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平成十六年十二月二日提出
質問第六九号

家畜排せつ物処理施設に関する質問主意書

提出者  佐藤謙一郎




家畜排せつ物処理施設に関する質問主意書


 家畜排せつ物の野積み・素掘りといった不適切な管理を規制し、堆肥舎等を設置させ、家畜排せつ物の利用の促進を図るために、一九九九年に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」(以下、「家畜排せつ物法」という。)が制定され、本年一一月から施行された。
 「家畜排せつ物法」の制定に併せ、同法の円滑な施行確保のため、畜産環境総合整備事業が実施され、畜産農家が共同で利用する家畜排せつ物処理施設の設置も、国からの補助金支給対象事業とされた。
 当然のことながら、この事業が本来の目的を逸脱した形で行われることがあってはならないことであると考えるが、神奈川県藤沢市が同事業として予定している「藤沢市有機質資源再生センター(以下、「当該センター」という。)」の建設・運営については、その合理性に大きな疑義があり、同事業の目的を逸脱し、不正な補助金の支給となることも懸念されるので、以下、質問する。

1 畜産環境総合整備事業実施要綱は、対象事業について、「将来にわたり畜産主産地として発展が見込まれる地域であって、畜産経営の発展と生活環境の保全を図るため」のものでなければならないとしている。しかし、都市化した藤沢市は、到底「将来にわたり畜産主産地として発展が見込まれる地域」であるとは考えにくく、対象事業の地域とはなりえないと考えられるが、政府のご見解をお伺いしたい。
2 畜産環境総合整備事業実施要綱の対象事業は、あくまでも「総合的な畜産経営の環境整備」を行う事業であり、畜産経営のためのものである。ところが、当該センターの場合、堆肥生産の投入原料一日当たり四五トンのうち、家畜糞は二三トンであり、残る二二トンは食品残さなど家畜由来でないものである。家畜糞の割合は五〇%をほんのわずか上回るに過ぎない。将来、畜産農家が少しでも廃業・規模縮小すればたちまち五〇%を割り込むことが予想され、これでは、当該センターへの補助金が畜産経営のために支出される性格を継続して安定的に保持するとは見込み難い。補助金の目的外使用を最初から見越した計画であるとしか考えにくいが、政府のご見解をお伺いしたい。また仮に、当該センターの運営において家畜糞の割合が経常的に五〇%を割り込む事態が生じた場合、政府としてどのように対応されることになるか。
3 周辺地域に大きな影響を与える事業は、関係者間で十分な話合いが行われ、事業の必要性について十分な認識が形成され、合意される中で実施されるべきである。国等の補助金の対象となる事業では、さらに必要とされることは言うまでも無い。当該センター建設事業では、家畜排せつ物や食品残さの持ち込み、生産された堆肥の引取りにおいて、関係者の協力が不可欠であり、とりわけ、地元の耕種農家との十分な話合いや密接な連携が不可欠である。また、地域の環境への十分な配慮が必要である。ところが、藤沢市では、そうした十分な話合いや関係者間の合意形成がなされておらず、地元では強い反対運動が生じている。このような地元の合意が形成されていない事業であっても、政府は、畜産環境総合整備事業実施要綱の対象事業として認めるのかどうか、政府のご見解をお伺いしたい。
4 全国においても、既存の大規模堆肥センターは赤字経営となっており、地方自治体が運営している場合、自治体の一般会計予算で補填されているところもある。当該センターの運営は、生産された堆肥の販売先として地元の耕種農家と十分な話合いや密接な連携があるわけではないので、地元での引取先を確保することは困難と考えられる。しかも、近年、流通堆肥の価格は下落しており、地域外に有利な価格で売り捌くことも容易でない。こうした事態の発生が予想されることに対する政府のご見解をお伺いしたい。また、こうした行き詰まりのおそれのある経済合理性のない事業であっても、政府は、畜産環境総合整備事業実施要綱の対象事業として認めるのかどうか、政府のご見解をお伺いしたい。
5 農林水産省は、平成一二年二月二一日付けの都道府県畜産主務部長宛て畜産経営課長名通知で、「家畜排せつ物処理施設の整備については、……最も適した家畜排せつ物の処理方法を決定の上、計画的に整備を進めていくことが極めて重要である」とした上で、「見積合わせを行う等によりできるだけ低コスト化が図れるよう畜産業を営む者に対して指導する」ことを求めるとし、家畜排せつ物処理施設の低コスト化方針を打ち出している。しかし、当該センターは、前記4のとおり、経済合理性の見通しの厳しい事業であり、この低コスト化の方針にも反するものであると考えられるが、政府のご見解をお伺いしたい。
6 当該センター建設予定地は、「農業振興地域の整備に関する法律」に基づき農業振興地域として指定された地域内にある農用地であったにもかかわらず、藤沢市は、本年五月二八日、その建設予定地を農業振興地域から除外する旨の公告縦覧を行った。地元の地権者は、この藤沢市による農業振興地域から除外する旨の決定に対して異議申立てを行い、同市長の棄却後も、神奈川県知事に現在審査請求しているところである。当該センターは農業用施設に該当し、農業用施設であれば、建設予定地域を農業振興地域からあえて除外する理由はなく、藤沢市自身も当該センターは農業近代化施設であると説明してきた。にもかかわらず、あえて農業振興地域から除外したのは、当該センターを畜産排せつ物以外の廃棄物処理施設として運用していこうとするためとも考えられる。畜産環境総合整備事業実施要綱に基づく補助金は、家畜排せつ物法の円滑な施行の確保のために支給されるものであり、畜産排せつ物以外の廃棄物処理施設建設への補助金支給という結果となれば、補助金目的外使用に当たる不当な支給となることも考えられる。こうしたおそれのある当該センター建設事業を、政府は、畜産環境総合整備事業実施要綱の対象事業として認めるのかどうか、政府のご見解をお伺いしたい。
7 当該センターは、PFI方式で建設・運営されることになっている。PFIを実施する会社の出資者は、畜産農家のほか、センターの施設・設備の建設及び運営にかかわる建設業者や設備業者等の私企業である。出資しているこれらの私企業は、補助金が投入された施設・設備の事実上の共同所有者になり、当該センターの建設・運営における受益者となるが、このような形で私企業がかかわり、補助金の受益者となる事態は、畜産環境総合整備事業実施要綱の予定外のことではないかと考えられるが、政府のご見解をお伺いしたい。

 右質問する。



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