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平成十九年三月二十三日提出
質問第一四〇号

江戸川区北小岩地域のスーパー堤防計画の見直しに関する質問主意書

提出者  笠井 亮




江戸川区北小岩地域のスーパー堤防計画の見直しに関する質問主意書


 東京都江戸川区北小岩地域では江戸川のスーパー堤防(高規格堤防)化と地域一帯の区画整理の計画に対し、住民の強い反対運動がおきている。
 計画は、江戸川右岸を約二・二キロメートルにわたって二百五十から三百メートルの幅で盛土し整備するというもので、対象面積は約四十八ヘクタールに及ぶ広大なものである。地域には約千八百棟の建物があり、人口は五千人から六千人にのぼっている。事業による地域住民への影響はきわめて大きく、深刻であることが予測される。
 この間、地域の四つの町会・自治会すべてと、二つの寺院、それに住民団体「スーパー堤防・街づくりを考える会」(戸口素男運営委員長、永田純久事務局長)の七団体それぞれが、計画の撤回を求める運動に取り組み、「スーパー堤防・街づくりを考える会」の集計によると計画撤回を求める署名はすでに一万四千五百筆を超えている。
 昨年十二月に私は、日本共産党江戸川区議会議員・藤沢久美子、ならびに同東京都議会議員・河野ゆりえ事務所、同東京都委員会役員・田村智子事務所とともに現地を視察し、「スーパー堤防・街づくりを考える会」や地域住民の方々と懇談を行った。その場でも住民から「なぜこの地域でスーパー堤防が必要か十分な説明がない。他の策も考えられるはずである」「地域には高齢者も多く一旦立ち退いたら戻ってはこられない」「お墓を掘りおこしてまですすめるとは」など国や江戸川区への強い批判や疑問の声が相次いで出された。
 地域と周辺には約二十の幼稚園、保育園、小学校、中学校があり、事業や工事への懸念や不安の声も寄せられている。地域にある正真寺、真光院などの寺院は開山以来四百年以上の歴史をもち、一五六四年の江戸川を挟んだ里見軍と北条軍のたたかいの時代にもゆかりの寺院とのことである。
 従来政府はスーパー堤防整備事業の推進にあたっては、住民の意向を尊重する立場をくり返し明らかにしてきた。これは一九九一年に同事業にかかわり河川法改正案が審議された際の衆参両院での答弁でも明確である。こうした立場に立つならば、北小岩地域で現在進められている計画は中止し見直すべきである。
 同時にスーパー堤防事業そのものも、大きな矛盾に直面しており、この際、抜本的な見直しの検討に着手すべきである。
 こうした立場から、以下質問する。

一 北小岩地域は、一九六九年(昭和四十四年)に江戸川区が区内六割を超す地域を区画整理事業の施行地域とした際に該当地域にされず、一九九九年二月に同区が策定した「江戸川区街づくり基本プラン(都市マスタープラン)」では、「千葉街道以北の柴又街道、江戸川に囲まれた小岩地区の北東部は幅員五m以上の道路による整形な街区構成の住宅地であり、敷地細分化を防止し、緑豊かで閑静な住環境を将来にわたって保全する必要がある」とされてきた地域である。
 他方同地域は、江戸川でのスーパー堤防整備の指針となる「江戸川沿川整備基本構想」が二〇〇一年に、国土交通省関東地方整備局と、東京都、江戸川区など関係地方自治体で構成する「江戸川沿川整備基本構想策定委員会」によって策定された際、「概ね二十年間に高規格堤防と市街地などの整備を推進する地区等を沿川地域の整備構想を踏まえ、治水対策の緊急性、整備の必要性、市街地整備事業の熟度、進捗状況等を勘案し、次のように区分する」として定められた、「整備を推進する地区」「整備の計画づくりを進める地区」「調査・検討を進める地区」のいずれにも位置づけられなかった。
 つまり、江戸川区によって「整形な街区構成の住宅地であり」「将来にわたって保全する必要がある」とされ、国も含めスーパー堤防整備の緊急性、必要性等を検討した際にも「調査・検討を進める地区」にすら位置づけられてこなかったのが同地域である。
 こうした北小岩地域で、スーパー堤防整備と区画整理について現在すすめられている計画は、そもそも国と江戸川区のどちらから先に持ち出したものか。また、この問題で両者が最初に折衝・接触をもったのはいつか。
二 計画の撤回を求める運動は、小岩田自治会、江戸川町会、六東自治会、三谷町会の四町会・自治会、正真寺、真光院の二寺院、住民団体「スーパー堤防・街づくりを考える会」の計七団体によって取り組まれ、集められた署名は一万四千五百筆を超えている。すでにその一部が江戸川区議会に提出されている。小岩田自治会の調査では、建設に反対する世帯は九十四%を超えている。
 こうした状況を国として承知しているか。また同地域での住民の意向をどう認識しているか。
三 従来政府はスーパー堤防整備事業の推進にあたって、「当然のことながら住民の方々の御意向を尊重しながら」(一九九一年四月十二日、衆議院建設委員会での日本共産党・辻第一議員の質問に対する大塚雄司建設大臣の答弁)、「住民の意思を無視して強引にこの事業を進めるということは毛頭考えていない」(一九九一年四月二十三日、参議院建設委員会での日本共産党・上田耕一郎議員の質問に対する近藤徹建設省(当時)河川局長の答弁)と国会で答弁してきた。
 現内閣としても住民の意向を尊重するという従来の立場に変わりはないか。
四 住民の意向を尊重するという立場に立つなら、北小岩地域ですすめられているスーパー堤防化計画は中止し見直すべきではないか。
五 スーパー堤防整備事業は一九八七年に開始され、首都圏近畿圏の五水系六河川を対象に実施されてきた。国は当初二十一世紀初頭までに整備するとしていたが、事業開始以来二十年が経過した現在の整備状況は、計画の総延長距離約八百七十キロメートルに対し、整備中の地区も含め約四十七キロメートルにすぎず、進ちょく率はわずか五・四%である。現状は整備地が点在するだけで、国が目的とした治水効果も期待できる状況ではない。国は事業完成年度や事業費の見通しを明らかにしていないが、これまでの事業をもとにした単純計算でも完成までに十二兆円近い莫大な事業費が必要である。
 他方、治水対策に関しては、一般の河川改修事業や都市型水害対策なども急がれており、今後、維持・管理に要する費用も増加することが予測される。
 地域住民に大きな犠牲を強い、財政難の中で莫大な国費を投ずる事業を十分な評価・再検討もないままいたずらに続けることは許されない。
 この際、スーパー堤防事業は抜本的に見直し、必要な堤防の強化と多様で総合的な治水対策への転換や、治水各対策の計画的な進め方等について検討すべきではないか。

 右質問する。



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