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平成十九年六月十二日提出
質問第三七八号

徳山ダムに係る木曽川連絡導水路事業の目的と効果に関する質問主意書

提出者  近藤昭一




徳山ダムに係る木曽川連絡導水路事業の目的と効果に関する質問主意書


 二〇〇七年三月二三日の衆議院環境委員会での質疑及びそれに対する政府参考人答弁を踏まえ、「徳山ダムに係る木曽川連絡導水路事業」は現段階において、どのような目的なのか、どのような効果が見込まれるのかに関し、以下質問する。
 「徳山ダムに係る木曽川連絡導水路事業」(以下「当事業」という)の現段階の構想では、目的は二つとされている。
 ・異常渇水時の緊急水補給による河川環境の改善等
 ・新規利水の補給
 しかし、現段階では利水補給(四m3/秒)を受けるべき利水者(愛知県・名古屋市)は、具体的にこの新規利水を利用する計画は立てていない。その中で強調されているのが、「異常渇水時の緊急水補給による河川環境の改善」であり、その対象となっている規模は一九九四年の既往最大規模渇水である。
 (「徳山ダムに係る導水路検討会」資料(以下「HP資料」という)によると一九九四年規模渇水時には徳山ダムの利水容量は枯渇するとなっているので、以下「一九九四年規模渇水時」という場合、「徳山ダムの利水枯渇後は緊急水(二〇m3/秒)のみ導水」の場合として質問する。また大勢が「上流案」であることから「上流案」を現段階の「計画案」として、質問する。)

