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平成十六年十二月二日提出
質問第七二号

平成十六年十一月二十六日付け政府・与党合意文書「三位一体の改革について」に関する質問主意書

提出者  山花郁夫




平成十六年十一月二十六日付け政府・与党合意文書「三位一体の改革について」に関する質問主意書


 平成十六年十一月二十六日に政府・与党間で合意された「三位一体の改革について」(以下、「合意文書」)は国民生活に重大な影響があるにもかかわらず、不明確な点が多い。よって、政府の見解をお尋ねする。

一 小泉総理大臣は、三位一体改革にかかわり、地方六団体が政府に提出した「国庫補助負担金等に関する改革案」(以下、「地方案」)について「地方案を真摯に受け止める」と繰り返してきた。今回の「合意文書」は「地方案」を真摯に受け止めた結果なのか、政府の見解を問う。また、仮にこれを真摯に受け止めた結果とするならば、具体的にどの点について「地方案」を反映させているのか、それは「国庫補助負担金改革」か、「税源移譲」か、「地方交付税改革」か、具体的な回答を求める。
二 小泉総理大臣は、いわゆる「三位一体改革」のとりまとめに向けて政府・与党間で調整が行われている間、「私のところにくる前にまとめてほしい」と繰り返した。総理の意向を受けて地方がまとめた「地方案」の扱いについて政府与党及び政府内で調整に困難をきたしている段階における発言としては不穏当であり、かつ「地方案」とりまとめにおいて真摯な努力を重ねてきた地方六団体に対して失礼な発言ではなかったか。本来であれば、より「地方案」が反映した合意を行うために総理自身がリーダーシップを発揮する必要があり、かつそれが提案を行った地方六団体の期待であったと考えるが、なぜ総理はこのような発言を繰り返したのか、その真意を問う。
三 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇四(以下、「骨太〇四」)」においては、「平成十八年度までの三位一体の改革の全体像を平成十六年秋に明らかにし」とあるが、今回の「合意文書」では未だ具体的になっていない点が多く、全体像が明らかとなっているとは言い難い。これは、結果として閣議決定違反ではないのか、政府の見解を問う。
四 「骨太〇四」には国庫補助負担金改革の工程表を年内に決定するとしているが、「合意文書」を閣議決定するのか。
五 「骨太〇四」に記載された「税源移譲は概ね三兆円規模を目指す」に関して、政府は本年八月十日の「三位一体改革における税源移譲額等に関する質問主意書」に対する答弁書において、平成十六年度において措置した所得譲与税及び税源移譲予定交付金の額が三兆円に含まれる旨の答弁を行っている。「骨太〇四」において「三兆円程度の国庫補助負担金改革」が記載されていることから、当事者たる地方自治体を含め多くの者が平成十六年度において措置した所得譲与税及び税源移譲予定交付金の額が三兆円に含まれないと理解していたものと考えられるが、八月十日付答弁書に示された方針は、既に「骨太〇四」閣議決定段階で決していたものなのか、或いはその後の調整過程において政府が決定したものなのか。
六 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三(以下、「骨太〇三」)」を経済財政諮問会議で決定する際に行われた「内閣総理大臣指示」には、その冒頭に「三位一体の改革は、『官から民へ』、『国から地方へ』の考え方の下、『地方が自らの創意工夫と責任で政策を決める』、『地方が自由に使える財源を増やす』、『地方が自立できるようにする』ことを目指すもの。」とある。今回の合意文書は、この「内閣総理大臣指示」を的確に反映したものと言えるのか。特に『地方が自らの創意工夫と責任で政策を決める』、『地方が自立できるようにする』の観点に立った場合、今回の「合意文書」の具体的にどの部分が地方の創意工夫可能な範囲の拡大に寄与し、またどの部分が地方の自立を促進することとなるのか。
