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平成十六年十二月二日提出
質問第七〇号

改正出入国管理及び難民認定法の運用に関する質問主意書

提出者  中村哲治




改正出入国管理及び難民認定法の運用に関する質問主意書


 第一五九回国会において、出入国管理及び難民認定法が改正された。
 本法の施行にあたっては衆議院、参議院で附帯決議が出されている。これらの決議は難民行政全般について重要な指摘がなされており、政府はその履行に大きな責任を負っている。本法の運用に関連し、以下の各点について質問する。

〇難民申請者の収容について
 一 参議院附帯決議第三項には「出入国管理及び難民認定法に定める諸手続に携わる際の運用や解釈に当たっては、難民関連の諸条約に関する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の解釈や勧告等を十分尊重すること」とあり、そのUNHCRの執行委員会は、難民および庇護希望者の拘禁に関する結論(第四十四号一九八六年)で「拘禁は随伴する苦痛に鑑みて、通常は回避されるべきである」としている。また参議院附帯決議第八項には「入国管理センター等に収容されている退去強制手続中の外国人については、人権に十分配慮した適切な処遇を行うとともに、仮放免の的確な運用に努めること」と定めている。これらの附帯決議との関連で、以下の点について質問する。
 (一) UNHCRがいわゆる「マンデート難民」として登録している人々がいる。これらの人々については、UNHCRが、人道的な見地から難民として保護すべきと判断したことを公式に表明したものと解される。参議院附帯決議に対する政府の遵守義務と、UNHCRの「マンデート難民」に関する見解からすれば、現在収容されている「マンデート難民」は当然放免され、また現在収容されていない「マンデート難民」も、今後収容されることはないと認識するが、この見解に相違ないか政府の見解を問う。
 (二) 前掲のUNHCR執行委員会の結論を尊重するのであれば、現在収容中の難民申請者については、仮放免すべきではないか。仮放免に応じないのであればその理由を応えられたい。
 (三) アフガニスタン難民についてUNHCRは、「自主帰還支援」を原則とし、「特に脆弱な状況にある人々に帰還を強いるべきではない」と主張している。この主張についてUNHCRは二〇〇三年七月に日本政府に伝えたと聞いているが、政府は承知しているか。
 (四) 収容が帰還を強いる要素であることは明らかであり、難民資格を与えられなかった者、不認定処分取り消し訴訟で訴えを退けられた者を含めて難民資格を求めていたアフガニスタン難民については、帰還の強制につながる収容を行うべきではないと考えるが政府の見解を問う。
〇被収容者の医療に関する処遇について
 二 参議院附帯決議第八項にある、被収容者の「人権に十分配慮した適切な処遇」に関連し、収容施設における医療情報の開示その他患者たる被収容者の医療に対する権利について質問する。
 (一) 二〇〇三年九月十二日、厚生労働省(医政局長)は医療機関において則るべき「診療情報の提供等に関する指針」を都道府県知事に通知し、管内の市町村・関係機関・医療従事者等に対し「周知徹底および遵守」の要請をするよう指示した。
 これには、診療情報の提供等について、
 ・「法定代理人のみならず弁護士など任意代理人による開示請求も除外していないこと」
 ・「開示を拒みうる場合(非開示事由)を・診療情報の提供が、第三者の利益を害するおそれがあるとき、・診療情報の提供が、患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるときの二つに限定し「開示が適当でない」などという一般的条項や「訴訟を前提としている」ことを理由とする非開示は許されないとしたこと」
 ・「非開示とした場合には文書でその理由を示すことを原則とし、かつ苦情申立手続を説明しなければならないとしたこと」
 ・「医療機関の管理者は診療記録の開示手続等や苦情処理体制について院内掲示などで患者に対しての周知徹底を図らなければならないこと」
 などが定められている。
 被収容者のカルテについて、開示に関する基準または条件は定めているのか。定めていればその内容を開示されたい。
 (二) 被収容者の代理人弁護士または被収容者本人の同意を得た家族・支援者などによるカルテの開示請求について拒否される事例が多いと聞いている。カルテの開示を拒否する理由(開示しないことによって得られる合理的な利益があるのか)を示されたい。また前掲二〇〇三年九月の厚生労働省の指針を踏まえれば、今後はこれらの人々からのカルテの開示請求については原則応じることとなると思うが、この見解に相違ないか。
 (三) また過去二年間で被収容者の診断書の交付を求められたにもかかわらず、それを拒否した事例があった場合、担当医師は、医師法第十九条第二項に違反したと考えられるがどうか。
