衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十七年六月十日提出
質問第七九号

被爆体験者精神影響等調査研究事業の医療給付制度の改定に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




被爆体験者精神影響等調査研究事業の医療給付制度の改定に関する質問主意書


 被爆六十年を迎え、長崎原爆被爆地域住民は、ますます高齢化が進み「生きているうちに被爆者として認めてほしい」との訴えは一層切実なものとなっている。しかも内外の原爆犠牲者から、被爆者援護の拡充を求める声が高まっている。まさにこの時期に、政府は、本年六月一日から、被爆体験者精神影響等調査研究事業(以下「被爆体験者支援事業」という。)の現行医療給付制度を後退させる内容で、抜本的に改定して同事業を強行した。
 被爆者をはじめ、「被爆体験者」の声を無視した、こうした厚生労働省のやり方は、「被爆体験者」に二重、三重の精神的苦痛を与えるものである。
 被爆体験者支援事業は、「被爆体験」による精神的要因に基づく健康への影響が認定されれば、「被爆体験者」として「被爆体験者医療受給者証」が交付され、医療給付を受けることができるというものである。
 同事業は「原爆投下時に発生した放射線による直接的影響はない」として、放射線被害の影響を否定しているために、「被爆体験者」は、被爆者と同等の扱いがされないなど、重大な問題点があり、著しく公平性を欠いたものであるが、「被爆体験者」の健康の不安を解消するうえで、欠かせない施策となっている。
 そもそも被爆体験者支援事業は、被爆地域住民の半世紀におよぶ願いと運動を背景に、長崎市が取り組んだ「被爆未指定地域証言調査」が契機となって、二〇〇二年四月一日、爆心地より半径十二キロメートル区域内を、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)に基づく健康診断特例区域の指定が実現し、時を同じくして開始されたものである。
 原爆犠牲者の被爆者援護の要求を真摯に受け止めるならば、国の責務として、被爆者体験支援事業の医療給付制度の充実、拡充こそ図るべきであり、同事業の現行医療給付制度の後退は断じて容認できない。よって以下質問する。

一 長崎県及び長崎市は、かねてから被爆者等の医療受給交付対象者の居住要件の撤廃を国に要望してきたところである。ところが政府は、被爆体験者支援事業の医療給付制度について、居住要件を長崎県内全域に拡大し、その一方で、対象疾病の限定、毎年更新時に精神科医師の意見書の提出を義務付けるなど、現行医療給付制度を大きく後退させるものとなっている。何故、このような改定をしなければならないのか明確な説明を求めたい。
 しかも「被爆体験者」の意見も聞かず、周知徹底も図らずに強行しなければならない理由と根拠はどこにあるのか。
二 被爆体験者支援事業は、被爆者援護法の目的及び趣旨を踏まえたものである。
 同事業の旧実施要綱の目的には「健康の保持と向上に資する」と明記されている。ところが新実施要綱は「症状の改善、寛解及び治癒を図る」と、目的を変更しているが、何故、変えなければならないのか。
 厚生労働省は、今回の被爆体験者事業の医療給付制度の見直しについて、「事業の明確化を図り、適切な運営を実施する」と説明をしているが、そうであるならば、何故、同事業の新実施要綱の目的を変えたのか。
 新実施要綱の目的を変えたうえ、「事業の明確化を図る」などと称して、発足当時の同事業の医療給付制度を後退させるということではないか。
三 精神医療受給者証の更新時において、精神科医師による診断をこれまでの三年に一回を、毎年に短縮したのは、「被爆体験者」と精神科医師の負担を増大させるものであり、旧実施要綱通り三年に一回に戻すべきと考えるがどうか。なにゆえに一年に一回診断を受けなければならないのか、その理由を明確にされたい。
四 二〇〇五年度予算において、被爆体験者支援事業費九億円を計上しているが、前年度実績十四億円を大きく下回っている。居住要件を長崎県内に拡大しておきながら、一方事業費は、昨年実績の三分の一を超える大幅な減額となっている。
 これは、「被爆体験者」の医療給付の切捨てと、被爆体験者支援事業を抑制するためであるということは明白である。明確な説明を求めたい。
 厚生労働省が、同事業費予算の「適正化」と言っているのは、事業費を九億円以内に抑制するということを、あらかじめ決めているということではないのか。
 仮に、九億円以上の事業費がかかるようなことがあれば、必要な予算措置は保障されると断言できるのか。
五 六月以降交付される「医療受給証」には、対象精神疾患名や、対象合併疾患名が個々に明記されることとしているが、これは、個人情報の保護、すなわち個人のプライバシーの侵害にあたるものと考えるがどうか。
六 被爆体験者支援事業については、少なくとも、居住条件の長崎県内への拡大を除き、従前の実施要綱に基づいて医療給付を行なうべきであることを強く要求する。見解を求めたい。
七 被爆体験者支援事業においては、「放射線被害の影響を否定」し、原爆を直接体験した住民にとって、最も深刻な疾患である「癌」を医療費給付対象から、除外していることは、被爆の実相を無視したものである。見解を求めたい。
八 二〇〇一年八月一日長崎の被爆地域問題の検討会最終報告書の取りまとめに際し、長崎大学の中根教授や放射線影響研究所の長滝前理事長は「本検討会では、放射線被爆線量については調査研究していないので、この問題(放射線による影響はない)を書く必要があるのか」との疑問を投げかけている。
 この機会に、一九九一年六月に長崎県及び長崎市が提出した「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告書」、さらに二〇〇〇年に長崎市が提出した「原子爆弾被爆未指定地域証言調査報告書」について、再度、精査し「被爆体験者」に対して、被爆者援護法を全面的に適用すべきではないのか。
九 政府は、被爆者を再びつくらないという固い決意を示すうえで、被爆者援護法に国家補償を明記することが、被爆者団体から強く求められている。被爆六十年のこの節目に国家補償を明記した被爆者援護法を制定し、世界唯一の被爆国にふさわしい被爆者援護策と核兵器廃絶のために力を尽くすべきと考える。見解を求めたい。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.