七 「骨太〇三」において、国庫補助負担金改革と税源移譲の関係について「補助金の性格等を勘案しつつ八割程度を目安として移譲し、義務的な事業については徹底的な効率化を図った上でその所要の全額を移譲する」と記載されている。今回の「合意文書」の別紙1「2.概ね三兆円規模の税源移譲のうち、その八割方について次のとおりとする」に示された個別補助金等のうち、「八割程度を目安として移譲」するもの及び「所要の全額を移譲する」ものの区分を示されたい。
八 「合意文書」冒頭には、「真に住民に必要な行政サービスを地方が自らの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大する」とある。同時に「合意文書」には「補助負担金の廃止・縮減によって移譲された事務事業については、地方団体の裁量を活かしながら、確実に執行されることを担保する仕組みを検討する」とある。この二つの文章は両立するのか。仮に後者に重きを置く場合、地方は一般財源によって、廃止された補助事業の実施を義務づけられることとなるが、その場合地方自治体は一体何を自主的に選択できることとなるのか。
九 「合意文書」一枚目には「あわせて、国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う」とあるが、これは具体的に何を指すのか。所得税・住民税における税率の見直し、税率区分の見直し、控除の見直しのいずれが該当するのか。それは税源移譲に必要な範囲で行うのか、それとも財政健全化等他の観点を含めた抜本的見直しなのか。また「骨太〇三」にある「十八年度までに必要な税制上の措置を判断」するとの記載と関係はあるのか。さらに住民税の抜本的見直しの内容は、一体誰が判断するのか。
十 「合意文書」二枚目には「国・地方の双方が納得できるかたちで歳出削減に引き続き努め」とあるが、これは「骨太〇四」に示された「国の歳出の見直しと歩調を合わせて、地方の歳出を見直し」から表現が修正されている。この修正の意味するところは何か。「合意文書」の表現は、「国の歳出の歩調とは切り離して地方の歳出削減を行う」とも読めるが、その趣旨で良いか。
十一 「合意文書」二枚目には、「円滑な財政運営、制度の移行を確保するため、税源移譲に伴う増収分を、当面基準財政収入額に一〇〇%算入する。」とあるが、その趣旨・仕組みが不明確である。なぜ「増収分の一〇〇%算入」が「円滑な財政運営、制度の移行の確保」に資するのか、具体的な説明を求める。
十二 「合意文書」二枚目に「平成十七年度以降、地方財政計画の計画と決算の乖離を是正し、適正計上を行う」とある。財務省が十月二十六日「国と地方の協議の場」に示した資料によると、地方財政計画には七兆乃至八兆円の不適切な「過大計上」があるとしているが、この「合意文書」の「計画と決算の乖離」はこの財務省の指摘する「過大計上」を意味するのか。政府として、現在の地方財政計画は「七兆乃至八兆円の不適切な過大計上がある」という認識なのか。仮に政府がその認識に立つとすれば、地方財政計画の策定に責任を負う総務省及び財務省の責任をどのように考えるのか。また適正計上を「平成十七年度」から行うとしているが、具体的にはどのような適正化を図るのか。財務省の指摘に基づき「投資単独事業の縮小」「公債費の縮小」「地方公務員給与の縮小」「公営企業繰出金の縮小」を行うのか。
十三 「合意文書」二枚目には、「その上で、中期地方財政ビジョンを策定する」とある。この場合、「その上で」とはいかなる条件を指すのか。また「中期地方財政ビジョン」とは具体的にどのような内容を想定し、また策定プロセスに地方が関与することを想定しているのか。
十四 「合意文書」二枚目に「不交付団体(人口)の割合の拡大に向けた改革を検討する」とある。一方、麻生総務大臣が十月二十二日経済財政諮問会議に提出した資料によれば、「二〇一〇年代初頭には、不交付団体(市町村)の人口割合を三分の一程度とすることを目指す」とある。地方交付税制度を所管する総務大臣が具体的な数値目標を掲げたにもかかわらず、なぜ「合意文書」にはこの数値目標が記載されなかったのか、理由を問う。また「合意文書」の「不交付団体(人口)の割合の拡大」とは、都道府県及び市町村における拡大を目指すということか。
十五 「合意文書」二枚目にある「交付税の算定方法の簡素化、透明化に取り組む。また、算定プロセスに地方関係団体の参画を図る」の具体的な内容を説明されたい。
