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平成二十二年十月四日提出質問第二三号
中国人船長の釈放方針決定に至る経緯と法務大臣の指揮等に関する質問主意書
提出者 高市早苗
中国人船長の釈放方針決定に至る経緯と法務大臣の指揮等に関する質問主意書
平成二十二年九月七日に発生した中国漁船による公務執行妨害等被疑事件では、※(注)其雄船長が「公務執行妨害」の容疑で逮捕され、その身柄は九月九日に那覇地検石垣支部に送致された。石垣簡易裁判所は、九月十日に勾留決定、九月十九日に勾留延長を決定した。ところが、勾留期限到来前の九月二十四日に那覇地検が「処分保留の上、釈放する」旨の記者会見を行い、被疑者は九月二十五日に釈放され、出国した。
検察庁の方針は意外なものであり、菅内閣の閣僚は検察方針決定に際しての関与を否定しているが、私自身は、むしろ「日本国の国益を守る為には、法務大臣が検察庁法第十四条に則って検事総長に対して適切な指揮を行うべきだった」と考える者である。何故ならば、九月八日に菅直人内閣総理大臣は「我が国の法律に基づいて、厳正に対処していく」と表明されており、この考え方は正しいと思うからである。菅内閣の一員である法務大臣が、何故、総理大臣の方針を貫く為の努力をしなかったのか、甚だ疑問である。
被疑者を早々に釈放して国外に出したことは国益を損ね、検察庁の方針決定に至る経緯については様々な憶測と疑念を呼ぶこととなり、菅内閣の外交姿勢や法務行政全般に対する国民の不信感を増幅させてしまったと感じている。
従って、次の事項について質問する。
@ 前記の経緯については、間違いないか。仮に修正するべき点や補足するべき点があるならば、具体的に回答されたい。
A 那覇地検、高検、最高検の三者協議が行われた日時、法務省刑事局長が法務大臣に報告した日時、法務事務次官が内閣官房副長官に報告した日時を回答されたい。
B 九月二十四日の那覇地検記者会見以前には、検察庁が決定した方針について、総理大臣や官房長官への報告は行われなかったのか。報告を行ったとしたら、その日時を回答されたい。行わなかったとしたら、その理由を説明されたい。
C 検察庁の方針発表に先立って法務大臣や内閣官房副長官に対して行われた報告には、九月二十四日の記者会見で鈴木亨次席検事が述べた全ての釈放理由が含まれていたのか。
つまり、「『みずき』の損傷は直ちに航行に支障が生じる程度のものではない」、「『みずき』乗組員が負傷するなどの被害の発生がない」、「衝突は、巡視船の追跡を免れる為の咄嗟の行為で、計画性等は認められない」、「被疑者には我が国における前科等がない」、「我が国国民への影響や今後の日中関係も考慮すると、身柄を拘束して捜査を続けることは相当でない」という五つの理由について、漏れなく説明されたのか。
仮に説明しなかった点があったとしたら、その項目と説明しなかった理由を回答されたい。
D 法務省刑事局の説明によると、法務省刑事局長が法務大臣に対して報告をした時に、法務大臣は「分りました」と答えたということであるが、間違いないか。
E 前問について、「分りました」という言葉以外に、法務大臣は意見を述べたのか。述べたとしたら、その内容を示されたい。
F 検察庁が「処分保留の上、釈放」という方針を決定する前に、総理大臣、官房長官、官房副長官、その他の閣僚、与党政治家から、方針の方向性や決定時期についての示唆や指示は一切無かったのか。仮に法務省、検察庁に対して、大臣、副大臣、与党政治家から何らかの示唆や指示があったとすると、その日時と発言者名と内容を示されたい。
二 「法務大臣による指揮」について
@ 法務省設置法第十四条は「別に法律で定めるところにより法務省に置かれる特別の機関で本省に置かれるものは、検察庁とする」と規定しており、検察庁法第十四条は、「法務大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる」と規定している。
本事件の取調や処分の在り方につき、法務大臣から検事総長への指揮は行われたか。指揮が行われたとしたら、その日時と内容を明らかにされたい。
A これまでの国会答弁を伺う限り、法務大臣をはじめ菅内閣の閣僚は、本件における検察庁の方針決定に関しては一切の介入を行っていない旨を主張していると承知している。
しかし、私は、「むしろ本件については、法務大臣が検事総長に対して適切な指揮を行うべきであった」と考える者である。何故なら、九月八日に菅総理大臣は「我が国の法律に基づいて、厳正に対処していく」と表明されており、菅内閣の一員である法務大臣は、総理大臣の方針を受けて「法律に基づいた厳正な対処」を検事総長に求めるべきであったと考えるからだ。
仮に法務大臣が検事総長に対して指揮を行わなかったとしたら、その理由は何か。
B 仮に総理大臣、大臣、副大臣が検察庁による「処分保留の上、釈放」という方針を是として意見も述べなかったとしたら、総理大臣が表明された「我が国の法律に基づいて、厳正に対処していく」という方針は、九月八日以後に変更されたと考えてよいのか。そうであるとすれば、変更された日時と変更した理由について回答されたい。
右質問する。