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平成二十二年十月一日提出
質問第一一号

取調べの全面可視化実現の意義等に係る菅直人内閣の認識等に関する質問主意書

提出者  浅野貴博




取調べの全面可視化実現の意義等に係る菅直人内閣の認識等に関する質問主意書


 本年八月十日に閣議決定された政府答弁書(内閣衆質一七五第二〇号。以下、「政府答弁書」という。)を踏まえ、質問する。

一 障害者団体等を対象とした低料金の第三種郵便物制度に係る文書を偽造し、実態のない自称障害者団体「凛の会」に同制度を悪用させたとして、厚生労働省の上村勉元担当係長が昨年逮捕された。右の事件(以下、「文書偽造事件」という。)に絡み、文書偽造を上村元係長に指示したとして、昨年六月に逮捕された村木厚子元同省雇用均等・児童家庭局長の公判が本年九月十日に行われ、無罪判決が下された。「文書偽造事件」に対し、今回村木氏に無罪判決が下されたことについて、検察庁としてどの様な認識を有しているか。
二 検察官の強圧的な取調べにより、取調べを受けた者が事実と違う供述をしてしまい、「意に反した調書を取られた悔しかった」と被疑者ノートに詳細に書き留めていた者もいた。裁判所は検察側が作成した調書が客観的証拠と合わないことを考慮し、証拠として採用しなかった。結果として、村木氏に対して無罪判決が下されたものであるが、「文書偽造事件」に係る、被疑者への取調べの方法等、大阪地検特捜部の捜査には大きな問題があったと考えるが、柳田稔法務大臣の見解如何。
三 二で指摘した、「文書偽造事件」に係る一連の検察官による取調べの問題点を是正し、公正で公平な、真相解明に資する取調べを行うためには、取調べの全過程を録音・録画する、取調べの可視化を実現するより他はないと考えるが、柳田大臣の見解如何。
四 一九九〇年、栃木県足利市で当時四歳の女児が殺害されたいわゆる足利事件で容疑者とされ、無期懲役が確定し、服役中だった菅家利和氏が、女児の下着に付着していた体液のDNA型が菅家氏のものとは一致しないとの鑑定結果が出たことを受け、昨年六月四日、千葉刑務所から釈放された。足利事件の再審の第五回公判が本年一月二十二日、宇都宮地裁で開かれ、その際、当時菅家氏の取調べを担当した森川大司元検事も出廷した。更に三月二十六日午前の公判では、佐藤正信裁判長は菅家氏に対して無罪を言い渡し、検察側は判決後に上訴権放棄を申し立て、菅家氏の無罪が確定した。右を受け、千葉景子前法務大臣は同日、閣議後の記者会見で「こういうことがないようにさまざまな法的、制度的な検討をしなければいけない。可視化の問題やDNA鑑定のあり方とか、措置すべきものがあれば対応していかなければと思う」と述べていると承知する。また一九六七年に茨城県利根町布川で、当時六十二歳の男性が殺害されたいわゆる布川事件の犯人とされ、強盗殺人罪等で無期懲役が確定し十八年間服役したものの、昨年十二月、最高裁判所により再審開始が決定された件につき、本年七月三十日、犯人とされた桜井昌司氏と杉山卓男氏の第二回再審公判が水戸地裁土浦支部で行われた。神田大助裁判長は、検察側が申請していたDNA型鑑定を棄却し、桜井氏、杉山氏に対して無罪判決が言い渡される公算が高くなっている。この様な冤罪事件が近年相次いでいるが、これらも全て、取調べに際して警察、検察に脅迫的、威圧的な尋問を受け、やむにやまれず自白してしまったケースがほとんどである。そして、今回の「文書偽造事件」における村木氏への無罪判決である。このことを考えると、取調べの一部のみを可視化するだけでは不十分であり、真に冤罪防止を図るならば、三で指摘したように、全面的に可視化することが絶対に必要であると考える。右につき「政府答弁書」では「被疑者の取調べを録画等の方法により可視化することについては、その実現に向けて取り組むこととしており、法務省内の勉強会、国家公安委員会委員長の研究会等において、幅広い観点から着実に検討を進めている段階である。」との答弁がなされているが、柳田大臣、岡崎トミ子国家公安委員会委員長、そして菅直人内閣総理大臣として、「文書偽造事件」という新たな事例ができた今、右につきどの様に考えるか、改めて見解を示されたい。
五 取調べの全面可視化と並び、被疑者ではない将来参考人、証人となる人物に対する聴取についても、可視化措置をとることが必要であると考える。本年三月五日に閣議決定された政府答弁書(内閣衆質一七四第一七一号)では、過去に四名の検察官が、取調べの相手方に暴行を加える等の行為を働き、懲戒処分又は法務省の内規に基づく処分を受けていることが明らかにされている。また同月三十日に閣議決定された政府答弁書(内閣衆質一七四第二七二号)では、右四名のうち、@平成五年十月、取調べの相手方二名にそれぞれ足蹴りするなどの暴行を加えて傷害を負わせ、同年十一月に免職処分を受けた検察官と、A平成二年七月、取調べの相手方の顔を突き上げる暴行を加えて傷害を負わせ、平成六年六月に停職三カ月の処分を受けた検察官の二名が、被疑者ではなく参考人として聴取を受けた者に対し、右の様な暴行を加えていたことが明らかにされている。この様に、容疑をかけられたり、逮捕されているのでもない、本来何の咎めも受けるべき立場にない人物に対しても非人間的な行為が行われていたことが明らかになっている。また、本年九月八日に最高裁判所への上告が棄却された鈴木宗男前衆議院議員の事件でも、被疑者ではなく、あくまで参考人として東京地方検察庁特別捜査部に出頭を求められた人物が、検察官が予め用意した想定問答集の様なものに沿って、公判当日、証言をすることを求められ、何度も練習させられた、いくら事実関係を説明しても、検察官が想定しているストーリーに沿った供述をすることを強要された等、公判の公正性が大きく損なわれる、非人道的な聴取が行われていたことが明らかになっている。これらのことを鑑みる時、被疑者だけではなく、将来参考人、証人となる人物に対する聴取も同様に全面可視化することが絶対に必要であり、それなくして刑事事件の真相解明はあり得ないと考える。右につき「政府答弁書」では「被疑者以外の者の取調べを録音・録画することについては、刑事手続に与える影響等を含め、可視化の検討の中で十分議論し、結論を得たいと考えている。」との答弁がなされていたが、新たに検察側による取調べの問題点が明らかになってきた今、菅総理として右につきどの様な見解を有しているのか示されたい。

 右質問する。



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