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平成十九年二月九日提出質問第五六号
在瀋陽日本国総領事の満州国認識等に関する質問主意書
提出者 鈴木宗男
在瀋陽日本国総領事の満州国認識等に関する質問主意書
一 外務省公式ホームページに、「総領事館ほっとライン 第四十回 瀋陽 中国随一の日本語学習熱で交流が急激に拡大」と題し、阿部孝哉在瀋陽日本国総領事(以下、「阿部総領事」という。)による
「日本に対する高い関心
在瀋陽日本国総領事館は、東北三省(遼寧省、吉林省及び黒竜江省)を管轄していますが、当館の所在する瀋陽市が満州事変の勃発した奉天の現在の名称であるといえば、皆様にも見当が付くのではないかと思います。
東北三省の面積は日本の二倍強、人口は日本とほぼ同じ規模であり、遼寧省の省都である瀋陽市は北京、大連、長春、ハルビンなどの諸都市を結ぶ鉄道と高速道路網の中心にあるほか、朝鮮半島とロシア、モンゴルを結ぶ鉄道の中間地点に位置する交通の要衝です。
東北三省は、旧満州国時代から中国における重化学工業基地として中国経済を支えてきましたが、『東北振興政策』の下での近年の経済成長は目覚ましく、わが国との交流が急激に拡大しつつあります。
日本人にとって日露戦争の戦場となった旅順や奉天はかなり知られた存在ですが、長春、ハルビンといった内陸部はかつて旧満州と縁のあった人を除いては一般の日本人にはなじみが薄いようです。当館ではホームページを通じて東北三省の様々な情報発信に努めておりますので、ぜひご利用下さい。
一方、東北地方の人々の日本に対する関心は極めて高く、日本語学習熱は中国随一であり、在日中国人留学生の約六割が東北三省出身者で占められています。近年の経済水準の向上に伴う海外旅行ブームにより日本への観光客も増えつつあり、現在の週三便の瀋陽成田間フライトも遠からず毎日の運航になるものと期待しています。
満州族の清朝発祥の地である瀋陽には瀋陽故宮などの世界文化遺産があり、二〇〇六年の瀋陽世界園芸博覧会(花博)には内外から千二百万人もの入場がありました。日中国交正常化三十五周年に当たる〇七年は日中文化・スポーツ交流年に指定されており、東北地方を訪問する日本人もますます増えるものと予想されます。満州事変に始まる旧満州国統治という歴史的背景から当地に反日感情の土壌があるのは事実ですが、親日的な情緒も混在しており、我々在留邦人が日常生活で不愉快な目に遭うことはほとんどありません。
中国人女性との結婚トラブル
さて、当地は日本と歴史的にかかわりがある土地柄のせいか、中国人女性と結婚する日本人男性が多く、結婚をめぐるトラブルが少なくありません。
中国人女性と付き合っていた某日本人男性は、『女性のために高価な衣類や時計などをプレゼントしてきたが、いざ結婚の段になって相手と連絡が取れなくなった。相手の実家の電話番号は分かっているが、自分は中国語ができないので何とか連絡をとってほしい』と言って当館の窓口に来られました。この時は当館から相手方に連絡をとり、当事者間でよく話し合ってもらうようお願いしました。
このように、1)付き合っている中国人女性に高価なプレゼントをし、いざ結婚となった時に連絡が取れなくなる 2)結婚話がこじれ、当地滞在中に相手の女性に所持金や旅券を持ち逃げされてしまう 3)結婚後、相手の女性が日本入国査証(ビザ)を取得した後に行方をくらましてしまう 4)父親が中国人女性と結婚後に死亡し、遺族と中国人女性との間で相続トラブルが発生する――など、中国人女性との結婚をめぐる様々なトラブルについて相談を受けます。
このような相談を受けた場合には、通訳や弁護士を紹介したり公安局(警察)への届け出について案内したりしていますが、個人間のトラブルについては総領事館としてできることに限界もあります。国際結婚であることをよく認識し、相手方と日頃から十分意思の疎通を図っていただく必要があります。
中国式宴会での乾杯にご注意
中国の中でも特に東北地方では、『白酒(バイヂュウ)』というアルコール度が三十度から五十度以上のコーリャンなどを原料とした蒸留酒を愛飲しますが、この飲み過ぎに関連する邦人の死亡事件もあります。中国式宴会では、この『白酒』を小さなグラスで何度も『乾杯』(文字通り飲み干す)しますが、つい飲み過ぎて酔っぱらってしまいます。その酔いが原因と思われる高所からの転落事故や嘔吐物をのどに詰まらせての死亡事故が起きています。特に、出張者の方は、接待で宴会に招かれたり招いたりした場合、つい中国の文化に合わせて無理にお酒を飲んでしまいがちですが、体調と相談し無理のない飲み方をする必要があります。
高齢者の旅行はゆったりとした日程で
かつて旧満州に住んでいた方が昔を懐かしんで旅行に来られますが、六十歳以上の高齢者が多く、旅行中に体調を崩されて当館に相談に来られることがあります。特に高齢者の方には、ゆったりとした日程で旅行を楽しんでいただければと思います。また、当地での医療は高価であるため、海外旅行傷害保険への加入をお勧めします。
ワンポイント・アドバイス
貴重品を持ち歩かないこと。やむを得ず持ち歩く際には、分散させること。当地との歴史的経緯を踏まえ、日本人であるということを必要以上に誇示しないこと。単独行動はなるべく避けること。また、夜間や裏通りの通行には用心すること。」
との論考(以下、「論考」という。)を掲載しているが、「論考」はどのような経緯と手続きを経て掲載されたか。
二 「論考」の内容は外務省の公式の立場を表明したものか。
三 「論考」を決裁した外務省の責任者の官職氏名を明らかにされたい。
四 「論考」では、「東北三省は、旧満州国時代から中国における重化学工業基地として中国経済を支えてきました」との認識が示されているが、ここでいう旧満州国の定義如何。
五 「論考」では、「当地は日本と歴史的にかかわりがある土地柄のせいか、中国人女性と結婚する日本人男性が多く、結婚をめぐるトラブルが少なくありません」との認識が表明されているが、当地とは在瀋陽日本国総領事館の管轄地域を意味するものか。
六 「日本と歴史的にかかわりがある土地柄」故に「中国人女性と結婚する日本人男性が多」いと「阿部総領事」が判断する具体的根拠を明らかにされたい。
七 「当地との歴史的経緯を踏まえ、日本人であるということを必要以上に誇示しないこと」のアドバイスがなされているが、「当地との歴史的経緯」とは具体的に何を意味するのか。
八 七における「日本人であるということを必要以上に誇示しないこと」とは具体的に何を意味するか。
九 「論考」は中国で在勤する外務省職員の認識として日本の国益に適うものと外務省は考えるか。
右質問する。