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平成二十年十一月二十八日提出
質問第二九〇号

宇宙の軍事利用目的に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




宇宙の軍事利用目的に関する質問主意書


 昨年六月二十日、自民・公明両党により衆議院に宇宙基本法案が提出されたが、継続審議扱いとなった。本年第百六十九通常国会で、継続審議になっていた同法案は、自民・公明・民主三党間で修正協議が行われた。五月九日、自民・公明両党は、継続審議の同法案をいったん撤回。自民・公明・民主三党は、民主党の意向を加えた形で修正、改めて宇宙基本法案を内閣委員長提出の形で共同提案した。
 宇宙基本法案は「宇宙開発は平和の目的に限る」とした、一九六九年のいわゆる宇宙の平和利用決議の解釈、自衛隊による宇宙開発とその軍事利用など、憲法第九条の平和主義に関わる重大な問題を徹底して審議する必要があった。それにもかかわらず、内閣委員会での法案審議は、衆・参合わせてもわずか約四時間というきわめて短時間で不十分なものであった。右に述べたような問題に関する提案者と政府への質疑を、わが党を除いてまともに行わないまま、宇宙基本法は五月二十一日、自民・公明・民主三党等の賛成により成立した。
 科学衛星や天体探査機などによる宇宙の解明と真理の探究、またそのための軍事と一線を画した自主・民主・公開の原則による技術開発の促進こそ、憲法の平和主義理念の体現である。現在、政府は、宇宙基本法に基づく宇宙開発戦略本部と、その下に設置された宇宙開発戦略専門調査会において、宇宙の軍事利用を含んだ宇宙基本計画の作成作業を進めている。同時に防衛省でも具体的な宇宙の軍事利用方法の検討が始まっている。宇宙の軍事利用は、既成事実を積み重ねて憲法の平和主義の原則を否定するものである。
 よって、次のとおり質問する。