 (三−一) その場合、医師法に違反した医師(医官)は処分を受けるのが相当と思われるが、どのような処分を行ったのか。
 (四) 医療法第一条の四第二項には「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」と定められている。通訳が介在しない場合、医師と患者の間に誤解が生じる可能性がある。そうした誤解を避けるために、通訳を必ず介在させるべきと考えるが、政府の見解を問う。
 (五) 世界医師会は「患者の権利に関するWMAリスボン宣言」を採択し、「患者はいかなる治療段階においても、他の医師の意見を求める権利」があると定めている。この権利を保障する措置として、被収容者本人または代理人の要請があれば、収容施設に訪れる医師による診察を認めるべきではないか。政府の見解を問う。
 (六) 収容施設の責任者からの委託を受けて診察した医師または各収容施設に敷設された診療所の管理医師が外部の医療機関への受診が必要であると判断した場合、患者たる被収容者には、例えば医療機関までの距離がほぼ同等であり、必要な科目を備え、診療時間も同等である等合理的な範囲内で、自身が受診する医療機関を選択する権利があると考えるが、政府の見解を問う。
 (七) 本年六月、西日本入国管理センター所長は、茨木保健所に対して「医師の不在時は、受診の要否を職員が判断して、必要と判断すれば外部の病院に搬送する」と回答されたと聞いている。事実であれば、医師法第十七条が禁止する無資格者による医療行為に該当するのではないか。
 (八) 被収容者処遇規則第八条に定められている健康診断について質問する。
 (ア) 被収容者処遇規則第八条には、「所長等は、新たに収容される者について、必要があると認めるときは、医師の健康診断を受けさせ、り病していることが判明したときは、病状により適当な措置を講じなければならない」とある。健康診断は、本人の同意を得て、収容前に原則的に全員に実施すべきではないか。
 (イ) 所長など医師でないものが、健康診断の必要性を的確かつ正確に判断できるとする根拠を示されたい。また、所長等による健康診断の必要性の判断は、健康状態を医師以外のものが判断する過程、すなわち診断行為を含んでおり、医師法第十七条が禁止する無資格者による医療行為に該当するのではないか。
〇難民調査ならびに参与員について
 三 衆議院・参議院の附帯決議で指摘された難民調査充実の観点について、以下質問する。
 (一) 難民調査は、多くの場合マイナー言語を母語とする申請者を対象とするため、通訳者を確保することは難しいと考えられる。多くの場合調査官は、調査に使用する言語を解さないと推測されるが、通訳者が適正であることを、調査官はどのようにして確認するのか。
 (二) 衆議院附帯決議には「難民審査参与員制度については、専門性を十分に確保する観点から、国連難民高等弁務官事務所、日本弁護士連合会及びNGO等の難民支援団体からの推薦者から適切な者を選任するなど留意するとともに、難民審査参与員の調査手段が十分に確保されるよう体制の整備を図ること」とされているが、これについて質問する。
 (ア) 国連難民高等弁務官事務所、日本弁護士連合会以外に、推薦者案提出の依頼を検討している団体はあるのか。また、すでに依頼している団体がある場合は、その団体名を明らかにされたい。
 (イ) 参与員に求められる専門性については、少なくとも次の三点が考えられる。一つは、出身国の人権状況についての知識、二つめは難民条約、難民条約に関する議定書、UNHCR執行委員会の結論などについての相当の知識、三つめは信憑性を評価する実務面でのノウハウである。これらの点について、参与員の専門性を確保するため、参与員にどのような資格要件を求め、あるいはそれらの専門性を身に付けさせるための研修プログラムをどのように用意するか。
 (ウ) 参与員は、難民申請者の出身国と、経済的、外交的利害から独立していることが客観的、合理的に確認される必要があると考える。この独立性を確認するための基準について、どのようなものを設けるつもりか明らかにされたい。
 (エ) また、「難民審査参与員の調査手段が十分に確保されるよう体制の整備を図る」ために、参与員に対し、どのような証拠、資料、その他の手段を提供することを考えているか、具体的に明らかにされたい。
 (オ) とりわけ、出身国における人権状況(すなわち、経済状況や支配的民族、宗教、政治グループ、政府組織の観点から見た出身国の政治状況ではなく、民族的、宗教的、政治的少数者の人権状況)に関係する人権組織、他国の難民認定機関が作成している各国の報告書や独立したマスコミの記事などの日本語版を広範に収集、蓄積し、参与員の求めに応じて提供する必要があると考えるが、政府の見解を伺う。その必要性を肯定されるなら、その必要を満たすためにどのような措置を講じるつもりか明らかにされたい。

 右質問する。



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