十六 「合意文書」二枚目の「文教」の項にある「義務教育制度については、その根幹を維持」の場合の「根幹」とは何か。学習指導要領を国が定めることか、国による教科書検定か、教育の無償制か、義務教育教職員給与の一定割合を国が負担することか、見解を問う。
十七 「合意文書」三枚目「社会保障」の項にある「国民健康保険については、地方への権限移譲を前提に、都道府県負担を導入する」の場合の「権限移譲」とは具体的に何か。この場合、権限移譲の対象は都道府県のみか。
十八 「合意文書」三枚目「公共等その他」@にある「国の関与の必要のない小規模事業」の場合、これは「国の関与が必要が無く、かつ小規模な事業」か、或いは「『国の関与の必要のない』小規模事業」か。後者の場合、国が関与する必要のない一定金額以下の小規模事業については、今後「合意文書」にかかわらず、廃止・縮減の対象となることを意味するのか。
十九 「合意文書」三枚目「公共等その他」Aにある「地域再生の取り組みにおいても三位一体の改革に資するものとなるよう留意する」との文章が意味するところは何か。なぜこの場所に記載する必要があるのか。
二十 「合意文書」三枚目「公共等その他」Bの意味するところは何か。「地方案」でも「特定地域の特別の事情により講じられている」国庫補助負担金は移譲対象から「除外すべき」とされており、あえてここに記載する必要は無いと考えられるが、なぜ記載しているのか。
二十一 「合意文書」三枚目「国による基準・モニター等チェックの仕組み」については、具体的にどのような仕組みとなるのか。廃止・縮減によって移譲された補助事業各々について、元の所管省が個別に自治体の実施状況をチェックするような仕組みを念頭に置いているのか。
二十二 「合意文書」四枚目「地方交付税の改革について」において「地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する」とある一方で「平成十七年度以降も地方財政計画の合理化、透明化を進める」とある。「地方財政計画の合理化」を進めながら、「一般財源の総額を確保する」とは具体的にどのような中身なのか。平成十七年度予算において、地方交付税の総額は実質的に平成十六年度の水準を確保するのか。或いは平成十七年度予算から地方交付税の縮減を図るのか。またこの場合確保すべき「一般財源」の中には臨時財政対策債は含まれるのか。
二十三 「合意文書」四枚目にある「決算を早期に国民に分かりやすく開示する」とあるが、この場合の「決算」とは地方財政計画の決算か、或いはいわゆる「地方財政白書」のことか。
二十四 「合意文書」別紙1について問う。
 @ 「1.概ね三兆円規模の税源移譲を目指す」とは「2」の約二・四兆円に、「3」の検討事項を加えて、三兆円とする意味か。
 A 「2」の個別の補助金について、各都道府県ごとの影響額は何時の時点で明らかになるのか。政府が自ら公表を行うのか。なお当該補助金等の廃止・縮減は自治体の財政運営ひいては住民生活に重大な影響を与えるものであり、その意味では当面平成十六年度ベースの試算額であっても速やかに公表する必要があると考えるが、政府の見解を問う。なお「合意文書」別紙2についても、対象となる補助金について「税源移譲に繋がる改革」「スリム化の改革」「交付金化の改革」の区分を早急に示す必要があると考えるが、政府の認識は如何か。
 B 「義務教育国庫負担金(暫定)八五〇〇億円程度」における「暫定」とは、中教審における検討結果によっては、「八五〇〇億円程度」の縮減を全く行わないということも含まれているのか。それとも八五〇〇億円の縮減を前提として、中教審ではその縮減のあり方について検討を行うということなのか、政府の見解を問う。また関連して、十一月二十六日に細田官房長官が中山文科大臣に対して「地方負担がゼロで、国が全部持つ可能性だってある」と説明したとの報道があるが、これは真実か。さらに十一月十七日時点で細田官房長官始め関係閣僚間で「義務教育国庫負担金については、〇五年度に補助率を引き下げ、〇六年度に負担制度を廃止して一般財源化することでいったん合意した」との報道もあるが、これは真実か。仮に双方とも真実だとすれば、細田官房長官は義務教育国庫負担金のあり方について、一体どのような認識を持っているのか、明らかにされたい。