(一) 宇宙の平和利用決議の制約により、これまでのわが国の宇宙の研究・開発は国際的に立ち遅れていたと考えているのか。
 また、軍事利用の面について、国際的に立ち遅れた状況にあったという認識か。
(二) 宇宙基本法により日本の宇宙開発の軍事利用が解禁され、自衛隊が宇宙を軍事利用するため軍事衛星を開発、所有、運用することが可能となったという認識に間違いはないか。
(三) 宇宙開発・利用を自衛隊が行うことが可能になることは、日本の宇宙分野の軍需産業の育成と繁栄につながるという認識か。あるいは民生・平和分野での宇宙産業の育成と繁栄にとってはマイナスになるという考えを持っているのか。
(四) 本年五月九日の衆院内閣委員会での宇宙基本法案の審議で、提案者の河村建夫議員は私の質問に対し、「宇宙基本法案が宇宙の平和利用決議を否定するものではない」と答弁され、十一月十二日の衆院内閣委員会では、政府の一員として河村建夫官房長官は同様に、「宇宙基本法は平和利用決議を否定するものではない」と答えられた。
 宇宙基本法は平和利用決議を否定するものではなく、憲法の平和主義に則っていると政府が主張する根拠は、平和利用決議の解釈が従来の「非軍事」から「非侵略」に変わったからなのか。
(五) 自衛隊において、偵察目的に要求される衛星の分解能レベルや数値を定めているか。明らかにされたい。
(六) これまでの自衛隊の偵察目的の情報収集活動において、現在の情報収集衛星の能力が要因となって活動が十分にできなかったことがあるか。
 また、宇宙基本法により、商業用として一般化している観測レベルを超えた高分解能の偵察衛星を複数機持つことは可能になったのか。
(七) 偵察衛星の他に、自衛隊による早期警戒衛星・通信衛星・測位航法衛星・海洋偵察衛星・電子偵察衛星・気象衛星・通信傍受衛星を開発、所有、運用することは可能であるか。各々について答えられたい。
(八) 宇宙の軍事利用の一つとして、ASAT(対衛星兵器)が考えられるが、ASATには、いわゆるキラー衛星も含まれるのか。自衛隊がASAT、キラー衛星を持つことは可能か。
(九) 防衛省は本年八月二十九日、宇宙開発利用推進委員会を設置し、その下に宇宙開発利用の基本方針を検討する作業チームを置いた。同委員会および作業チーム(以下、「防衛省宇宙開発利用推進委員会」と略)は、宇宙基本法がなければ設けることができなかったと思うがどうか。
 防衛省宇宙開発利用推進委員会は、何を目的として置かれたのか。また、各々の構成メンバーをすべて提示されたい。
(十) 本年九月十一日に開かれた防衛省宇宙開発利用推進委員会の第一回会合で、林防衛大臣は「我が国のみならず各国では防衛分野においても宇宙利用に相当程度依存していると言って過言ではない」「特に情報収集・通信の分野において非常に重要」「現代戦においては情報面での優位性の確保ということが非常に大きな鍵であり、そういう意味で宇宙利用は有力な手段として各国とも極めて重視」「情報面での優位性の確保が不可欠であり、それを強化する宇宙開発利用は重要」と、自衛隊と日本の宇宙開発についてふれている。この発言は、自衛隊による宇宙開発と利用を積極的に推進する必要があるという認識に基づくものと理解してよいか。「各国」とは、具体的にどの国を念頭においた発言か。
(十一) 本年十一月七日に開かれた防衛省宇宙開発利用推進委員会の第二回会合で、青木節子氏(慶應義塾大学教授)・池上徹彦氏(宇宙開発委員会委員)・中田勝敏氏((社)日本航空宇宙工業会技術顧問)の三名を講師として招聘しているが、各講師の講演の内容はどのようなものだったか明らかにされたい。
(十二) 防衛省は会合の開催にあたり、三名の講師に対し講演の謝礼金を支払っているかと思うが、防衛省は講師の招聘について文書による決裁をとっているか。事務の実績を跡付けるためにも文書による決裁が必要かと思うが、必要でないという認識か。
(十三) 内閣官房に置かれた宇宙開発戦略本部、宇宙開発戦略専門調査会、宇宙開発利用体制検討ワーキンググループ、宇宙活動に関する法制検討ワーキンググループ(以下、「内閣官房宇宙開発戦略本部」と略)の各々の構成メンバーと、その宇宙開発に関する専門分野を示されたい。
(十四) 内閣官房がまとめる宇宙基本計画はいつ策定され、防衛省宇宙開発利用推進委員会の検討結果がどのように反映されるのか。内閣官房宇宙開発戦略本部での議論と、防衛省宇宙開発利用推進委員会での議論とはどういう関係にあるのか。
(十五) 宇宙基本計画と防衛省宇宙開発利用推進委員会の検討結果は、防衛計画の大綱見直しと次期中期防衛力整備計画の策定に反映させることになるのか。またこれらの見直し、策定時期はいつで、どのように反映させる見通しか。
(十六) 内閣官房宇宙開発戦略本部の議論は、公開が当然であると思うがどうか。非公開とすれば、その理由はなぜか。
 また、配布資料や議事録は発言者を明示した上で、全文を記録し公開すべきと思うがどうか。できないとすれば、その理由はなぜか。
