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平成二十三年五月十二日提出
質問第一七六号

東日本大震災により発生したがれき処理に係る政府の対応等に関する質問主意書

提出者  浅野貴博




東日本大震災により発生したがれき処理に係る政府の対応等に関する質問主意書


 三月十一日午後二時四十六分、宮城県牡鹿半島の東南東約百三十キロメートルを震源地とするマグニチュード九.〇の大地震が発生した。それに伴う巨大津波により、特に岩手、宮城、福島の三県の沿岸部では甚大な被害が発生し、一九九五年の阪神・淡路大震災を超える死者が出て、更には、津波により冷却機能が破壊された東京電力福島第一原発では、一号機から四号機まで炉心が融解し、多量の放射線が発生する事態が生じている。政府は、東日本大震災発生後、政府内に乱立していた震災対策組織を三本部に集約する等、復旧、復興に向けた態勢をようやく整えつつあるが、具体的な復旧、復興に向けたグランドビジョンの策定はおろか、実際の作業は始まっていない。その最大の原因は、阪神・淡路大震災の約一.七倍、岩手、宮城、福島の各県でそれぞれ約六百万トン、千六百万トン、二百九十万トン、合計で約二千四百九十万トンにも上ると言われている、震災により生じたがれきの処理が遅々として進まないことにあると考える。がれきを処理して初めて復旧を始めることができ、最終的な復興も可能となるのであり、がれきの処理は、まさに被災地復興に向けた「一丁目一番地」の課題である。また迅速な処理の実現を図るには、何よりも政府による強力なリーダーシップが求められる。右の認識の下、民主党、そして民主党・無所属クラブ所属の議員により構成され、当方も所属している政策集団「北辰会」の中で議論された内容を基に、以下質問する。

