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平成二十二年十月二十五日提出質問第九二号
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に係る菅直人内閣の認識に関する質問主意書
提出者 浅野貴博
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に係る菅直人内閣の認識に関する質問主意書
本年十月一日、菅直人内閣総理大臣は、所信表明演説の中で環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)に関し、「私が議長を務めるAPEC首脳会議では、米国、韓国、中国、ASEAN、豪州、ロシア等のアジア太平洋諸国と成長と繁栄を共有する環境を整備しなければなりません。かけ橋として、EPA、FTAが重要です。その一環として、環太平洋パートナーシップ協定交渉等への参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指します。」と述べ、TPPへの参加を検討する旨述べている。また菅総理は二十四日、全閣僚と民主党幹部を首相公邸に招いてTPPに関する勉強会を開催し、「十年後の農業や国土保全と、『国を開く』との両立は可能」との旨述べていると承知する。右を踏まえ、以下質問する。
二 TPPと経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)には、どのような違いがあるのか説明されたい。
三 TPPに参加した場合、EPAやFTAと異なり、貿易対象の物品に関しては、原則全て一〇〇%関税を撤廃することが求められるものと承知するが、確認を求める。TPPに参加した場合も、例外的に、ある物品を関税撤廃の対象外とすることは認められるのか。
四 TPPを巡っては、経済産業省、内閣府が、それに参加することで我が国の国内総生産をそれぞれ十兆円、三兆円押し上げる効果があるとの試算を出していると承知する。その一方で、農林水産省は、TPPに参加し、全ての物品の関税が撤廃された場合、我が国の第一次産業の生産額は、従来の半分の四兆円に減るとの試算を出していると承知するが、右の各府省による試算の根拠は何か、それぞれ詳細に説明されたい。
五 たとえば、TPPに参加すると見られている国の中に、我が国とのEPA締結を目指し、これまで交渉を重ねてきたオーストラリアも入っているが、二〇〇六年に北海道庁が行った試算によると、日豪EPA締結により北海道経済は関連産業全て含めて約一兆三千七百十六億円の損失を出し、農家戸数も二万一千戸減少し、更に道内総生産も、一九九七年の北海道拓殖銀行の破綻時を上回る四.二%の減少を見せ、関連産業で四万七千人、離農する農家も含めると八万八千人の失業者が出て、道内完全失業率は八.五%になるとのことである。我が国がTPPに参加し、全ての物品の関税が撤廃された場合、
@ 我が国の国内総生産の押し上げ額
A 我が国の第一次産業の生産額の減少額
B 我が国の食糧自給率の変化
C 我が国における第一次産業従事者数の変化
D 我が国における完全失業率の変化
の五点につき、菅直人内閣として試算し、統一した見解を有しているか。
六 我が国として、TPPに参加し、農産物を含め全ての物品の関税が撤廃された場合、農家への所得補償に係る費用はどれくらいに上るのか、菅内閣として試算し、統一した見解を有しているか。
七 前文で触れたように、菅総理は我が国のTPPへの参加と、我が国の第一次産業、特に農業の存続は両立可能である旨述べているが、右発言の根拠は何か。当方は、我が国がTPPに参加し、農産物を含め全ての物品の関税が撤廃された場合、スケールメリットではとても太刀打ちできない我が国の第一次産業、特に農業は甚大な被害を受け、多くの離農者が出てしまうと懸念するものであるが、TPPへの参加と我が国の第一次産業、特に農業の存続を両立させることは可能とする菅総理の見解について詳細に説明されたい。
右質問する。