衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十九年六月二十二日提出
質問第四一〇号

宇宙の平和利用に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




宇宙の平和利用に関する質問主意書


 六月二十日、軍事利用目的の宇宙開発も可能とする「宇宙基本法案」が自民・公明両党から提出された。現在のわが国の宇宙政策は、一九六九年五月九日、衆議院で採択された「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」(いわゆる宇宙の平和利用決議)に則り平和利用に限り進められている。このことは政府も明確に認めているとおりである。また、この国会決議に則った宇宙に関する平和目的の技術開発と研究によって、わが国は宇宙物理学など多くの分野で多大の国際貢献を果たしてきた。
 ところが、独立行政法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)の立川敬二理事長は、本年二月八日の定例記者会見において、自民党が準備を進めている宇宙基本法案について記者から問われ「宇宙でできることを少し広げようということ、世界標準にしたらどうかと聞いている。世界常識でよいのではないか」と発言している。この発言について、五月十一日の内閣委員会で質したが、事実であるという答弁があった。
 よって、次のとおり政府に対し質問する。

(一) 六月十三日付の日刊工業新聞において、立川理事長は「与党が目指している宇宙基本法は必要で、速やかに成立してほしい。宇宙政策が国家レベルで決まることは諸外国と肩を並べることにもなる」「基本法が成立すれば政府は戦略本部を設置し、宇宙利用も今まで以上に広範になる」と発言したと伝えられている。理事長のこの発言は事実か。事実とすれば、いつ発言したものか。
(二) 二月八日の共同通信の配信では、前述の発言に加えて理事長は「『宇宙機構の設置法は平和利用に限ると書いている』と述べ、実際に軍事利用するには新組織設立か設置法改正が必要との認識を示した」とあるが、これは事実か。
 この発言は、宇宙基本法案にあわせて、さらにJAXA法の見直しと宇宙活動法(仮称)の整備を念頭においてのものか。
(三) JAXAはわが国で唯一、宇宙航空の研究と開発を行なう機関であり、その長たる理事長は平和利用を定めた国会決議と政府見解を遵守するのが当然である。立川理事長は、宇宙基本法案が提出もされておらず、審議・成立もしていないうちから、宇宙の軍事利用を容認し、法案の早期成立を求めている。宇宙の平和利用決議に反し、政府見解と百八十度異なる見解を発言する者はJAXAの理事長の職務と両立しえないのは明白である。国の基本政策を遵守できない理事長は更迭すべきではないか。
(四) 法案の準備には、関係府省も関与していると思われる。自民党は宇宙基本法案の準備のため政務調査会のもとに、宇宙開発特別委員会、宇宙平和利用決議等検討小委員会などを設け、自民・公明両党は宇宙基本法に関するプロジェクトチームで議論を進めてきた。これら与党の会議への、関係府省担当者の同席状況(オブザーバーも含む)はどうか。詳らかにされたい。
(五) 昨年十一月二十九日に提出した「宇宙の平和利用決議に関する質問主意書」(第一六五国会質問第一九〇号)において、平和利用決議を遵守するもとで、わが国が不利益を受けたことがあるかどうかを質した。これに対する政府の答弁は「我が国が不利益を受けたか否かを一概にお答えすることは困難である」というものであった。そこで次の三点について、個別に答えられたい。
 @ 事実上の「偵察衛星」として、収集した画像情報を機密扱いにしている「情報収集衛星」を、正式に「偵察衛星」と呼べないことが「我が国にとっての不利益」と考えているのか。
 A 平和利用決議を遵守している現在の「情報収集衛星」では、光学衛星の分解能が六十pに抑えられているとされているが、これにより「我が国が不利益を受けている」と考えているのか。
 B 自衛隊独自の通信衛星や気象衛星を持たないと、「我が国が不利益を受ける」ことになると考えているのか。その場合、具体的にどんな不利益な事態があるのか。
(六) 宇宙基本法の立法化に当たって、自民党国防族とともに(社)日本航空宇宙工業会や(社)日本防衛装備工業会など、業界の利益拡大が強く関わっているとされている。こうした中でJAXAは、情報通信産業の最大手・NTTグループ出身の立川理事長のもと、昨年十二月にはNTTが開発した実験機器を搭載した技術試験衛星「ETS−[(きく八号)」を打ち上げた。技術試験や利用実験はNTTなどが行なうことになると思うが、これは通信衛星技術分野についてみれば、国内携帯電話市場におけるNTTの独占に資するものともいわれている。
 国の研究開発が、業界他社を抑えて一社独占に道を開くものになるのは、国の事業の公正性を揺るがすものになるのではないか。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.