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平成十六年十一月三十日提出
質問第五八号

八ツ場ダム建設に関する質問主意書

提出者  塩川鉄也




八ツ場ダム建設に関する質問主意書


 群馬県長野原町に建設する八ツ場ダムは、一九五二年から調査を始め、一九六七年には実施計画調査に着手し一九七〇年から建設に移行した。調査着手以来五十年以上が経過し、平成十五年度までに一千九百十億円もの巨費が注ぎ込まれたが、ダム本体の工事はまだ先のこととなっており、二〇一〇年とされている完成予定は大幅に遅れることが予想されている。関係住民の苦労は計り知れないものがある。
 そもそも、八ツ場ダム建設予定地一帯に生い茂る森林は、幾百千年にわたり育成され今や岩塊や火山灰を覆い、土砂流出を防止する国土保全機能をもち、大雨の際は流量を抑える洪水調節機能や水源涵養機能をもっており、川の濁りを抑え浄化する役割をも果たしている。また、この地は、風光明媚な、景勝地・吾妻渓谷を形成し、生態系の頂点に立つ猛きん類の、オオタカやイヌワシの営巣地ともなっている。
 一方、この建設予定地は、一帯が火山性堆積物でできており、変質帯や断層なども多く、脆弱地質である。浅間山が噴火した際に巨大な山崩れ(応桑岩層なだれ)の未固結の堆積物が緩斜面を形成しており、地滑りが起きやすい地盤である。
 ここに、ダムが建設されそれに伴う道路、鉄道、学校、旅館や民家の移転などの工事で森林が破壊され、さらにダムへの貯水が行われるなら、地滑りがおきて、周辺も支えを失い崩落することが危惧されている。むしろダムが新たな災害を招く危険性が増すと専門家も指摘している。
 八ツ場ダム建設の主要な目的とされてきた水道用水と工業用水の確保は、関東地域一都五県では八ツ場ダムから給水を得なくても、需要は基本的に充足される状況になってきており、将来の人口動向や水需要予測からも十分対処出来る状況にある。五十余年前の計画にしがみつき「建設先にありき」で、社会の変化や実状を見ずに不必要になったダム建設が強行されれば、自治体や住民の負担は益々耐え難いものとならざるをえない。
 このような中で、九月十日、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、東京の一都五県それぞれに対して、各都県の住民五千三百人以上が八ツ場ダム事業にかかわる負担金の支出と、参加取りやめを求めて住民監査請求を行った。これが棄却または却下された後にはそれぞれ県知事などを相手どり、八ツ場ダム建設事業への公金支出差し止めの住民訴訟を起こしている。
 いま、日本一のダム事業費に膨れあがった八ツ場ダム建設をストップし、原点から問い直せとの世論が大きく広がっている。
 従って、次の事項について質問する。

一 ダム建設や河川の整備に関しては、改正河川法により河川整備基本方針及び河川整備計画を「定めておかなければならない」とされているが、八ツ場ダムを含む利根川水系にかかる河川整備基本方針及び河川整備計画の策定の進捗状況はどうなっているのか。
 改正河川法では、学識経験者の意見、住民の意見などを整備計画に反映することとしている。学識経験者の意見、住民の意見などを反映するための作業をしないまま、五十年以上も前につくられた八ツ場ダム建設計画を推し進めることは、改正河川法の趣旨に反すると思うがどうか。
二 八ツ場ダムの総事業費は、約二・二倍の四千六百億円に増額されたが、これはいかなる理由によるものか。事業計画と予算が「有って無きがごとし」と言わざるを得ない。
 さらに、国土交通省は五月十七日の市民団体との意見交換会で「これ以上総事業費が増えることはないのか」との質問に対して、「できるだけコスト縮減に努めると言う事であって、四千六百億円は最終目標を示したものではない」と回答している。総事業費が四千六百億円を上回る場合もあり得るのか、明らかにされたい。また、事務費は、想定基準からの算出ではなく、実施所要額を綿密に計算し計上すべきと思うがどうか。
 今回の総事業費の大幅引き上げによる各家庭の水道料金や工場など産業界に与える影響はどうか。費用対効果はどうなるのか。
三 会計検査院は、一九七七年と一九八三年、一九九四年に検査を実施した。事業が本格化してからは行われていないがこれはなぜか。検査を毎年行い公表すべきと思うが政府としてはどう考えるか。
四 長野原町立第一小学校の移転建設地は、崖に面した危険な場所で、のり面には幾重もの地滑り防止工事を、裏の沢には幾重もの砂防ダムを設置したが、このような危険地域に学校を作ったことはどのような根拠に基づくものか。また、学校用地の中で校舎や運動場の地代は支払われたが、崖ののり面など一ヘクタール余の土地については地代が支払われていないが、なぜか、ただちに支払うべきと思うがどうか。
 また、民家や旅館の移転地は安全対策上問題はないか。単位面積当たりの工事費も示されたい。
五 川原湯温泉は、長い歴史があり湯量も豊富で医学的にも希有な温泉と聞くが、温泉街と共に源泉も水没する。新たな源泉をみると温泉街が成り立つような湯量とは思えないが、現在の湯量と川原湯温泉の移転後の湯量の比較を示されたい。
六 ダム建設地域は、地域産業の振興や生活基盤、公共施設の老朽化や整備も遅れ、堤防の補強や河川改修も後回しである。住民がくらし続けられるよう、直ちに地域の振興と再生を行うこと。経営相談員や生活相談員を増員し、関係住民の要望や意向を聴取すること。営業上不利益を被る方々には、税制の優遇措置も図ること等がつよく要望されているが、どのような対策を取られる計画か具体的に示されたい。
七 吾妻川流域の東電が持つ水力発電用水利権の中でも、八ツ場ダム予定地付近では白砂川取水堰七・五トン,須川取水堰四・五トン、長野原取水堰十八・五トン、合計約三十トン(いずれも毎秒)もの水が、発電用の送水管の中を通って迂回している。ダムの利水権は毎秒十四・七トンであり、まともに水が得られるのか。水確保について東電との協議内容を明らかにされたい。
 また、東電に対する減電補償費については、総事業費四千六百億円の中に含まれていると説明しているが、積算根拠と額を示されたい。特別補償枠は二百十七億円が計上されているが、この殆どは送水路の補強工事費や工事期間の減電補償費と考えざるをえないが内容を示されたい。特別補償枠の中にダム完成後の減電補償が含まれているのかいないのか、を明らかにされたい。
八 現計画のダムサイト位置は、政府が「地質的にダムサイトには適当ではない」旨答弁(昭和四十六年二月二十二日、衆院予算委第五分科会)してきた場所だが、この見解がいつ、どのような理由で変更されたのか示されたい。

 右質問する。



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