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平成十九年三月二十三日提出
質問第一四一号

障害児学校の教室不足を緊急に解消することに関する質問主意書

提出者  笠井 亮




障害児学校の教室不足を緊急に解消することに関する質問主意書


 障害児学校の教室不足は今日、きわめて深刻な状況になっている。
 たとえば東京都では、東京都障害児学校教職員組合(都障教組)の調査によると、二〇〇五年度の不足数は六〇二教室にのぼり、本来必要な教室数一七九八の三分の一を超えている。
 昨年私は、日本共産党東京都議会議員団、ならびに同東京都委員会役員・田村智子氏とともに、東京都立中野養護学校を視察した。同校では二〇〇二年度にはすでに教室不足に悩まされていたが、二〇〇六年度までの五年間で、児童生徒数が二百八人から二百九十四人へと四割以上増加し、普通教室の不足に対応するため、特別教室を転用したり、教室をカーテンで間仕切りして使用するという事態が恒常化している。カーテンで間仕切りした教室では、子どもたちの声や教師の声が交錯して授業に重大な支障が生じ、特別教室をこれ以上転用することはもはや困難との状況であった。
 事態が年々悪化する中で、一刻も早い改善を求める児童生徒、保護者、学校関係者などの要望はきわめて切実である。教育条件としてあまりに基本的で当然な、「教室の確保」という問題について、くり返し要望せざるをえない関係者の苦悩の深さは推測するにあまりあるものがある。
 盲・ろう・養護学校に在籍する児童生徒数はこの間全国的に急増し、文部科学省の資料によると二〇〇一年の九万二千七十二人から、二〇〇五年の十万千六百十二人へと、五年間で九千五百四十人、一割以上増加している。児童生徒の急増に対し、施設の整備がきわめて遅れた状況が全国で生じており、教育条件の整備を怠ってきた責任は重大である。
 こうした事態は国民の学ぶ権利を著しく侵害するものであり、国として早急に対策を講ずるべきである。
 こうした立場から、国会法第七十四条に基づき、以下の通り質問する。

一 文部科学省は学校についてかねてより、「学校基本調査」や「公立学校施設実態調査」などの調査を行ってきた。個別の問題についても、たとえば学校施設の耐震化については、「公立学校施設の耐震改修状況調査」を行い、この調査は都道府県・区市町村ごとに結果を公表している。
 障害児学校の教室不足の実態についてはこの間どのような調査を行ってきたか。
 1 調査を行ってきたとすれば、全国と都道府県ごとの教室不足数を明らかにされたい。また特別教室を転用している数はどれだけか、教室を間仕切りして使用している数はどれだけか、それぞれ明らかにされたい。さらに普通教室の不足に関する今後の見通しについて推計はあるか。あるとすればそれを明らかにされたい。
 2 調査を行っていないとすればその理由を明らかにされたい。
二 二〇〇四年四月五日の参議院決算委員会で当時の河村建夫文部科学大臣は、日本共産党・小林みえこ議員の教室不足問題についての質問に対し、「今御指摘のような点は非常に問題でありますから、これからの教育環境の整備、特に障害のある児童生徒の受入れ、これは支障があってはなりませんので、今の状況、私も初めて聞いた、申し訳ないと思いますが、是非、この状況については、どういう点が今問題になっているのか、その地域性があるのか、そういう過大な状況になっている、そういうような問題については把握させていただいて、今御指摘のような点が、障害児の教育上問題点を解消するように努力していかなきゃいかぬと、このように考えます」と答弁している。
 この答弁にもとづき、どういう調査を行い、どう問題を把握し、どう対策を講じたか。
三 憲法第二十六条は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と謳っている。教室不足のもとで障害児が置かれた現状はこの条項に明らかに反していると思うがどうか。
 また、一九七五年に国連総会で決議された「障害者の権利宣言」は「障害者は、その人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有している。障害者は、その障害の原因、特質及び程度にかかわらず、同年齢の市民と同等の基本的権利を有する。このことは、まず第一に、可能な限り通常のかつ十分満たされた相当の生活を送ることができる権利を意味する」としている。こうした規定にも明らかに反した事態だと思うがどうか。
四 国連子どもの権利委員会は二〇〇四年の日本政府への勧告で、障害をもつ子どもに対する差別の是正を求め、「障害を持つ子どものための特別な教育およびサービスに割当てられる人的および財政的資源を増加させること」としている。
 政府はこの勧告をうけ、教室不足問題ではどのような措置を講じたか。

 1 一九九六年に文部科学省が策定した「盲学校、聾学校及び養護学校施設整備指針」は「第1章 総則」の「第1 特殊教育諸学校施設整備における基本的方針」の「3 快適、健康、安全な学習・生活環境の整備」で、「児童生徒等の学習及び生活の場として、特に障害のある児童生徒等の特性に配慮しながらその健康と安全を十分に確保し、快適な空間とするとともに、児童生徒等相互間及び教員等との交流の場、憩いの場の設定や緑化を始めとする屋内外への自然環境の導入などを通じて、ゆとりある豊かな施設・環境を確保すること。」としている。
  また「第1章」の「第2 特殊教育諸学校施設整備における基本的留意事項」の「2 施設機能の設定」の中では、「児童生徒等一人一人の障害等の状態及び特性やそれに応じ必要となる環境条件等を的確に把握し、分析して、児童生徒等の快適かつ円滑な学習・生活のために必要な施設機能を設定すること。」としている。
  さらに、「第2章」の「第3節 第2」の「4 特別教室・教科教室」では「各部、各教科での利用、養護・訓練や日常生活訓練での利用、複数の部での共同利用等を考慮し、必要な種類、規模等の空間を確保すること。」としている。
  障害児学校での普通教室の不足や特別教室を転用せざるをえない事態は「整備指針」のこれらの規定から明らかに逸脱した状況と思われるがどうか。
 2 また、「整備指針」の「第1章 第2」の「1 総合的な計画」の「(3)児童生徒等数の動向等に応じた学校規模の適切な設定」では、「学齢人口や障害のある児童生徒等の数の推移、障害の動向、地域内の小学校及び中学校の特殊学級への通学や特殊学級から特殊教育諸学校高等部への進学の状況、特殊教育諸学校の整備計画等から、現状及び将来の学校規模を把握し、検討して、計画を行うこと。」としている。
  「整備指針」を策定した国としても、障害児学校の教室不足について現状と将来の見通しについて確たる認識をもって対処すべきと思うがどうか。
六 文部科学省が昨年四月に策定した「公立の義務教育諸学校等施設の整備に関する施設整備基本方針」は、「二 公立の義務教育諸学校等施設の整備の目標に関する事項」の「3 教育環境の質的な向上を図る整備」で、「社会的、自然的要因による児童生徒数の増加等に伴い教室等が不足したり、公立の小学校及び中学校を適正な規模にするために統合する場合等には、新増築整備により、教育の機会均等を保障し、その水準の安定的確保を図る必要がある。」などとしている。
 この目標を達成するために、障害児学校の教室不足問題について、学校設置者である地方公共団体に整備を求めるだけでなく、国としても必要な措置を講ずるべきと思うがどうか。
七 障害児学校等の施設整備について国は、従来、都道府県教育委員会等設置者が整備を計画し、その要望に沿う形で必要な補助を行うなどとしてきた。教室不足についての今日の事態はきわめて深刻である。地方公共団体まかせにするのではなく、国として緊急に実態調査を行い、計画を策定し、必要な予算を確保して整備をすすめるなど、積極的な策を講ずるべきと思うがどうか。

 右質問する。



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