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平成二十三年六月二十四日提出
質問第二七三号

いわゆる布川事件で容疑者とされ服役させられた人物の無罪が確定した件に対する政府の見解に関する再質問主意書

提出者  浅野貴博




いわゆる布川事件で容疑者とされ服役させられた人物の無罪が確定した件に対する政府の見解に関する再質問主意書


 一九六七年八月、茨城県利根町布川の男性が殺害された件につき、茨城県警は別件で逮捕していた櫻井昌司さんと杉山卓男さんを同事件の容疑者として再逮捕した。一九七〇年、水戸地方裁判所土浦支部により無期懲役の判決を下され、また七八年には最高裁判所により上告が棄却され、二人は刑に服することを余儀なくされたものの、二〇一〇年七月から再審公判が始まり、本年五月二十四日、同支部は、櫻井さん、杉山さんが犯人と証明する証拠は存在しないとして無罪判決を言い渡した。六月七日、水戸地方検察庁は上告を断念し、二人の無罪が確定した。右と「前回答弁書」(内閣衆質一七七第二三三号)を踏まえ、再質問する。

一 前回質問主意書で、今回、櫻井さん、杉山さんの無罪が確定したことに対する政府の見解、更に何の罪も犯していなかった二人が犯人とされ、四十年以上もの長きに渡り、自由を奪われ、基本的人権を著しく侵害される事態が生じた原因は何か、また当時の警察、検察の対応、特に取調べの方法等には具体的にどのような問題点があったのか等、布川事件に関する政府の総括について問うたところ、「前回答弁書」で政府は「御指摘の『布川事件』については、最高裁判所で無期懲役の判決が確定したものの、再審の判決において、櫻井氏及び杉山氏が犯人であることを推認させる間接証拠は存在せず、また、両氏の自白には信用性がなく、任意性にも疑問があるため、両氏が犯人であると証明するに足りる証拠は存在しないとして、強盗殺人につき無罪が言い渡されたものと承知している」と答弁しているが、一方で「お尋ねは、具体的事件の捜査手続及び刑事裁判手続における捜査機関の活動内容及び裁判所の判断に関わる事柄であるので、お答えを差し控える。」と、政府として布川事件の総括について答弁することは差し控える旨の答弁をしている。右答弁にある「具体的事件の捜査手続及び刑事裁判手続における捜査機関」とは、具体的にどの機関を指しているのか明らかにされたい。
二 三権分立の原則から言って、裁判所の判断について政府、内閣として答えることを差し控えるのは理解できるが、裁判所がその判断を下す根拠を提供した「具体的事件の捜査手続及び刑事裁判手続における捜査機関」には、まぎれもなく行政機関、つまり政府、内閣の一部に属するものも含まれている。その活動内容について、政府として一切の答弁を差し控える必要はないのではないのか。
三 布川事件は、現菅直人内閣の時に発生した事件ではないが、行政機関が誤った判断をし、四十年以上もの長きに渡り自由を奪い、日本国憲法の柱である基本的人権を著しく侵害してきたことに対し、やはり現内閣、政府は責任を負うべきであり、一で指摘した前回質問主意書における当方の質問に対し、一にある「前回答弁書」の答弁をすることは、杉山さん、櫻井さんに対しては勿論、我が国国民全体に対し、あまりに不誠実であると考える。「前回答弁書」に「両氏の自白には信用性がなく、任意性にも疑問があるため、両氏が犯人であると証明するに足りる証拠は存在しない」とあるにも関わらず、当初杉山さんと櫻井さんが犯人とされ、四十年以上もの長きに渡り自由を奪われる事態はなぜ生じてしまったのか、右に関し、当時の警察、検察にはどのような問題があったのか、政府としてどのような総括をしているのか、改めて質問する。
四 前回質問主意書で、当時、櫻井さん、杉山さんの取調べを担当した警察官、検察官のうち、現在も現職でいる者はいるか、警察庁、また検察庁として、櫻井さん、杉山さんに対し、今回の無罪確定を受け、謝罪をする考えはあるか、更に櫻井さん、杉山さんを取り調べた当時の警察官、検察官に対し、現役の者はもちろん、既に退職した者に対しても、二人に謝罪させる考えはあるかと問うたところ、「前回答弁書」では「お尋ねの櫻井氏及び杉山氏の取調べを担当した警察官及び検察官は、既に退職している。」との答弁がなされ、更にそれぞれ「警察庁としては、当時、所要の捜査が尽くされたものと認識しているが、再審の無罪判決を厳粛に受け止めている。」、「検察当局においては、御指摘の『布川事件』の捜査・公判活動は適法に行われたものと認識しつつ、再審の無罪判決を厳粛に受け止めているものと承知している。」との答弁がなされている。警察庁、検察庁ともに、それぞれ厳粛に受け止めている一方で、「警察庁としては、お尋ねの櫻井氏及び杉山氏の取調べを担当した警察官に対し、謝罪するよう求めることは考えていない」、「検察当局においては、お尋ねの櫻井氏及び杉山氏の取調べを担当した検察官に対し、謝罪するよう求めることは考えていないものと承知している。」との答弁もなされている。警察庁、そして検察庁として、既に退職はしているものの、杉山さんと櫻井さんの二人の基本的人権を奪う原因をつくった者に対し、謝罪を求める考えがないのはなぜか。
五 「前回答弁書」では、今回の布川事件に限らず、富山県氷見市の柳原浩さんが強姦などの容疑で富山県警に誤認逮捕され、二年あまり服役した後に無罪が確定した件や、二〇〇三年の鹿児島県議選において中山信一さんと志布志市の運動員ら十五人が公職選挙法違反容疑で逮捕され、強圧的な捜査等により自白を強要され、後に全員の無罪が確定した件、そして一九九〇年、栃木県足利市で当時四歳の女児が殺害されたいわゆる足利事件で容疑者とされ、無期懲役が確定し、服役中だった菅家利和さんが、女児の下着に付着していた体液のDNA型が菅家さんのものとは一致しないとの鑑定結果が出たことを受け、一昨年六月四日、千葉刑務所から釈放され、後に無罪が確定した件等、近年冤罪事件と言われる事件が多発していることに対する、政府の再発防止策について縷々触れられているが、再発防止を図る上で避けて通れない出発点が、警察庁、検察庁による謝罪であると考える。今回の布川事件についても、そもそも警察庁、検察庁として、四で触れたように、今回の無罪判決を厳粛に受け止めているのなら、組織として杉山さんと櫻井さんの二人に謝罪をすべきであると考えるが、検察庁、警察庁の見解をそれぞれ問う。

 右質問する。



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