 C 国民健康保険の負担金縮減は具体的にどのような形態で行うのか。報道では現在の定率負担の国負担分及び調整交付金の国負担分の一部を都道府県が負担する方向で検討しているとされているが、そのような方向で検討していくのか。また政府は再来年に医療保険制度の改革を予定しているが、今回のこの「合意文書」による措置は、当該医療保険制度改革を踏まえた恒久的措置と理解して良いのか。
 D 「3」の生活保護・児童扶養手当について、表記は「負担金の改革」とあるが、注記では「補助率の見直し」とある。この負担金の改革の内容とは、補助率の見直しに限定されるのか。それとも改革の内、補助率の見直しに限り、注記にあるように「地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行い」、それ以外の改革は別途行うという意味なのか。
 E 「3」の「公立文教施設等、建設国債対象経費である施設費の取扱い」については平成十七年中に検討を行うこととしているが、同じ建設国債対象経費である公共事業費については、検討を行わないのはなぜか。併せて「地方案」において求められている公共事業関係補助金について、財務省は「公債をもって財源とする公共事業関係費は税源移譲になじまない」としているが、一般会計の概ね半分を公債をもって財源を確保している現状に鑑みれば、財務省の主張では、いずれの国費も税源移譲になじまないとも考えられる。なぜ建設公債を財源とする公共事業関係費は税源移譲になじまず、特例公債をもって財源とするその他の経費は税源移譲の対象となるのか、明確な政府の見解を求める。当該事業の便益が後世代に及ぶという観点では施設費もほぼ同等であり、また補助金廃止と税源移譲を平仄を合わせて行うという観点に立てば公共事業関係補助金の移譲も建設公債の発行縮減に繋がることから後世代への負担が軽減されることにも留意して答弁されたい。
 F 「3」において「その他」の項目があるが、これは「合意文書」で廃止・縮減された補助金等を除く全ての補助金等が検討対象となることを意味するのか。或いは一定範囲の補助金等が対象なのか。
 G 「3」の今後検討する事項を現段階では除外するという前提に立った場合、平成十六年度から十八年度における補助金等改革と税源移譲の結果は、補助金等の廃止・縮減額三・八兆円、税源移譲額二・四兆円という理解で良いのか。仮にこの理解が正しいとすれば、この結果は「骨太〇三」における「補助金の性格等を勘案しつつ八割程度を目安として移譲し、義務的な事業については徹底的な効率化を図った上でその所要の全額を移譲する」に整合しているのか。
 H 内閣官房長官始め関係四閣僚が自民党・公明党の政策責任者と合意した文書には「義務教育国庫負担金の改革については、全体像において八五〇〇億円程度の減額を計上する」とあるが、この場合の「計上」とはいかなる意味か。なぜ「八五〇〇億円程度を減額する」と記載しないのか。また「税源移譲予定特例交付金」の配分について「その額は、教職員給与費を基本として配分する」とあるが、その意味は何か。結果として、現行制度に基づく義務教育教職員給与費の二分の一に相当する額が、各個別自治体に配分されるという意味か。
二十五 小泉総理は「地方でできることは地方へ」という基本的方針を繰り返し発言している。翻って、「合意文書」では「地方案」が廃止を求めていた三・二兆円の補助金の内、四〇〇〇億円程度しか削減しておらず、多くの補助金が存続することとされているが、この削減対象以外の補助金による補助事業について政府として「地方ではできないこと」という認識に立っているのか。例えば「治山・治水」は「地方にはできないこと」との認識に立っているのか。
二十六 全国知事会の梶原会長は、「国と地方の協議の場は今後も継続していく」と発言しているが、政府としても同様の認識に立っているのか。仮にそうであれば、今後どのような運営を図っていく所存か。具体的には次回は何時行うのか。

 右質問する。



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