一 政府による明確なタイムスケジュールの設定について
 (一) 本年四月三十日の新聞報道(例えば同日付の北海道新聞夕刊)によると、政府、特に環境省として、東日本大震災により発生したがれきの処理を完了するまでに必要とされる時間は三年であるとの想定をしていることが明らかになったとのことであるが、一方で、五月十日付の新聞報道(例えば同日付朝日新聞朝刊)では、本年八月までにがれき処理を終える方針を、政府として近く緊急災害対策本部を開き、正式に発表するとのことである。政府として、今次の震災により発生したがれき処理に要する時間はどれくらいであると想定しているのか、その根拠とともに見通しを改めて示されたい。
 (二) 今次の震災により発生したがれきの処理は、第一義的に被災地の市町村が担うこととなっていると承知するが、まずは政府として、がれき処理に向けた明確な時間軸を設定すべきであると考える。例えば、漠然と三年という見通しを出すのではなく、最初の数か月のうちに写真アルバムや位牌等、個人物の収集や、震災で亡くなられた方々のご遺体の捜索を終わらせる、その後の数か月でがれきをすべて撤去するといった、具体的かつ明確なタイムスケジュールを政府が設定し、各市町村に示すべきだと考えるが、政府の見解如何。
二 いわゆる縦割り行政の打破について
 (一) がれきの種類について、倒壊家屋等は環境省、津波により陸上に上げられた船舶等は海上保安庁、海中・漁場にあるものは水産庁、放射能による汚染が懸念される福島第一原発付近のがれきについては経済産業省、文部科学省と、がれき処理一つをとっても担当省庁は多岐に渡り、それが迅速な処理の足かせとなっていると考えるが、政府の見解如何。
 (二) (一)で指摘した弊害を打破し、迅速な撤去を進めるためにも、一元的にがれき処理を担当し、処理に係る法的根拠等を整理し、各市町村をバックアップする部署を政府部内に設置すべきだと考えるが、政府の見解如何。
三 所有権等について
 (一) 車や漁船、家屋等、個人の所有権が発生するがれきの処理について、政府は一般的な指針を示しているものの、最終判断はあくまで市町村、現場任せになっていると承知するが、確認を求める。
 (二) 各自治体によるがれき処理が迅速に進まない最大の要因の一つに、この所有権の問題があり、このことが各自治体に後に所有者と起こり得るトラブルを懸念させ、迅速な処理をためらわせる要因となっていると考える。政府として、例えば今後半年間を経過すれば、所有者の確認、承諾なしに処理を進められるといった法的措置を取ることをはじめ、後にどのようなトラブルが生じても、訴訟に係る費用等をはじめ、最終責任は国に帰するといった態勢を取ることが必要ではないのか。政府の見解如何。
四 仮置き場・廃棄場の確保について
 (一) 被災三県のうち、がれきの仮置き場・廃棄場を確保できているのは宮城県のみであり、他の二県では十分な仮置き場が確保できていないと承知するが、政府として右の現状を正確に把握しているか。
 (二) 東北三陸沿岸はリアス式海岸が続き、埋め立て地としての仮置き場・廃棄場の確保はできない現状を鑑みる時、隣接する他県の協力が不可欠であると考える。右につき、政府としてあくまで各市町村、現場任せの方針を取るのではなく、被災地の要請をまとめ、被災三県と他都道府県とのつなぎ、コーディネーターとしての役割を果たしていく必要があるのではないか。政府の見解如何。
 (三) がれき処理に当たり、再利用可能なものは資源として活かすという、リサイクルの視点を持つことが、がれきを迅速に処理する上で非常に重要であり、仮置き場・廃棄場を確保する上でも有意義であると考えるが、政府の見解如何。
 (四) 今回津波により被害を受けた地域を復旧、復興し、人々が生活する空間を再建するために、がれきを土地を埋め立てる土台として活用するという方法もあるかと考えるが、政府の見解如何。
五 処理業者の確保について
 (一) 政府として、がれきを実際に処理する専門業者を、現場の各市町村が十分に確保できているか否か、現状を正確に把握しているか。
 (二) 例えば津波により陸上に上がっている漁船を解体するにしても、そのノウハウを有している被災地域の造船業者のうち、震災後も営業している業者はほんの一部でしかないと承知する。各市町村が主体となり、業者を選定するにしても、迅速な処理を進めるという観点から、政府としても、各市町村に専門業者を紹介する等、つなぎ役としての役割を果たすことが求められているのではないか。政府の見解如何。
 (三) 政府がつなぎ役として各市町村のがれき処理、解体の専門業者を紹介するにしても、可能な限り被災地における雇用を優先する、被災地の業者が処理、解体にあたれる機会を増やし、被災地における経済効果に十分な配慮をする等、被災地に経済的利益が波及する仕組みを作るべきであると考えるが、政府の見解如何。
六 福島第一原発周辺の放射性物質にさらされたがれきについて
 (一) 福島第一原発周辺の放射性物質にさらされているがれきは、廃棄物処理法を根拠とする通常の災害廃棄物として扱えず、また放射性廃棄物の扱いを定めてはいるものの、その対象は原子力事業者から出たもののみであり、原発外の廃棄物が汚染されたケースを想定していない原子炉等規制法の適用ともならず、処理にあたっての明確な法的根拠がないと承知するが、確認を求める。
 (二) 新聞報道によると、政府、特に経済産業省原子力安全・保安院と環境省が、本年五月九日より福島第一原発事故により放射線に汚染されたがれきにつき、その量や種類、放射線量等の測定を始めるとのことであるが、右の結果はいつ頃までに取りまとめられ、誰によりどのようにして公表される見通しでいるのか説明されたい。
 (三) 政府として、(二)の結果を公表した後、実際にどのように放射線に汚染されたがれきの処理を進める考えでいるのか。福島第一原発周辺のがれきは、原子力安全委員会による指針によれば、レベル3の極低レベル放射性固体廃棄物に該当すると考える。右は、専門技術を持つ放射性物質処理業者により処理されるべきものであると考えるが、この場合でも処理の主体はあくまで現地の自治体が第一義的に担い、処理作業もそれに係る費用についても、他のがれき処理の場合と同様、現地の自治体が担うこととなるのか。それとも、異なる措置を取るのか、政府の見解を説明されたい。
七 処理に係る費用について
 (一) 政府として、平成二十三年度第一次補正予算の中で、災害廃棄物処理に三千五百十九億円、廃棄物処理施設の復旧に百六十四億円、合計三千六百八十三億円をがれき処理に係る費用として計上しているが、今次の震災により発生した約二千四百九十万トンにも上るがれきの最終的な処理に係る費用は、合計でいくらになると考えているか。政府の見解如何。
 (二) 仙谷由人内閣官房副長官は五月八日、テレビ番組に出演した際、今次の震災により発生したがれきの処理について「思い切った特例措置を議論しており、ぜひ国直轄の方向でやりたい」との発言をしていると承知する。右は、政府として費用負担はもちろん、処理自体も国が一義的に担うという意味か。明確な説明を求める。

 右質問する。



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