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平成十七年七月二十七日提出
質問第一〇九号

諫早湾干拓事業に関する再質問主意書

提出者  松野信夫




諫早湾干拓事業に関する再質問主意書


 農水省が行っている国営諫早湾土地改良事業(諫早湾干拓事業という)については、平成十七年五月三十日に質問主意書を提出したところ、同年六月七日に答弁書(第一回答弁という)を得た。しかし第一回答弁は極めて抽象的であり不十分である。そこでさらに質問する。

一 本件については、平成十六年八月二十六日、佐賀地方裁判所で工事差し止めの仮処分命令が出され、その後平成十七年一月十二日の保全異議決定でも右仮処分命令が維持されたが、同年五月十六日、福岡高等裁判所はこれを取り消す決定を出した。その後最高裁判所宛に抗告許可申立がなされ、福岡高等裁判所は同年六月二十七日付けでこれを許可する決定を下した。従って今後は最高裁判所の判断を待つことになるが、今秋にもその判断が下されるのではないかと予測されている。
 第一回答弁では「国営諫早湾土地改良事業(以下「本事業」という。)と有明海の環境変化の関係を明らかにするため、これまでにも短期開門調査を含む開門総合調査等の様々な調査を行ってきたところであり、(中略)これらの調査を通じ、今後とも有明海の漁業環境の変化の原因究明に努めてまいりたい。」ということであるが、中途半端という他はない。本当に漁業環境の変化の原因究明に努めるのであれば、工事を中止したうえで徹底した原因究明をつくすべきではないか。
 農水省は、以前にも国営川辺川総合土地改良事業で、多くの農民や識者の要請にもかかわらず工事を強行し、結果的には福岡高等裁判所において違法との判断を受け、農水大臣は上告を断念し工事を中断せざるを得ない事態まで招いている。この点の反省を踏まえ二度と違法な工事を強行したと糾弾されないようにするためにも、慎重のうえにも慎重な姿勢が必要であり、せめて最高裁の判断が示されるまで現地における干拓事業工事を控えるべきではないかと考えるがどうか。
二 第一回答弁では「本事業に係る中・長期開門調査については、調査を実施することにより漁業環境に影響を及ぼす可能性がある一方、調査によって得られる成果は必ずしも明らかではないことから、実施しないこととしている。」とあるが、調査を実施することにより漁業環境に対してどのような影響があると考えているのか具体的に明らかにされたい。そして「漁業環境に影響を及ぼす可能性がある」とする点及び「調査によって得られる成果は必ずしも明らかではない」という点のそれぞれの根拠を明らかにされたい。
 また福岡県、佐賀県、熊本県の三県及び三県の漁連がそろって中・長期開門調査を要請しているわけであり、もしかすれば漁業環境に影響を及ぼすことになるかもしれないという三県の重要な関係者が、それを踏まえたうえでも要望していることをどのように評価しているか。
三 政府は、調整池の水質については、一方では問題にするほどの水質悪化には至っていないとか、外海に与える負荷も重大なものではないと言いつつ、他方では中・長期開門調査については、調査を実施することにより漁業環境に影響を及ぼす可能性があるとしているのではないか。そうだとすれば、これは矛盾ではないか。
 調整池の水質がさほど悪化していないのであれば、中・長期開門をする障害にはならないと考えるがどうか。
四 第一回答弁では「環境省は、本事業に関し、公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)に基づく調整池の水質保全や鳥類の生息環境の保全等に関する意見など、環境保全の見地から意見を述べてきたところであり、現在進められている有明海の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興を図るための総合的な調査等を踏まえ、今後とも必要に応じ環境の保全上の観点から助言を行ってまいりたい。」とある。
 このなかで「調整池の水質保全」は極めて重要である。
 そこで調整池の水質保全に関して、いつどのような水質改善の目標値を定めているか。その目標値はこれまで達成したことがないと聞いているがその通りか。達成していないのであれば、いつまでに、どのような方策を講じることによって達成するつもりか。
 また調整池の水質が改善目標値にまで至っていない原因をどのように考えているか。要するに諫早湾干拓事業によって潮受堤防を閉鎖したことが主たる原因ではないか。
五 環境省は、「今後とも必要に応じ環境の保全上の観点から助言を行ってまいりたい。」とあるが、調整池の水質目標値不達成をどのように評価しているか。また水質改善のためどのような助言を実施するのか。助言だけでは不十分な場合にはさらに強力な手段を講じる考えがあるか。
 環境影響評価法では、あくまで事業の実施に当たってあらかじめ環境影響評価を行うことで環境の保全を図ろうとするものであるが、当初に評価をするだけでその後、事業の実施状況に合わせた評価の検証もしないままでは不十分である。事業の途中段階でも一定の意見表明や評価が可能にする方向での法改正が必要ではないかと考えるがどうか。
六 第一回答弁では「本事業では、地盤改良材として、生石灰及びセメント系固化材(セメント系固化材にセメントを混合したものを含む。)を使用している。本事業で使用した地盤改良材の最近十年間の使用量及び地盤改良材に占める生石灰の割合については、これらを集計したデータが存在しないため、お答えすることは困難である。」とあるが、全く把握していないか。
 必ずしも詳細なデータでなくとも把握している単位や範囲での回答を求める。推計が可能であればそれを求める。例えば随意契約に付された前面堤防工事などでは施工場所ごとに把握しているのではないか。
七 第一回答弁では「有明海で発生した粘質状浮遊物については、独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所、福岡県水産海洋技術センター、佐賀県有明水産振興センター、長崎県総合水産試験場及び熊本県水産研究センターが調査を行い、平成十五年七月二十二日に、『粘質状浮遊物は、介類や底生生物の生殖活動等に伴って海水中に放出された粘質物が、変質しながら海底上や海水中を浮遊する間に、底泥や動・植物プランクトン等が付着したものと考えられた』という取りまとめを行ったところであるが、粘質物を放出した種や発生原因の特定には至らなかったことから、引き続き調査研究を行っているところである。」とあるが、そもそも前記五機関は同年五月二十六日付けで「有明海の特異事象発生に関する国・県等試験研究機関情報交換会」を発足して調査研究を開始したものではないか。
 第一回答弁では、発足直後の同年七月二十二日に一定のとりまとめを行ったというが、すでに発足後二年が経過している。二年の間にさほど成果を見ているようにも思えないが、前記五機関は、その後の調査研究を現実にどの程度実施して、どの程度の進展をみているか。前記とりまとめ以上の成果は上がっていないのか、明らかにされたい。

 右質問する。



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