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平成十八年十一月八日提出
質問第一四三号

看護師の確保対策等に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




看護師の確保対策等に関する質問主意書


 医療現場においては、医療技術の進歩、患者の高齢化、重症化、平均在院日数の短縮化等に伴う、看護師業務の複雑多様化、業務密度の高度化による業務内容の変化と業務量の激増によって、健康破壊やバーンアウトが後を絶たない状況にある。
 沖縄県のA総合病院では、入院患者の高齢化、重症化の他、全体的にケアに手がかかる患者が急増しており、それに見合う看護が必要になっているものの、看護師不足のために体制がとれず、看護師は、過重な勤務を余儀なくされ患者への影響も出ているとのことである。
 例えば、脳外科をはじめとする外科を中心とした急性期病棟に看護師の手がとられて、ケアが必要な一般の患者への対応ができない状況にある。
 夜勤の場合は、各病棟三人体制であり、目を離せない重症患者や認知症等の看護のために緊張の連続であるという。
 集中治療室(ICU)では、現在、最低三名の看護師が不足し、夜勤が月に一三回から一六回という異常な状態が続いているとのことである。
 看護師は、この仕事に使命感とやりがいを抱いてきたのにもかかわらず、毎日の過酷な業務で意欲や向上心が希薄になっていくと訴えている。
 また、常時、産休は二〇人から三〇人、五人に三人は産休をとっているという病棟もあるが、代替看護師が確保できないとか、あるいは育児休業を取って職場に復帰する場合、業務があまりにも忙しいためにリハビリ・研修を行う余裕がなく、適切な看護・対応ができないと悲痛な声で訴えている。
 日本医療労働組合連合会が実施した調査では、夜勤、交替制勤務でありながら、毎日長時間の時間外労働を強いられており、慢性疲労の七七・六パーセントを含め、何らかの疲れを感じるとの回答が九七・九パーセントにも達する。また、七三・一パーセントの看護職員が辞めたいと答えている。
 二〇〇四年度の日本看護協会の調査によると、一年以内の新卒看護師の離職率は全国平均で九・三パーセントである。
 また、東京医療関連労働組合協議会が、約五千人の看護師に行った調査では、新人の看護師が病院で先輩が付き添って受ける夜勤の研修回数は二・一回、準夜勤が二・二回で、六割の看護師が「三回以上は必要」と答え、自立後の不安では「ミスを起こすのではないか」との回答が七八パーセントを占め、「三月以内に辞めたい」と思った看護師は二六パーセントとなっている模様である。
 このような看護師の勤務状況では、医療安全の確保や患者への十分な看護が行えないものであり、看護師確保は喫緊の課題である。
 従って、以下の事項について質問する。

一 看護師の勤務実態に対する認識について
 1 看護師の勤務実態について、どのような業務に多くの時間を費やしているのか、また、過重な負担がかかっているのか等を把握することが必要と考えるが、政府は看護師の勤務実態についてどのような項目の調査を行っているのか、また、調査結果についての政府の見解を問う。
 2 前文で指摘した各団体による調査結果等についての政府の見解を問う。
二 第六次看護職員需給見通しについて
 1 第六次看護職員需給見通しについては、年次有給休暇の取得日数の算定が策定方針通りでない医療機関や都道府県があったことや医療制度改革の影響を考慮していないことなどから実態を捉えていないものと考えられる。医療安全確保や必要な在宅医療を提供するためには、再度、実態調査を行い必要な看護師数を算定し対策を講じるべきであると考えるが、政府の見解を問う。
 2 今回の医療制度改革における個別の施策及び診療報酬改定が需給見通しに与える影響(需給の増減)について明らかにされたい。
三 平成十八年度診療報酬改定について
 1 政府は、医療費抑制策の一環として、平成十八年度四月からの診療報酬を全体で、三・一六パーセント引き下げる改定を行った。更に今回の改定では、平均在院日数の短縮、医療の安全確保、看護職員の労働条件の改善等の理由で、急性期病棟における入院基本料の見直しを行い、入院基本料の算定に当たっては、看護師一人当たりの月平均夜間勤務時間を七二時間以下とすることが前提とされ、看護師の配置が一定以上であれば、より高い入院基本料を算定できることとなった。このため、看護師の配置が十分に行えない医療機関においては診療報酬が減少となることから、看護師確保のために医療機関で競合する状況となった。そもそも看護師が不足している状況に加え、今回の改定がこうした事態を招いたとの指摘があるが、政府の見解を問う。
 2 看護師不足が深刻化する中で、大学病院をはじめとした大病院は、全国各地で看護学校や看護大学の新卒予定者の大量募集活動を繰り広げる一方で、地域医療を担ってきた地方の中小病院は、看護師が確保できず経営悪化や廃院に追い込まれかねない危機に直面している。このことに対する政府の認識と今後の対応策についての見解を問う。
四 今後の看護師確保の対策について
 1 厚生労働省は看護師不足対策として、全国に五五万人いるとされる潜在看護師(六五歳以下で看護師免許を持ちながら従事していない者)に対する臨床実務研修等を実施し、就労促進を図るとしている。そこで、この五五万人の推計の根拠、年齢構成毎の免許保持者数、就業歴及び再就業者数を把握しているものと考えるが、明らかにされたい。
 2 第六次看護職員需給見通しに関する検討会報告書では、潜在看護師五五万人のうち、再就業者数は、平成十八年には約八万五千人から平成二十二年には約九万八千人と約一万三千人増加すると推計している。厚生労働省は、その推計した目標を達成するためにどのような対策を講じるのか。
 3 日本看護協会の調査では、新人看護師の半数以上が就職二ヶ月以内に夜勤を開始しており、医療内容が高度化、専門化する中で、基礎教育終了時点の能力と看護現場で求める能力のギャップも多く、一年以内に離職する新人看護師の割合も九・三パーセントとなっている。このような状況を解消し、安心して永く働き続けるためには看護師の卒後研修制度の制度化が必要と考えるが、政府の見解を問う。
 4 また、「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」報告書でも卒業直後に行われる研修制度の制度化の必要性について指摘されているが、その検討状況を問う。
 5 第六次看護職員需給見通しに基づく供給数を確保するためには、再就職支援等の対策に加え、各医療機関における離職防止対策、労働環境の改善、及び地域医療を支える中小病院に看護師を配置させる取組みなど、総合的な看護師確保対策が必要と考えるが、政府の見解を問う。

 右質問する。



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