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平成十七年四月二十七日提出質問第五六号
旧日本軍の防空壕の再調査と安全対策に関する質問主意書
提出者 赤嶺政賢
旧日本軍の防空壕の再調査と安全対策に関する質問主意書
去る四月九日に鹿児島県鹿児島市武岡一丁目の防空壕とみられる地下壕で、中学生四人の尊い生命が失われるという痛ましい事故が発生した。今回の事故は、国土交通省、農林水産省、林野庁による、二〇〇一年度の特殊地下壕実態調査で把握されていない壕で発生している。鹿児島県鹿屋市では、五年前にも防空壕の上を走る県道が陥没し、車ごと転落して女性が亡くなるという事故が起きている。この地下壕も未確認であったとのことである。こうした事故は、いまなお、確認できていない壕が多数存在するのではということを窺わせる。戦後六〇年を経過した今日、旧日本軍の防空壕の再調査と安全対策は緊要と考える。
従って、以下の事項について質問する。
1 事故原因の究明と再発防止策を伺いたい。
2 当該地下壕は、旧日本軍の防空壕と確認できたのか。
3 二〇〇一年の特殊地下壕実態調査(以下「実態調査」という。)では、何故、把握できなかったのか。
4 事故後、「実態調査」で把握されている地下壕の安全点検と再調査について、どのような指示をしたのか。その際、危険性のある壕の緊急の安全対策をどういう手法で講ずるのか。
二 二〇〇一年の「実態調査」結果に基づく全国の防空壕の安全対策と追加調査について
1 「実態調査」では、今回、事故が起きた鹿児島県は、一九九一箇所、そのうち危険度の高い壕は五七箇所、危険又はその可能性のある壕は二四一箇所、総数では、全国の四割が集中している。
長崎県は、五三三箇所、危険度の高い壕は六八箇所、危険又はその可能性のある壕は九五箇所である。
また沖縄県は、二三八箇所、危険度の高い壕は二七箇所、危険又はその可能性のある壕は四二箇所、全国的にみてもその数は極めて多い。
この際、各都道府県別に存在する壕の数を危険度の基準に従って、その実態を明らかにされたい。
2 二〇〇一年度の「実態調査」で把握している地下壕は五〇〇三箇所に達するというが、その壕の安全対策並びに住民の生活と安全を確保するということについて、国の基本的な考え方を伺いたい。
3 鹿児島市は、四月二一日現在で、新たな壕を一一〇箇所確認しており、今後も増えるとの予想をしているが、二〇〇一年度の「実態調査」で把握できていない防空壕については、どのような体制と方法で調査を実施するのか。
三 防空壕の認定基準及び危険度の基準について
1 防空壕、すなわち特殊地下壕の認定基準を明らかにされたい。
2 危険度の基準と考え方について明らかにされたい。
3 「実態調査」では、壕について、「危険度の高い壕」、「危険又はその可能性のある壕」と区別しているが、その危険度の判断基準はなにか。
危険度の基準について、「危険度の高い壕」と「危険又はその可能性のある壕」とは、どのように違うのか、また、「危険又はその可能性のある壕」とそれ以外の壕の違いはどこにあるのか、理解できるように説明されたい。
4 危険度の基準には、物的危険度、人的危険度とあるが、それはどのような危険性をいうのか、また、基準には、A、B、Cに区別されているが、それぞれの危険性の度合いを説明されたい。
5 この危険度の基準は、あまりにも厳格すぎて特殊地下壕の現状の危険性を反映したものではないとして、地方公共団体から基準の見直しを求める声があるが、どう考えるのか。
四 特殊地下壕対策事業及び特殊地下壕対策災害関連事業について
1 壕の対策に係る事業は、特殊地下壕対策事業と特殊地下壕災害関連事業と承知しているが、これら事業の国の補助率、地方公共団体との負担割合等その内容及び事業の所管省庁を明らかにされたい。またこれ以外に壕の対策事業があれば伺いたい。
2 旧軍が築造した壕はいうまでもなく、「軍事工場」、「地方自治体」、「町内会」が築造した壕であったとしても、軍の命令によるものであり、国の責任において行なうべきものであると考えるがどうか、また事業主体を地方公共団体としているのはなぜか。
3 この事業の対象となるのは、「危険度の高い壕」、すなわち危険度の基準A、Bに該当する壕なのか。また、築造主体が、「旧日本軍」、「地方自治体」、「町内会」であれ、この事業の対象になるのか。
4 二〇〇一年度の「実態調査」では、「危険度の高い壕」は、全国の特殊地下壕五〇〇三箇所のうち、わずか五一八箇所である。この「危険度の高い壕」の対策事業は、一九九四年から九五年までは、災害復旧関連の事業で、その後は、特殊地下壕対策事業で実施してきたというが、一連の対策事業の経過及び各年度予算を明らかにされたい。
5 「危険度の高い壕」、五一八箇所についての各事業の進捗状況を各都道府県別に示されたい。
6 特殊地下壕対策事業等の対象にならない「危険又はその可能性のある壕」は、全国に七七七箇所あるが、この壕についても、特殊地下壕対策事業等の対象にすべきと考えるが、どうか。対象としないということであれば、国は、この壕の安全等対策をどのように考えているのか。
右質問する。