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平成二十二年十一月二十九日提出
質問第二〇八号

朝鮮人強制動員への国の関与と責任に関する質問主意書

提出者  服部良一




朝鮮人強制動員への国の関与と責任に関する質問主意書


 菅内閣総理大臣は、本年八月十日に発表した談話で、「私は、歴史に対して誠実に向き合いたいと思います。歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに率直でありたいと思います。痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることは出来ないものです。この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」と述べた。
 また、本年十月には、韓国から強制動員被害者のご遺族が来日され、菅内閣総理大臣宛に要望書を提出したが、応対された外務大臣政務官はその際に、「菅総理談話に示されている通り、日本政府としては、歴史に目をそらすことなく日韓関係を築いていく。ご遺族の方々が長い間苦労され、こういう活動に取組まれていることに敬意を表します。これまでの施策が、必ずしもみなさんのお気持ちにかなうものではなかった。」と述べたと聞き及んでいる。
 八月十日の内閣総理大臣談話や、それに基づく前記の外務省の対応を歓迎しつつ、朝鮮人の強制動員の問題解決に向けた基本認識について、以下質問する。

一 朝鮮人労務動員に対する国の責任について
 1 朝鮮人の労務動員は、一九三九年七月四日の閣議において「昭和十四年度労務動員実施計画綱領」を決定したことから始まった。閣議決定には「朝鮮人の労力移入を図り適切なる方策の下に特に其の労力を必要とする事業に従事せしむるものとす」(第十三条)とされている。このように、朝鮮人の労務動員は、閣議決定により国の政策として実施されたものであり、国には直接的な責任がある。政府として、朝鮮人の労務動員が国の施策として実施したものである事実を認めるか。
 2 一九四三年の第八四回帝国議会参考資料として厚生省が提出した文書によると、前記閣議決定に基づき、朝鮮人の労務動員実施にあたり、厚生省、拓務省、朝鮮総督府が協議し「具体的移入要項」を決定し、「朝鮮人労働者募集要綱」を地方長官に通牒している。「特に其の労力を必要とする事業」(軍需指定事業)の事業主は、「移入許可申請」を職業指導所に提出し、政府の許可のもとで朝鮮人の労務動員が実施されている。このことからも、朝鮮人に対する労務動員が政府の各機関が直接的な関与のもとに実施されたものであることは明らかと言えるが、この事実を認めるか。
二 朝鮮人の労務動員の強制性について
 1 八月十日の内閣総理大臣談話は、朝鮮の植民地支配について「政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました。」と述べている。日本の植民地下における朝鮮からの労務動員は募集の形式にせよ、官斡旋や徴用の形式にせよ、朝鮮の人々にとっては「その意に反して行われた」ものである。朝鮮人労務動員が本人たちの意に反した強制を伴ったものであったことを認めるか。
 2 閣議で決定した「昭和十四年度労務動員実施計画綱領」には、朝鮮人の労務動員について「事業に従事せしむるものとす」とあり、その動員と労働は「せしむるもの」として強制されたものであった。政府は、朝鮮人の労務動員が植民地下の朝鮮人にとって強制を伴ったものであったことを認めるか。
三 労務動員被害者と遺族の問題について
 1 本年十月に韓国から強制動員被害者のご遺族八人が来日された際、ご遺族の方々は、遺骨問題とともに、肉親の強制動員と死亡の記録調査の提供を求めたいと語っている。中国人の強制動員と死亡者調査については、政府が一九四六年と一九五八年に実態調査を行い、強制動員された中国人の人数、氏名、関係企業名などを詳細に把握し公表しているところである。
  他方、朝鮮人については、その実態調査は行われていない。その結果、朝鮮人については、強制動員された人数、氏名、労働現場、死亡者などについて不明なままとなっている。過去に政府が行ったいわゆる朝鮮人の名簿調査や、現在行われている遺骨調査では、七十万人を超えると言われる朝鮮人の日本国内への労務動員の実態や、五万人を超えると言われる日本国内での死亡者のほんの一部が調査され、韓国政府に提供されているにすぎない。
  韓国の労務動員被害者のご遺族が日本政府に記録の提供と謝罪を求める背景には、肉親がどこでどのように死亡したのかを知りたいという欲求がある。政府は、労務動員被害者問題を、日韓の間で解決すべき問題の一つとして認識しているか。
 2 韓国のご遺族は、とりわけ労務動員死亡者の記録調査を日本政府の義務と考え、記録の提供を求めている。政府は、朝鮮人強制動員に関する実態調査を行う予定があるか。

 右質問する。



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