を伺いたい。
 2 現地の西側には明治期・東京大学の教授であったオーストリア人アメリゴ・ホフマンが指導した砂防工事跡が隣接している。瀬戸市では中学の副教材で一ページを割いてこれを取り上げている。また愛知県は砂防工事の一〇〇周年に当たる二〇〇五年が「愛・地球博」の開催年であることから、現地で一連の記念事業を予定している。住民はこのような歴史的学術的な施設を大切に保存してほしいと願っている。ところが、この珪砂採掘計画が実施されれば、現地一帯が立ち入りできなくなるばかりか、施工地の五〇メートル以内に新たな禿山が出現し、現地の景観を台無しにする。このような計画が愛・地球博の開催地で進行することについて、どう考えるか、見解を伺いたい。
 3 現地一帯は住宅の密集地であり北辺を除いて東、西、南に多数の住宅が立ち並び、市民が生活している。このような場所で鉱山開発計画が実施されれば、採掘が露天掘りで行われることから、採掘地から舞い上がる多量の砂埃が周辺市街地に降り注ぐことが懸念される。平成十四年の瀬戸市の気象データによれば風向は北西の風が八十五日、西北西六十二日、北北西五十七日などが記録されていて、夏の三ヶ月を除く九ヶ月間はほぼ一貫して北西から南東方向へ風が吹いている。その南東方向には老人福祉施設や幼稚園が立地していて、採掘予定地との間にはわずか五〇メートルの緑地帯があるのみである。瀬戸市ではかねてより珪肺に代表される呼吸器系疾患が高い罹病率を記録しているが、このような周辺地域への健康被害に関する懸念についてどのように考えるか。
 また、採掘後は埋め戻しが行われるとされるが、埋め戻しには「公共工事の残土」が使われることになっている。現地では井戸水を利用している世帯があることから、建設残土に有害物質の混入があった場合、地下水の汚染が懸念される。埋め戻し用土に有害物質が含まれる可能性があるが、その点についてどのように考えるか。
 4 現地では昭和三十二年に水害が発生し、二十二名の尊い命が失われた歴史があることから、当事業に対し不安の声が聞かれる。一方事業者側は保安林解除に先立って、地元の三つの自治会に毎年五万円ずつ十年間、合計一五〇万円を支払うことにし、昨年度よりすでにその支払いが始まっている。もし森林法第三十条または第三十条の二による解除の通知がなされた場合、保安林解除への異議意見書の受付が始まる。その前に金品を与える行為は不適切と思われるが、どう考えるか見解を伺いたい。
二 本事業により採掘される珪砂の量と品位の評価が過去の調査結果と相違していることについて
 昭和四十九年三月に愛知県が取りまとめた「窯業地下資源の埋蔵量と今後の開発の方向 窯業地下資源開発計画」では紺屋田・印所の森での地下資源の状況が明らかにされている。別添資料である「瀬戸・常滑・三河地区窯業地下資源調査試錐一覧」十五ページ、十六ページに数箇所の試錐結果が収録されており、これによると採掘予定地のほぼ中央やや南に位置する試錐である委・東44−2では次のような層序である。
 地表より表土一・〇〇メートル、次に砂礫一三・〇〇メートル、赤色微砂二・二〇メートル、その下に礫まじり砂質土四・二〇メートル、青サバ四・六〇メートル。その下は花崗岩の岩盤に至る。同様に現地で行われた他の試錐調査結果も、程度の差はあるものの、その傾向は共通している。
 この結果を受けて、資料の本文八ページでは「東印所区域は、これまで未開発であり、鉱床の埋蔵が大いに期待されていたところである」と前置きした上で、「しかし(委)試錐の結果によれば、区域の北端を除いて、鉱床は欠如していることが明らかになっている」としている。また前出の別添資料である「瀬戸・常滑・三河地区窯業地下資源調査試錐一覧」の六十一ページでも該当する地区について「区域北端の一部を除いて採掘価値はないので可採量を推定せず」としている。
 この砂礫は約二〇年後に行われた調査ではシラワキとされ、四八七・七万トンの埋蔵量が推定されている。そのほかに存在するのはC珪砂二四・六万トン、クロワキ二〇・九万トン、蛙目粘土一三・六万トン、木節粘土二・六万トンとされている。いずれの資料にもB珪砂は現れていない。
 ところが今回提出された施業案では砂礫が利用価値の高いB珪砂として扱われ四〇〇万トンの埋蔵量が見込まれている。
 現地の砂礫をB珪砂と評価変えしたのはなぜか。三〇年前は資源として評価されなかったものが、なぜ今になってB珪砂に昇格したのか。三〇年前の調査結果に誤りがあったのか。それとも三〇年間に評価の基準が変わったのか。お答えいただきたい。
 現在は輸入珪砂に押されて珪砂価格は低迷し、精製されたB珪砂でも1トン二〇〇〇円前後にしかならない。一方土木工事で使われる砂、捨石などは1トン三〇〇〇円前後であることから、原砂を珪砂に精製することなくコンクリートの骨材や埋め立て用の土砂などとして販売したほうが収益性にかなっている。もし仮に、原砂をそのような形で販売した場合はただちに鉱業法第八十三条第一項第二号「施業案によらないで鉱業を行ったとき」に該当し、鉱業権を取り消すべきであると思われるがいかがか。
三 鉱業法の公益の概念を時代の要請に合わせて柔軟に解釈することの必要性について
 この事業には「鉱業法」が適用されているが、その第一条には「この法律は、鉱物資源を合理的に開発することによって公共の福祉の増進に寄与するため、鉱業に関する基本制度を定めることを目的とする」とある。ここでいわれている公共の福祉とは何か。法が制定された昭和二十五年当時、わが国は外貨が不足しており原材料を輸入することには困難を伴っていたため国産で調達することは公益性を有していたであろう。しかし当時と現在とでは経済の情勢は大きく異なっており、国産を良しとする法制定当時の公益の概念は通用しないのではないか。見解を求める。
 もし現地を森林として残した場合、市民には次のような公益が保証される。すなわち土石流の危険におびえることなく安心して眠ること、清澄な水に恵まれ、それを安心して使うことができること、浮遊物質のないきれいな空気のなかで窓を開け放って生活する権利、鳥や花を愛でながら豊かな自然を享受する権利、そして森林に点在する遺跡や遺構、文化財などに触れることもまた公益の一つといえる。資源の採掘が公共の福祉に寄与するといえる場合にも、実際に採掘するか否かの判断は、現況の森林を保全してその機能をひきつづき発揮させることによって得られるであろうこれらの公益と、比較した上で下されなければならないのではないか。政府の見解を求める。

 右質問する。



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