一 当事業で得られる「異常渇水時の緊急水補給による河川環境の改善」は、今渡地点より下流となる。
 「木曽川水系河川整備基本方針」は、当年度の遅くない時期に策定される予定としている以上、「木曽川水系河川整備基本方針原案」は、事務方としてかなり固まってきているものと思料する。この「原案」で、現工事実施基本計画で正常流量が定められている今渡地点より下流地点(馬飼・鳴戸地点)での正常流量を定める予定があるか。
 もし定めないとすると、当事業の「異常渇水時の緊急水補給による河川環境の改善等」の法的根拠はどのように解すべきか。
二 「異常渇水時の緊急水補給による河川環境の改善」について
 (一) 一九九四年の渇水は「既往最大」であるが、その規模の渇水の発生確率をどの程度と計算しているか。その算出根拠も含めて明らかにされたい。
 (二) 一九九四年の渇水の際の木曽川での河川環境被害につき、どのような調査資料があるのか。
  このことにつき、長期にわたって説明を求めてきた市民団体に対し、国土交通省中部地方整備局の担当者は、二〇〇七年二月二六日段階で、資料の存在の有無も回答できなかった。
  前記市民団体役員が、同年四月六日(受付は同月九日)に行政文書開示請求を行ったところ、中部地方整備局長は以下の二つを五月七日に開示決定した。
  ・平成六年度渇水における河川環境調査の資料(国部整総情第三三号)
  ・H六年度渇水に関する河川環境の追跡調査(国部整総情第三四号)
  同月九日に開示請求者が閲覧した限りでは、一九九四年渇水時に木曽川中流部で、断続的な「瀬切れ」が見られたが、それが大きな環境被害であったと評価できるものとは思えなかったと語っている。そして「追跡調査」を見ると、ほとんどが回復しており、生態系に大改変があったとは評価できないとのことである。
  開示したものの他に、深刻な環境被害を窺わせる資料が存在するのか。
 (三) 一九九四年の渇水の際の木曽川での河川環境被害が、徳山ダムから緊急水二〇m3/秒を補給することで、どのような被害軽減効果があるのか。
  前記開示請求者は、同時に「一九九四年渇水時の木曽川(特に犬山頭首工より下流)の環境被害軽減対策の検討に係る資料」の開示請求を行ったが、五月七日付けで中部地方整備局長は、「該当する行政文書は不存在」と通知している(国部整総情第三二号)。
  @ 「異常渇水時に徳山ダムから緊急水補給(二〇m3/秒)することで河川環境被害を軽減する」というのは、科学的根拠を欠く稚拙な「イメージ」にすぎないのではないか。この程度の「イメージ」で当事業の検討がなされてきたと解してよいのか。
  A @のレベルで、これまで「調査費」を予算化してきたのは適切といえるか。
  昨年度及び今年度の「調査費」の使途の細目を明らかにし、「調査費」予算化の妥当性を説明されたい。
  B 三月二三日衆議院環境委員会における門松政府参考人答弁では「なお、異常渇水時におきます緊急水の補給によりまして、木曽川の環境にどのような効果があるか、定量的に把握すべく、今検討している最中でございます」となっているが、実際は、「木曽川の環境にどのような効果があるか、定量的に把握す」るための条件すら存在していないのではないか。
  定量的把握が可能であるというなら「文書不存在」という決定が誤りであり、実は別に検討資料が存在するということか。
  C これまで「不存在」だった資料が、「これから」(すでに一九九四年渇水から一三年経過している)作成され、被害軽減の根拠資料となるとすれば、非常に不可解である。理解しうる説明をされたい。
 (四) 前述を踏まえ、緊急水(二〇m3/秒)を導水した場合、一九九四年規模渇水における木曽川での河川環境被害の軽減効果の具体的な予測及び当事業の必要性・妥当性を根拠をもって示されたい。
三 二と関連し、費用便益について
 (一) 当初から便益の算出をせずに、身替わり建設費のみと比較しているようだが、その理由を、分かりやすく説明されたい。
 (二) 「これまで」のあり方は(一)の通りだとしても、公共事業に対して、国民の極めて厳しい見方(参照として国交省二〇〇七年三月二三日「社会資本整備のアカウンタビリティ(説明責任)向上行動指針」)がある現在、「得られる効果」を算出し、費用便益比(B/C)を提示するべきであると考えるがいかがか。
 (三) 一方、「異常渇水時の緊急水補給」効果については、徳山ダム(本体)建設事業のB/Cにおいて、すでに便益として計上しているものと考える(二〇〇四年五月二〇日「三県一市調整会議」資料「二次アロケ」−治水B渇水)。とすれば、もともと当事業には「便益(効果)」は存在しないのではないか。
 (四) 他の河川に比べて特段に「河川環境の改善」に費用をかけることになると考えるが、その合理的理由は何か。他の河川との比較も明らかにされたい。
四 当事業の環境影響評価について
 (一) 当事業は「全体として七五ヘクタールを超えない」ということで環境影響評価法(以下「環境アセス法」という)の適用外とされるのか。「環境改善」を目的とする事業で環境影響評価がなされない、ということ自体、法の趣旨を逸脱すると考えるがいかがか。
 (二) 具体の「環境影響」について
  @ トンネルを掘ることにより大量の掘削残土(ズリ)が出るが、これがもたらす環境への影響は多大である。実際に東海環状自動車道では、この残土による環境被害が発生し、その対策には時間も費用もかかっている。
  掘削残土が環境に与えた影響につき、これまでの事例を簡潔に示して欲しい。
  A 揖斐川から木曽川へと本来の河川ではありえない水の流れを作ることになるが、水棲生物(微生物を含む)等のありようも含めて、こうしたことの生態系への影響については、どのような知見があるのか、あるいはないのか。
  B 地下に大きな導水管が通ることにより、地下水脈に影響が出ることが考えられる。
  平成一九年一月九日には「都市高速道路外郭環状線(世田谷区宇奈根〜練馬区大泉町間)に係る環境影響評価書」に対して環境大臣が意見を提出し、その中で「水循環に係る環境保全措置について」「地下水質の保全について」など地下の水循環についてふれている。
  当事業のような大規模事業が行われるのであれば、当然にも環境アセス法を適用し、きちんと環境影響評価を行うべきであると考えるがいかがか。
五 三月二三日衆議院環境委員会における門松政府参考人答弁について
 「平成六年、一九九四年の渇水でございますが、木曽川の既往最大という渇水になっていますが、被害の具体的な例でございますが、延べ十日間にわたって飲み水、水道水でございますが、断水しております。十日間のうちで、最大十九時間の断水を行った日もございました。これによりまして、約百二十万人の人たちの飲み水が不自由をいたしました。」=A、「また、木曽川水系に立地します工場の生産に影響が出まして、約二百七十億円もの被害を受けております。」=B (いずれも議事録より)
 (一) Aについて
  HP資料によれば、一九九四年規模渇水では「徳山ダムの利水枯渇後は緊急水(二〇m3/秒)のみ導水」となり、利水補給は止まる。
  @ 前記答弁のような「被害」については、当事業によって被害軽減されることにはならないのではないか。
  A 「緊急水」は「治水」費用として計上され(全国の納税者が)負担することになる。他方、水道事業は公営企業会計−独立採算を原則としている。この答弁の意味するところを、公営企業会計の原則との整合性との関係で分かりやすく説明されたい。
  B もし、実際に水が補給されれば、(費用負担などによる法的制約を超えて)融通できるから≠ニいう論理であるならば、水利権につき踏み込んだ調整が可能であることが前提となる。一九九四年渇水時でも、早期に大胆な水利権調整を行っていれば厳しい断水被害を回避可能であったはずだ、という研究結果も存在する。とすれば、やはり前記答弁のような「被害」の軽減を、多額の公金を投入する当事業の「目的及び効果」として挙げるのは、不適切ではないか。
  *主として、伊藤達也・金城学院大学教授の著作参照
  「水資源政策の失敗−長良川河口堰−」(共著、二〇〇三)、「水資源開発の論理−その批判的検討−」(二〇〇五)、「木曽川水系の水資源問題−流域の統合管理を目指して−」(二〇〇六)
 (二) Bについて
  木曽川フルプラン水系では工業用水は、完全に「余っている」(裁判の判決も、不確実な将来に取水・利用する可能性がゼロであるとはいえない、ということでしかない。結局、愛知県・三重県・岐阜県は、公営企業会計として独立採算で処理すべき「水源開発費負担」を一般会計で補うという、法の予定するところでない措置を長期にわたって行っており、この状態が解消される具体的見通しはない)。その現実の下で、大渇水時には「緊急水(二〇m3/秒)のみ導水」することで、「木曽川水系に立地します工場の生産への影響」は軽減できるという論理は、理解に苦しむ。
  発生確率の極めて低い異常な大渇水時の二七〇億円″H業生産被害軽減の対策を、主に「治水」費用で手当するのは、法的にも経済的にも妥当な公共投資なのか。この答弁(=B)の意味するところを、公営企業会計の原則との整合性との関係で分かりやすく説明されたい。

 右質問する。



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