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平成十六年八月五日提出
質問第四三号

使用済み核燃料の直接処分コスト試算が隠されていた問題に関する質問主意書

提出者  前原誠司




使用済み核燃料の直接処分コスト試算が隠されていた問題に関する質問主意書


 原子力発電所から生じる使用済み核燃料を再処理し、これからプルトニウムを抽出して利用するというのが、現在の日本の原子力政策における基本方針となっている。核燃料リサイクル、もしくは全量再処理などと呼ばれている。一方、日本を除くほとんどの原子力利用国では、再処理をしない直接処分と呼ばれる方法が選択されるようになってきている。日本でも、直接処分を選択肢とすることについて検討すべきとの意見は多く出されていたが、これまで政府は、直接処分は検討する必要もなしと、この議論そのものを封印してきた経緯がある。
 ところが最近になって、一九九四年に、当時の通産省が直接処分をする場合のコストについて試算をしていたことが明らかになった。一九九四年二月四日の総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題作業グループ会合における資料「核燃料サイクルの経済性試算について」(以下「事務局試算」という)がそれである。経済産業省・資源エネルギー庁もその存在を認め、さらに関係書類が残っていないかを現在調査中であると聞いている。さらに、これを機に、電気事業連合会、原子力委員会、動力炉・核燃料開発事業団(現核燃料サイクル機構)、旧科学技術庁、原子力環境整備センター(当時の通商産業省からの依頼に基づく)においても、それぞれ独自に試算が過去になされ、それら一切が隠されていたことが次々と明らかになった。このようなコスト試算が各所で行われていることが、関係者には周知の事実であったことをうかがわせる。
 資源エネルギー庁による虚偽答弁に関しては、答弁者、答弁資料作成者及び答弁の資料をつくる監督者が内規による処分を受けた。しかしながら、コスト試算資料作成と議論の経緯がどのようなものであったか、それら資料がなぜ十年間も存在すら明らかにされず、それによって再処理をしない場合の施策についての議論が封じられてきたのはなぜか、それが政策決定にどのように影響したのか、といった点については、まだ一切明らかにされていない。
 この試算隠しが報じられた後の原子力委員会の原子力利用長期計画策定会議では、「再処理か直接処分かを議論する機会が失われた十年と言わざるを得ない。直接処分を本格的に検討しようという流れになるのを避けたのではないか」といった批判があった。原子力委員会では、これを背景に、再処理をしない場合のコスト試算を改めて行った上で、これに基づいて再処理の是非についても議論を行うこととなった。
 このように、再処理と直接処分とを比較するコスト試算が隠されていた問題は、再処理の是非ばかりでなく、政府の核燃料サイクル政策、原子力政策の根幹に関る問題であることは間違いない。この問題の真相解明を怠り、政策を誤るようなことがあってはならない。
 よって、以下質問する。