(十七) 内閣官房宇宙開発戦略本部の議論では、いわゆる有識者からの意見を聞くものと思うがどうか。それには宇宙開発・利用、自衛隊もしくは米軍の装備品調達や研究開発を行う民間企業や公益法人等も含むのか。
 また、意見を聞く有識者の選考の範囲や基準、もしくはそれに類するものは何か。
(十八) 同様に、防衛省宇宙開発利用推進委員会の議論は、公開が当然であると思うがどうか。非公開とすれば、その理由はなぜか。
 また、配布資料や議事録は発言者を明示した上で、全文を記録し公開すべきと思うがどうか。できないとすれば、その理由はなぜか。
(十九) 防衛省宇宙開発利用推進委員会の議論では、いわゆる有識者からの意見を聞くものと思うがどうか。それには宇宙開発・利用、自衛隊もしくは米軍の装備品調達や研究開発を行う民間企業や公益法人等も含むのか。
 また、意見を聞く有識者の選考の範囲や基準、もしくはそれに類するものは何か。
(二十) 内閣官房の宇宙開発戦略専門調査会は、「宇宙開発利用に関する機関や行政組織の見直し・検討」を行う。本年十一月四日の宇宙開発戦略専門調査会は、人工衛星の利用に関する今後の検討課題の一つとして「防衛利用にかかる今後の研究開発活動において宇宙機関との連携の方策」をあげている。宇宙機関が何を示すかについて、本年十一月十二日の衆院内閣委員会での私の質問に対し、丸山剛司・内閣審議官は、「主として」宇宙航空研究開発機構(JAXA)であることを明らかにしたが、JAXA以外の宇宙機関には何があるか。宇宙開発委員会(SAC)、情報通信研究機構(NICT)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、(財)無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)、(財)リモート・センシング技術センター(RESTEC)は含まれるか。それ以外にもあれば示されたい。
 また、宇宙開発利用に関する機関や行政組織には、防衛省の技術研究本部や装備施設本部なども含まれるか。
(二十一) 宇宙基本法附則第三条では、施行後一年を目途にJAXA等に関する検討、同第四条では宇宙開発利用を行う行政組織の検討が定められているが、これは現在のJAXA法を改めるということか。JAXA法を改めるとすれば、JAXAが防衛省の所管となることもありうるのか。
 また、JAXA等の「等」には何が含まれているか示されたい。
(二十二) 宇宙基本計画の決定はいつか。宇宙基本計画の決定後、宇宙活動法を制定する考えはあるかないか。あるとすれば、その時期はいつか。
(二十三) 諸外国のうち、最も多く軍事衛星を打ち上げ、保有(稼働中、推定含む)している国はどこか。諸外国の軍事衛星の数はいくつあるか(推定含む)。国別・種類別に答えられたい。
(二十四) これまでのわが国の宇宙予算について、軍事用と民生用とに区分した場合、すべて民生用か、異なるか。異なるとすれば、どういう比率か。来年度概算要求についてみた場合はどうか。軍事用・民事用の金額と、その比率を示されたい。
(二十五) 自衛隊のイラクでの活動やインド洋での給油活動において、通信目的、情報収集目的に使用した人工衛星は何か。それはどこが保有しているものか。
 また、大容量を確保するため商用衛星の専用利用には数ヶ月、秘匿系の通信の構築には一年以上かかったのか。高速通信の構築、秘匿回線の構築、全情報の秘匿化などに民間商業用衛星では障害があったのか。宇宙基本法は、これらを解消することにつながるのか。
(二十六) 宇宙開発が自衛隊により軍事利用されるようになると、衛星の開発からロケットの打ち上げに至るまで今まで以上に機密保持の名による情報の非公開や警備の強化が考えられ、国民の生活や権利を侵害するおそれがあると思うがどうか。
 警備の強化のために自衛隊が関わってくるのではないかという懸念があるが、そうならない保障はあるか。これまで自衛隊はロケットの打ち上げの際に、どのように関わってきたか。
(二十七) (社)日本航空宇宙工業会は、宇宙基本法成立後の本年六月、「我が国新宇宙開発体制の在り方」という提言を発表し、「安全保障プロジェクト」として準天頂衛星システム、早期警戒衛星、可変軌道観測監視衛星を具体的に提示している。国はこのことを承知しているか。可変軌道観測監視衛星とは、どのような目的を持った人工衛星か。
 また、この提言についてどういう認識を持っているか。
(二十八) 準天頂衛星は官民共同で開発が進められ、来年度打ち上げが目標となっている。準天頂衛星は測位機能だけで通信機能を排除しているのか。
 準天頂衛星システムは、アメリカの「GPSと完全に相互運用性及び共存性を持って設計」されている。また、昨年五月十一日の衆院内閣委員会での私の質問に対し、坪井裕・内閣参事官は「準天頂衛星からの信号もだれでも地上で受信できるもの」「特定の利用者を排除するということは技術的にも困難」と答えている。準天頂衛星が、自衛隊や米軍によって軍事に使われないという保障はあるか。

 右質問する。



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