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平成二十年十一月六日提出質問第二〇九号
前航空幕僚長の論文「日本人としての誇りを持とう」についての麻生首相の認識に関する質問主意書
前航空幕僚長の論文「日本人としての誇りを持とう」についての麻生首相の認識に関する質問主意書
田母神俊雄前航空幕僚長は、民間企業が主催する懸賞論文に、政府見解と異なる内容の、「日本は侵略国家であったのか」と題する懸賞論文を応募するに先立ち、「日本人としての誇りを持とう」(『鵬友』三三巻一号、二〇〇七年五月)という論文を、同じく航空幕僚長として発表しているが、処分はされていない。同論文には以下のような記述がある。
(記述一)「戦後教育の中で我が国の歴史と伝統はひどい無実の罪を着せられてきた。その代表的なものが、日本は朝鮮半島や中国を侵略し残虐の限りを尽くしたというものである」(二頁)
(記述二)「日本軍による南京大虐殺という話がある。(中略)日本軍が中国の民間人を組織的に虐殺したことは全く無かったのである。(中略)つまり南京大虐殺はなかったということなのだ。さて戦後の日本人はどうしてこのようなウソ、捏造に当たる歴史について簡単に受け入れてしまうのだろう。それは学校で明治維新以降の我が国の真実の歴史がほとんど教えられていないことによる。(中略)税金を使って反日教育をやっているようなものである。それは戦後のアメリカによる占領政策から始まった。アメリカによる占領政策は、日本が二度と再びアメリカに戦いを挑むことがないように、徹底的に日本を改造するものであった」(二−四頁)
(記述三)「私は戦前のアメリカが今と同じアメリカであったなら日本がアメリカと戦争をすることはなかったと思っている。実はアメリカもコミンテルンに動かされていた」(八頁)
(記述四)「我が国は、連合国から、国際法違反の講和条約を押し付けられたのだ」(一〇頁)
当該論文が、防衛大学校を卒業し、自衛隊統合幕僚学校長を務めた現職の航空幕僚長が執筆したものであることを考えると、対外的な影響があまりに大きい。また、内部向けの会報に掲載されて配布されていることを考えれば、現行の自衛隊の教育内容について至急検証すべきと考える。田母神前航空幕僚長を同職に任命したのは当時の安倍首相であるが、引き続き航空幕僚長の地位に留めた麻生首相の見解を明らかにしたい。
従って、以下、質問する。
1 麻生首相は、(記述一)にあるように、「日本は朝鮮半島や中国を侵略し残虐の限りを尽くした」のは「無実の罪」との認識を共有しているのか。
2 麻生首相は、(記述二)にあるように、「南京大虐殺はなかった」との認識を共有しているのか。また、それは「戦後のアメリカによる占領政策」によるものとの認識を共有しているのか。
3 麻生首相は、(記述三)にあるように、「私は戦前のアメリカが今と同じアメリカであったなら日本がアメリカと戦争をすることはなかったと思っている」との認識を共有しているのか。
4 麻生首相は、(記述四)にあるように、「我が国は、連合国から、国際法違反の講和条約を押し付けられたのだ」との認識を共有しているのか。
5 そうであれば、当時の吉田茂首席全権は「国際法違反の講和条約」に署名したことになるが、このような認識を示す論文を現役の、航空幕僚長が出していたことを承知していたか。承知していたのであれば、処分を行わなかった理由は何か。処分を行わなかったことについて麻生首相に責任があると考えるか。
6 承知していないのであれば、航空幕僚長を引き続き任命するにあたり、適任であるかどうかの調査を行っていないのか。調査を行わなかったとすれば、その理由は何か。また、調査を行わなかったことについて麻生首相に責任があると考えるか。
7 当時現職の航空幕僚長の名前で当該論文が出されていたことに対して、対外的、内部的にどのような影響があったか。また、どの程度の影響があったかについて検証したか。していないのであれば、すぐに検証すべきと考えるがいかがか。麻生首相の認識を示されたい。
8 当該論文が、当時現職の航空幕僚長が書いていることを考えれば、自主回収すべきと麻生首相は考えるか。
二 安倍元首相の任命責任について
1 田母神前航空幕僚長を航空幕僚長に任命したのは安倍元首相である。安倍元首相は、このような論文を、田母神前航空幕僚長が出していたことを承知していたか。承知していたのであれば、処分を行わなかった理由は何か。
2 承知していないのであれば、適切であると考えるか。また、政府見解と異なる発言を航空幕僚長が行っていたにも関わらず放置したことについて安倍元首相に責任があると考えるか。
3 麻生首相は、安倍元首相に任命責任があると考えるか。そうでなければ、誰に責任があると考えるか。
4 安倍元首相の任命責任について、政府として調査すべきと考えるがどうか。麻生首相の考えを示されたい。
三 航空自衛隊幹部学校、自衛隊統合幕僚学校および防衛大学校の教育内容について
1 麻生首相は、航空自衛隊幹部学校、自衛隊統合幕僚学校および防衛大学校において、現在、(記述一〜四)と同様の認識に基づいた教育を行うべきと考えているか。
2 航空自衛隊幹部学校、自衛隊統合幕僚学校および防衛大学校において、現在、(記述一〜四)と同様の認識に基づいた教育が行われているか、日本政府は検証しているか。検証していなければ、至急検証すべきと考えるがいかがか。
3 もしも現在、(記述一〜四)と同様の認識に基づいた教育が行われているとすれば、至急是正すべきと考えるがいかがか。
4 航空自衛隊幹部学校、自衛隊統合幕僚学校および防衛大学校では、かつて、(記述一〜四)と同様の認識に基づいた教育を行ったことはあるか、日本政府は検証しているか。検証していなければ、至急検証すべきと考えるがいかがか。
5 もしもかつて、(記述一〜四)と同様の認識に基づいた教育が行われているとすれば、どのように対処すべきと考えるか。
四 日本政府は現在、航空自衛隊幹部学校、自衛隊統合幕僚学校および防衛大学校の教育内容について、どのようなチェックを行っているか。
五 日本政府は現在、自衛隊統合幕僚学校長の人事選考について、どのような基準を定めているか。田母神前航空幕僚長を自衛隊統合幕僚学校長に選んだ人事選考は妥当であったという認識か。
六 日本政府は現在、航空幕僚長の人事選考について、どのような基準を定めているか。田母神前航空幕僚長を航空幕僚長に選んだ人事選考は妥当であったという認識か。
七 現役の航空幕僚長が、部隊内外で読まれることを前提に発表した以上、(記述一〜四)を含む当該論文が政府の方針を示すものとして受け止められると考えてよいか。麻生首相および政府の見解を示されたい。
八 隊内誌『鵬友』をはじめ全ての媒体について、また田母神前航空幕僚長をはじめ全ての自衛隊隊員により、現職の自衛官として書かれた全ての論文について、その内容を調査・検証すべきと考えるがいかがか。麻生首相の見解を示されたい。
右質問する。