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平成十七年五月三十日提出
質問第六七号

諫早湾干拓事業に関する質問主意書

提出者  松野信夫




諫早湾干拓事業に関する質問主意書


 農林水産省が行っている国営諫早湾土地改良事業(諫早湾干拓事業)については、平成十六年八月二十六日、佐賀地方裁判所で工事差し止めの仮処分命令が出され、その後、平成十七年一月十二日の保全異議決定でも右仮処分命令が維持されたが、同年五月十六日、福岡高等裁判所はこれを取り消す決定を出した。これを受けて現地では工事が再開されているようであるが、福岡高裁の決定については様々な議論があり、工事再開についても疑問が大きい。
 そこで次のとおりに質問する。

一 福岡高裁は、「(九州農政局は、)中・長期の開門調査を含めた、有明海の漁業環境の悪化に対する調査、研究を今後も実施すべき責務を有明海の漁民に対して一般的に負っている」と指摘しているが、政府はこれをどのように受け止めてこの責務を果たしていくか。
二 福岡高裁の決定について、新聞各紙は翌五月十七日の社説で一様に「高裁決定は事業是認ではない」(毎日新聞)、「やはり開門調査が要る」(朝日新聞)、「国は諫早湾で開門調査の責任を果たせ」(日本経済新聞)等と指摘している。政府が本気で有明海異変の原因を究明するつもりがあるなら工事再開をすべきではなく、まず調査をするべきである。工事を進めてしまえば以前の状態との開きも大きくなり、干拓事業が環境へ及ぼす影響を評価する見極めも困難になる。この点をどのように考えるか。
三 福岡高裁は、「諫早干拓工事と有明海の漁業環境の悪化との関連性については、定性的には否定できないが、定量的には明らかではない。(中略)漁業被害をもたらす可能性が考えられるというに止まる」として、工事が有明海の漁業環境悪化について責任がないと判断したわけではない。
 この点を真摯にとらえるならば、工事を再開することは、環境影響評価法の趣旨に反することになるのではないかと考えるがどうか。
 日本の環境行政はまだまだ貧弱であるとつとに指摘されているが、こうした時期にこそ環境大臣が漁業環境保護の観点に立って意見を述べるべきではないかと考えるがどうか。意見表明について何か法律上の不備があるか、あるのであれば、同法の改正を前向きに検討するべきであると考えるがどうか。
四 諫早湾干拓事業では地盤が軟泥のため多量の土壌改良剤が使用されている。その使用量を最近十年間について各年度毎に明らかにされたい。また使用されている土壌改良剤の八十%以上が生石灰との分析結果があるが、これはその通りであるか、そうでない場合は土壌改良剤に占める生石灰の割合を明らかにされたい。
五 土壌改良剤以外にも工事にはセメントが用いられているが、その使用量を最近十年間について各年度毎に明らかにされたい。また使用されているセメントの六十%以上が石灰との分析結果があるが、これはその通りであるか、そうでない場合はセメントに占める石灰の割合を明らかにされたい。
六 石灰は水中に入るとアルカリ性が強くなり、ノリの生育にとっては非常に有害であると考えられているが、その通りと理解しているか。
七 政府はどの程度の石灰が有明海に流れ出しているか、またそれがどのようにノリに悪影響を与えているかについての調査研究は行っているか、またどの程度の悪影響があるかについては把握されているか。すでに有明海の海水中から石灰が検出されているが、こうした事実は把握しているか。
八 近時、有明海では謎の浮遊物と称される浮遊粘着物が多数出現しているが、浮遊粘着物の特定、発生原因、ノリ養殖をはじめとする漁業への影響の程度について調査を行っているか。浮遊粘着物を構成する藍藻類は石灰水によって繁殖が助長されるとされているが、これを確認しているか。
九 石灰は水中に懸濁する浮泥やプランクトン等を凝縮する作用が強く、フロック(懸濁物質)の形成が増大し沈澱してヘドロとなり、その粘着物は浮遊粘着物となるということが指摘されているが、その通りと理解しているか。
十 さらに、石灰は前記のような水質変化をもたらすためノリの細胞分裂に異常を来す。即ち、分裂方向の乱れ、大きさ及び形態に不揃いがみられ、代謝機能が阻害されて栄養吸収が妨げられ、色落ちすると指摘されているが、その通りと理解しているか。また、細胞が多層化して細菌の絶好の温床となって発病や蔓延をみたり、ノリ以外にワカメや昆布等にも異常を来して品質が大幅に低下すると指摘されているが、その通りと理解しているか。
十一 政府はこうした浮遊粘着物に対する対策をどのように考えているか。すでに対策を講じたというのであれば、発生原因対策と除去対策はどのように実施され、どのような成果をあげているか明らかにされたい。

 右質問する。



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