質問本文情報
平成二十三年九月十四日提出質問第二五号
台風十二号被災地の復旧対策及び今後の防災対策等に関する質問主意書
提出者 高市早苗
台風十二号被災地の復旧対策及び今後の防災対策等に関する質問主意書
平成二十三年九月三日に高知県東部に上陸した台風十二号により、西日本から北日本にかけて記録的な大雨となり、とりわけ紀伊半島では、多数の人命が失われ、土地や家屋、社会資本に甚大な被害が発生した。
野田内閣には、迅速に被災者救済、被災地復旧支援、防災体制の整備に取り組むことを求める。
被災地である奈良県を故郷とする国会議員としては、視察してきた被災状況を踏まえて委員会審議の場で具体的に質したい点が多々あるのだが、民主党が強硬に決めた僅か四日間の国会会期の中では、その機会さえ得られない。
従って、次の事項について質問する。
奈良県の被災地域では、古い橋梁や道路は破損し、多くの集落が孤立した。電気、水道、電話、ケーブルテレビが同時に不通となり、通学に危険を伴うことから小中学校や高校も休校状態である。
しかしながら、自民党政権時代に整備に取り組んできた新しい道路、トンネル、橋梁が残ったことにより、かろうじて応急的復旧のための資材や食料等を搬送するルートが一部残されている。過疎が進む中にあっても、地元自治体が「命の道」の整備を求めてきたことの正当性を改めて痛感する光景であった。
また、和歌山県では、砂防ダムが崩落した土砂を食い止めたことによって、多くの人家が崩壊を免れている。まさに「コンクリートが人を救った」と言える状況である。
これまで民主党政権は、「コンクリートから人へ」を合い言葉に、道路やダムの建設を無駄な公共事業として切り捨ててきた。自民党政権時代の委員会審議においては、民主党所属国会議員が「B/C」という言葉を多用して、利用者数が少ない地方の道路整備を不要であると喧伝してきた。
台風十二号では、主に奈良県、和歌山県、三重県に於いて甚大な被害が発生したが、昨今は過去の想定を超える規模の集中豪雨や地震が多発しており、全国的に「大規模災害に強いインフラ整備」を推進する必要があると考える。
よって、次の質問をする。
@ 野田内閣においても「コンクリートから人へ」という方針は変更されないのか。仮に変更しないとすると、その理由を伺う。
A 道路整備の必要性を判断する基準として、利用人数をベースとした「B/C」を重視する方針を継続するのか。
B 国民の生命を守ることを重視するのであれば、人口が少ない地域であっても、高規格道路の整備、橋梁の改修、砂防・治水ダムの整備、河川改修、土砂崩れ対策の推進が必要だと考えるが、如何か。
二 激甚災害指定について
@ 台風十二号被害につき、激甚災害指定を行う予定はあるか。あるとすれば、指定時期の見通しを伺う。
A 激甚災害指定は、費用の積み上げ後に行うこととされているが、被災地の早急な復旧・復興を可能とするために、激甚災害指定の迅速化に向けた改善策を検討する用意はあるか。
三 復旧対策と予算措置について
台風十二号被害の拡大は、現在も進行中である。奈良県では、河道閉塞や土砂ダムが全域に多発していることから、再び豪雨に見舞われた場合には大きな災害が発生する可能性がある。また、被災者が当面の生活を送るためにも、瓦礫の撤去、物流を支える道路の仮復旧などが急がれる。
よって、次の質問をする。
@ 紀伊半島各地の河道閉塞箇所、土砂ダムについて、地点別に如何なる対策を講じる予定なのか。
A 台風十二号によって破損した紀伊半島各地の道路や橋梁、土砂崩れ発生地点の復旧について、地点別に如何なる対策を講じる予定なのか。
B 安全上の理由から被災地域の小中学校や高校に通学することが困難な児童・生徒の教育について、如何なる対策を講じる予定なのか。
C 台風十二号被害への緊急的な対策のために、平成二十三年度予算の予備費を活用する用意はあるか。
D 平成二十三年度第三次補正予算には、台風十二号被害対策費用につき、十分な金額を計上する用意はあるか。
E 平成二十四年度予算概算要求については、既に各府省からの提出は締め切られたと承知しているが、台風十二号被災者の生活再建や被災地復旧に要する費用も積み上げられているのか。関係府省ごとに、具体的な内容を伺う。
四 生活基盤の再建について
@ 奈良県の被災地では、吉野杉に代表される林業が主要産業であるが、林道や幹線道路の破損によって機能停止状態である。被災地の林業再建について、如何なる支援を行うのか。
A 奈良県、和歌山県、三重県では、道路の本格復旧まで、県外からの観光客が激減した状態が続くと思われる。被災地の観光関連産業に対して、如何なる支援を行うのか。
五 大規模災害対策の強化について
台風十二号によって、奈良県では、これまでの予想を超える災害のパターンを確認した。
まず、各所で深層崩壊が発生したことが大きな特徴である。そして、十津川村では、崩落した土砂に押し出された河川水が対岸にせり上がり、対岸の家屋を破壊した。また、五條市大塔町では、土砂崩落によって上流に河川水がせり上がり、家屋を破壊した。更には、土砂崩落による河道閉塞や土砂ダムが全域に多発した。
今後、他の都道府県でも同じパターンの災害が発生する可能性は否めず、全国民の安全のために、早急に新たな対策に着手していただきたいと願う。
よって、次の質問をする。
@ 深層崩壊、崩落土砂に押し上げられた河川水による対岸の破壊、土砂ダムなど、「大規模土砂災害のメカニズム」の研究に早急に着手する用意はあるか。
A 大規模土砂災害の「監視」、「警戒」について、改善するべきだと考えている点は何か。
B 大規模土砂災害の「監視」、「警戒」のシステム確立に向けて、具体的に予算措置を行う予定はあるか。仮にあるとしたら、その内容と規模を伺う。
C 奈良県では、避難した場所が被災し、死亡者や行方不明者が出るという惨事となった。前述したように予想を超えた河川水の動きが起きたためである。今後、全国的に「山や河川の形状に応じた適切な避難場所」の再検討が必要だと考えるが、内閣として如何なる取組みを行うのか。
D 奈良県では、間伐後に放置された木が、河川増水時に流木となって橋梁や家屋を破壊したと思われる地点が複数箇所あった。あるべき対策についての考えを伺う。
右質問する。