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平成十九年六月一日提出
質問第三一三号

民法第七百七十二条に係るいわゆる無戸籍児に関する質問主意書

提出者  市村浩一郎




民法第七百七十二条に係るいわゆる無戸籍児に関する質問主意書


 近年、社会情勢の変化等により離婚が年々逓増している。多くの場合、夫婦は離婚するまでに悩み、苦しみ、時には憎しみさえ抱きながらそうした結論に到るであろうことが思慮される。その中には婚姻期間中であっても長い間夫婦としての実態は存在しない事実上の離婚状態にあり、その間に新たな伴侶が見つかり新たな生活に踏み出すこと、そして女性であればその伴侶の子を懐胎することは当然起こりうることである。
 この場合、懐胎と法的離婚の成立の時期により、民法第七百七十二条第二項の「婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」の嫡出推定が及び、生まれた子が新たな夫の子であることが明らかな場合でも、法的には「前夫の子」となってしまうこともありうる。
 現行制度では事実上、婚姻関係が破綻している間に懐胎した子については、親子関係不存在確認の調停・裁判などを経て嫡出推定が及ばないこととする仕組みになっているが、離婚に至る経緯から「前夫の子」と扱われるのに傷つき、事実とは違う父親の名で出生届を出すことができず、また実際の父親の名前を届け出るが出生届を受け付けてもらえないため、いわゆる「無戸籍児」という状態が発生している。
 そこで以下の通り質問する。

一 わが国では夫が婚姻を継続した上で、別の女性との間にできた子は認知制度により非嫡出子として戸籍に登録することを認めている。いわゆる無戸籍児の場合、その多くは結果として前夫と離婚し、事実上の父である後夫と再婚しているにも関わらず後夫の戸籍に登録することが認められないという状況におかれてしまう。この違いの合理的理由は何か。また嫡出推定が後夫の子であるという事実より優先する理由は何か。
二 今般、法務省民事局長通達により離婚後三百日以内に出生した場合であっても、医師の証明により離婚後に懐胎したことが明らかな事案については前夫の子と推定しないという取扱いをすることとなった。このこと自体は一歩前進と評価するが、この場合では救済される無戸籍児は全体の一割程度にすぎない。局長通達で離婚後に懐胎したケースに限定した理由は何か。
三 昭和四十四年の最高裁判例で民法第七百七十二条の調停や裁判についての「根拠」は「事実上の離婚の日」を基準としている。嫡出推定では法的離婚の日とする理由、妥当性は何か。また既に司法の場で基準とされている「事実上の離婚の日」との整合性をどう考えるか。関連して法務大臣の不貞に関する発言について、調停離婚などの場合、婚姻期間中であっても夫婦の実態が失われた後に(事実上の離婚)、他の異性と交際を始めてもそれは「不貞」とはされない。「不貞」「不貞の子」の範囲はどういうものとお考えか。
四 夫婦の離婚の合意により離婚が成立したと考えていたものが、前夫が提出を遅らせたために自分が思っていた日より法的離婚の日がずっと後であった場合がある。また調停離婚の場合、家庭裁判所が抱える案件数によって調停が速やかに行われない場合も実際に起こっている。こうした点を考慮しても「事実上の離婚の日」が適切だと考えるが如何か。
五 嫡出推定は、子の福祉のために親子関係を早期に確定し、家庭の平和を尊重するために制定されているのではないか。それであれば事実上の父が後夫であることが明白であっても、前夫の子とすることが子の福祉に適うと考えるのか。
六 スイスでは「嫡出推定が重複する場合は後婚を優先する」と法律が改正されている。わが国においてもそうした立場に立つべきと考えるが如何か。
七 現在の民法においては、子の出生を知って嫡出否認ができるのは出生後一年間と定められている。前夫は自分の子と信じて養育費を払ってきたが、DNA鑑定の結果、前夫の子ではないことが判明した場合、嫡出否認の期間が過ぎていたため法的には今後、相続権が発生するなどの事例もある。無戸籍児の問題を逆手に取り、前夫の子と悪用すれば前夫の財産相続権や扶養を選びとれる余地を残している現状をどう考えるか。
八 無戸籍児の住民票を作らないのは違法だとして、子と事実上の両親が世田谷区に住民票作成を求めていた訴訟で、五月三十一日、東京地裁は原告の訴えを認め、世田谷区に住民票の作成を命じた。この判決をどう評価するか。また、全国の自治体にそうした対応をとるよう指導するつもりはあるか。
九 長勢法務大臣はご自身のホームページで「社会通念上やむを得ないケースにおいては離婚前でも救済を考えねばならない。」旨の発言をされている。やむを得ないケースとはどういうケースなのか、具体的にお示しいただきたい。また救済はいつ頃を目途にお考えかをお示しいただきたい。

 右質問する。



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