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平成二十年十二月十八日提出
質問第三六六号

海上幕僚長の訓辞に関する質問主意書

提出者  阿部知子




海上幕僚長の訓辞に関する質問主意書


 田母神俊雄前航空幕僚長が「あの戦争は侵略戦争ではない」とする論文を公表、防衛省は同氏を更迭した。政府はあくまで田母神氏個人に帰する問題として処理してきたが、侵略戦争を正当化する歴史認識は、自衛隊内部に内在する問題としてとらえ返す必要があると考える。そこで二つの事案について政府の見解を質したい。
 ひとつは、本年三月七日、吉川榮治前海上幕僚長が行った「第五十五期指揮幕僚課程学生の卒業に際しての海上幕僚長訓辞」(以下「卒業訓辞」という)である。この中で「我々は、帝国海軍以来培われてきた輝かしい伝統と諸先輩の業績を継承しつつも、守るべき伝統と変えるべき因習とをしゅん別し、ともすれば硬直しがちな組織を効率よく機能させるとともに、常に問題意識を持ちながら、新しい時代に適合し得る、これからの海上自衛隊を創り上げる必要がある」と述べている。
 もうひとつは、同年三月二十八日、赤星慶治現海上幕僚長が行った「第五十六期幹部高級課程及び第五十六期指揮幕僚課程学生の入校に際しての海上幕僚長訓辞」(以下「入校訓辞」という)である。この中で「諸官には、本校での教育を通じ、海上自衛隊の物の考え方やその現状、あるいは帝国海軍以来の文化を肌で感じるとともに、海上自衛隊の学生に、陸自・空自の物の考え方を披瀝し、互いに自由な発想で切磋琢磨し、本課程履修を有意義なものとしてもらいたいと思います」と述べている。
 この二つの訓辞は戦前の海軍をことさら美化するものとなっている。右を踏まえ、以下質問する。

一 「卒業訓辞」について
 @ 吉川榮治前海上幕僚長が、このような「卒業訓辞」を行ったことを承知しているか。承知しているとすればいつ、どの機関の誰から情報を得たか。承知していないとすれば、自衛隊幹部である海上幕僚長の訓辞について、まったく関与しないのは問題が大きいと考えるが、政府の見解を明らかにしてもらいたい。
 A 「卒業訓辞」の中の「帝国海軍以来培われてきた輝かしい伝統」の「輝かしい伝統」とは何を意味するのか。輝かしい伝統の中身を具体的に説明されたい。
 B 「諸先輩の業績」とは何を意味するのか。ここで言う「諸先輩」とは戦前の海軍の軍人まで含まれると思われるが、そのように解釈してよいか。
 C 「守るべき伝統」とは何を意味するのか。「守るべき伝統」の中には戦前の海軍の伝統まで含まれると思われるが、そのように解釈してよいか。
 D 「変えるべき因習」とは何を意味するのか。
 E 吉川榮治前海上幕僚長の「卒業訓辞」は、戦前の海軍を賛美していると思うが、政府の見解を明らかにされたい。
二 「入校訓辞」について
 @ 赤星慶治海上幕僚長が、このような「入校訓辞」を行ったことを承知しているか。承知しているとすればいつ、どの機関の誰から情報を得たか。承知していないとすれば、自衛隊幹部である海上幕僚長の訓辞について、まったく関与しないのは問題が大きいと考えるが、政府の見解を明らかにしてもらいたい。
 A 「帝国海軍以来の文化」とは何を意味するのか。帝国海軍以来の文化の中身を具体的に説明されたい。
 B 「肌で感じる」とは何を意味するのか。
 C 赤星慶治海上幕僚長の「入校訓辞」は、戦前の海軍を賛美していると思うが、政府の見解を明らかにされたい。
三 両氏の訓辞について、何らかの説明を求めたことはあるか。なければなぜしなかったのか。両氏の訓辞は政府の歴史認識と異なると言っても過言でないと思うが、政府として両氏に対して何らかの処分を行う考えはあるか。
四 政府は第二次世界大戦における帝国海軍の行ってきたことについての評価を明らかにされたい。
五 自衛隊幹部の訓辞等について過去に遡って実態調査を行う考えはあるか。
六 第二次世界大戦における旧日本軍の特殊潜航艇、神風など特攻隊による自爆攻撃についての政府の評価及び自衛隊内での隊員教育をどのように扱っているのか明らかにされたい。
七 旧日本軍のいわゆる「軍神」と呼ばれた軍人についての政府の評価及び自衛隊内での隊員教育をどのように扱っているのか明らかにされたい。

 右質問する。



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