一 一九九四年二月四日の総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題作業グループ会合における資料「核燃料サイクルの経済性試算について」(以下「事務局試算」という)を作成したのはなぜか。
二 また、事務局試算の作成にあたった担当者全員の名前、当時の役職と現職をそれぞれ示していただきたい。虚偽答弁で処分を受けた三名は一九九四年の当時、この試算の作成及び議論にどのように関り、どのような認識でいたのか。
三 第四回総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題WG議事概要(二〇〇四年原子力委員会新長計策定会議資料、以下「議事概要」という)における二月四日の会合の出席者について、「事務局:並木(審議官)、藤島(総務課長)、松井(原産課長)、稲葉(原電課長)、藤富(原管課長)、他」とあるうちの「他」とは誰か。全員の名前、当時の役職と現職をそれぞれ示していただきたい。
四 議事概要によると、二月四日の次の会合予定は二月十六日となっているがこの会合は開かれたのか。その後六月十日の総合エネルギー調査会原子力部会中間報告に至るまで、会合は何度開かれ、その出席者は誰で、議論の中身は何であったのか。
五 経済産業省資源エネルギー庁が平成十六年七月五日に作成した「平成六年二月四日『核燃料サイクルの経済性試算について』という資料」(以下、「七月五日文書」という)の中では、「専門家の委員の方々のご審議を経て」とあるが、具体的にどのような審議がなされたのか。
六 事務局試算では、再処理のコストは直接処分の約二倍(直接処分一・二三円、国内再処理二・三〇円、割引率五%)という結論であった。これについて、六月十日の総合エネルギー調査会原子力部会中間報告は、「我が国の場合、(中略)最終処分費の見積もりが極めて不透明であることから、両路線の比較を行うこと自体が困難である」と結論づけている。見積もりのうち、どこがどのように不透明であるのか。「比較を行うこと自体が困難」というのは具体的に何がどう困難であるのか。
七 「困難」との判断をしたのは誰か。
八 議事概要によると、電力会社の代表者は「発表され、非常に割高である場合、サイクル事業がなりたたなくなる」と述べ、当時の動力炉・核燃料開発事業団の幹部も「公表の仕方に配慮願いたい」と述べている。「困難」との判断は、このような意向に沿うためのものではなかったのか。
九 その後、試算を行った事実を一切明らかにしなかったのも、「公開された場合、核燃料サイクル事業が成り立たなくなる」との判断をしたからではないのか。
十 事務局試算について、「この資料の作成作業は十年以上前に行われたものであり、その後状況が大きく変化していると考えられます」(七月五日文書)とあるが、何がどう変化したのか。
十一 原子力委員会利用長期計画策定会議では、「再処理か直接処分かを議論する機会が失われた十年と言わざるを得ない。直接処分を本格的に検討しようという流れになるのを避けたのではないか」との委員からの批判の発言も出ている。事務局試算については、これに基づいて、再処理の是非について政策論議を開始すべきだったのではないか。
十二 再処理を行うか否かという、原子力政策にとって非常に重要な政策選択において、一方の選択肢についての重要な資料を国民の目から覆い隠すことによって、議論そのものを封じ、もう一方の選択肢だけを押し付けるようなやり方は問題があったのではないか。
十三 昨年来、資源エネルギー庁が事務方である総合エネルギー調査会電気事業分科会において、原子力バックエンド事業のコスト試算と制度・措置についての議論が行われている。ここでは委員から、再処理をしない場合のコスト試算も行うよう要請が出ており、例えば二〇〇三年十一月十四日の第十六回電気事業分科会において、ある委員は、「今回出されているものが、バックエンドコストのすべてなのでしょうか。(中略)もし半分という場合があるとすれば、逆に全量再処理をしないという選択肢も考えられるはずではないかと思います。今回の試算と合わせ、全量再処理する場合と、全量再処理しない場合も含めた三パターンについて、概算でも結構ですので、ぜひ出していただきたいと思います。」と述べている。電気事業分科会の議論の中でこのような委員の要請を拒否したのはなぜか。遅くともこの段階においては、再処理をしない場合のコスト試算を公開すべきではなかったのか。
十四 電気事業分科会は、「直接処分の分析・推計を行っていない」(「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」(案)に対する意見募集 平成十六年七月十四日 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会事務局)ことを前提に、再処理をしない場合については一切議論せずに、原子力バックエンド事業に対する制度・措置についての議論を進め、その後、コスト試算隠しが明らかになり、「核燃料サイクル政策について、原子力委員会においても検討が行われようとしていることから、その結論を待つべき」(同前)との委員の意見があったにもかかわらず、「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」(案)をまとめ、意見募集をはじめるなど、再処理を前提とした制度・措置策定を強引に進めている。状況を鑑みて、この作業は凍結すべきではないか。
十五 同様に、ウラン試験などの操業前試験を含めた六ヶ所再処理施設での建設事業及び、再処理を前提としたプルサーマル計画についても、これらの検討が終了するまで一旦凍結すべきではないか。

 右質問する。



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