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平成十七年四月十四日提出
質問第五一号

水俣病問題における被害者救済に関する質問主意書

提出者  松野信夫




水俣病問題における被害者救済に関する質問主意書


 水俣病問題は、平成七年十二月十五日付で閣議了解された「水俣病対策について」(以下、政府解決策という)を受けて実施された総合対策医療事業(以下、総対事業という)等によって大幅な救済が実現している。しかし、チッソ水俣病関西訴訟における平成十六年十月十五日の最高裁判決(以下、最高裁判決という)で国及び熊本県の責任が認定されたことから、改めて被害者救済を中心とした問題の解決が求められることとなった。
 熊本及び鹿児島両県での「公害健康被害の補償等に関する法律」(以下、公健法という)による認定申請者は、最高裁判決後急増し、すでに約千五百名という状況にある中、環境省は、平成十七年四月七日付「今後の水俣病対策について」(以下、環境省案という)を大臣自らが発表しているが、患者団体からは強い反発もあり、極めて問題点が多い。そこで緊急を要する被害者救済の観点から、以下の質問をする。

一 環境省案の中で、「国として、ここにすべての水俣病被害者に対し謝罪の意を表する」という表現があるが、「すべての水俣病被害者」とは具体的に何を示すのか、公健法上の認定者のみならず総対事業該当者や認定申請者、判決確定原告等も含める趣旨か、明らかにされたい。
二 環境省案では、総対事業のうち保健手帳のみの申請再開としているが、なぜ、同事業全体の再開ではなく保健手帳のみの申請再開としているのか、明らかにされたい。
三 現行の総対事業では、公健法上は水俣病とは認定されないものの、水俣病にもみられる四肢末梢優位の感覚障害を有する人を医療手帳対象者とし、四肢末梢優位の感覚障害以外の一定の神経症状を有する人を保健手帳対象者としている。しかし、環境省案では保健手帳のみの申請再開のため、本来であれば医療手帳対象者とされるべき人でも保健手帳しか交付されないことになるので、被害者間の公平性が保たれていないと判断せざるを得ないが、公平性はどのように確保するか。
四 現行の総対事業では、要するに四肢末梢優位の感覚障害の有無で交付すべき手帳の区別をしている。最高裁判決及び原審である大阪高裁判決ではこの区別は採用されず、むしろ二点識別覚異常の有無を重視しているが、総対事業ではこれを取り上げていない。この点からみても不公平と考えられる。結局のところ、四肢末梢優位の感覚障害の有無で医療手帳と保健手帳の差異を設ける意味はほとんどなくなっていると考えられるが、国はこの点をどのように評価しているか。
五 環境省案を前提にすれば、支給面においては、政府解決策においてチッソが負担した一時金を除外すれば、医療手帳と保健手帳との差異は療養手当の有無のみとなるのではないかと考えるが、その通りであるか、あるいは何らかの差異があるか、明らかにされたい。
六 環境省は公健法をどのように評価、認識し、水俣病対策の中でどのように活用しようとしているのか、明らかにされたい。
 また昭和四十八年九月二十日の参議院公害対策及び環境保全特別委員会では、公健法案に次のような附帯決議が付されている。
 「三 公害健康被害認定審査会の認定審査にあたっては、主治医の診断が尊重されるよう配慮すること。
  四 患者の認定審査を円滑にすすめる前提として、健康調査・診断の体制を早急に整備すること。そのために、公害病専門医師の養成、確保の措置を講ずるよう努力すること。」
 これは遵守されていると考えるか。
七 最高裁判決後、公健法に基づく認定申請者が急増しているが、熊本県及び鹿児島県における検診や認定審査等の体制の現状をどのように把握しているか。また、そのような状況に対して、国はどのような対策を考えているか。
八 最近十年間の認定審査会にかかる実態をみたとき、申請者一人を処分するのにかかる費用と時間は平均してどの程度であるか、明らかにされたい。認定にかかる業務は国と県で費用負担しているが、この費用が多大にかかっているようであれば認定業務の見直しをすべきと思うが、そのような考えはないか、明らかにされたい。
九 最高裁判決以降、四月十二日までの約半年間の認定申請者数は熊本県八百八十五名、鹿児島県六百十名である。この申請者数は、鹿児島県では過去最高の昭和四十九年度一年間の三百八十九名をはるかに超えており、また熊本県においても昭和四十八年度の千九百三十七名や同五十二年度の千四百十二名、同五十三年度の千四十八名に迫る数である。かかる状況を鑑みたとき、国自らが水俣病の認定業務を担当するという考えはないか。例えば水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法を復活させて、両県と共に認定業務を分担する考えはないか。
十 平成七年十二月の政府解決策は「水俣病問題の最終的かつ全面的な解決を図るため」のものであったとされたが、実際にはそうはなっていない。今回の環境省案は「水俣病問題の最終的かつ全面的な解決を図る」ものに成り得ると考えているか。そう考えるのであればその根拠を、考えないのであればどのようにして「水俣病問題の最終的かつ全面的な解決を図る」のか、現時点での考えを明らかにされたい。

 右質問する。



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