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平成二十三年十二月五日提出
質問第九五号

自衛隊が保有する通信衛星と無人機の導入に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




自衛隊が保有する通信衛星と無人機の導入に関する質問主意書


 自衛隊は、ミサイル防衛や海外での自衛隊の派兵活動等、様々な領域で人工衛星を使った衛星通信を活用している。一九八三年、自衛隊が硫黄島に駐留する際に宇宙開発事業団(当時)が打ち上げた通信衛星(CS−2)を利用できるかどうかが問題となったが、「公衆電気通信法(現在の電気通信事業法)により公衆電気通信役務が課せられており、その役務をあまねく無差別に提供することが法的義務として求められていたことから、自衛隊だけを逆差別せず、役務の提供をすることが妥当」という政府の解釈により、自衛隊による衛星通信の軍事利用が始まった。その後、一九八五年に海上自衛隊による米国の軍事通信衛星(フリートサット)の利用が問題となった際には、政府は「その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星については、自衛隊による利用が認められると考える」という解釈(いわゆる一般化理論)までも作り上げるに至った。
 衛星通信は周波数帯により様々な分類がされているが、自衛隊はそのうちXバンド(X帯)と呼ばれる周波数帯の衛星通信を基幹通信として位置づけている。現在、自衛隊のXバンドの衛星通信は民間の衛星通信会社「スカパーJSAT」が保有する商用衛星「スーパーバード」三機に搭載したXバンドの中継器を借り上げる形で運用されている。この三機の商用衛星のうち二機(B2号機とD号機)が二〇一五年度中に設計寿命を迎えるという理由から、防衛省は「次期Xバンド衛星通信中継機能等の整備・運営事業」という名称で、後継のXバンド通信衛星を利用した自衛隊による宇宙の軍事利用を進めている。後継二機の衛星製造、打ち上げ、管制等はPFI事業により民間企業(特定目的会社)が担うが、衛星の保有者はこれまでの衛星通信企業ではなく、国(防衛省)になることが明らかとなっている。
 これまでも自衛隊は、民間企業が所有する衛星を使って衛星通信の用途をなし崩し的に拡大してきたが、自衛隊自らが主体となって軍事通信衛星を保有し利用することは初めてのことである。これは平和主義の理念を掲げた憲法を持つ我が国としてきわめて深刻な問題である。
 よって、次のとおり質問する。なお、すべて西暦で表記されたい。

(一) 衛星通信で使われる周波数帯の区分と周波数を示されたい。そのうち、Xバンドの特徴と利点、欠点は何か。
(二) これまで我が国が保有してきた通信衛星や放送衛星(技術試験衛星を含む)すべてについて、名称、主たる製造者(企業名)と国名、運用者・保有者の名称と国名、周波数帯と周波数、運用開始日、打ち上げに使ったロケット名と国名、打ち上げ日を示されたい。また、このうち自衛隊が通信に利用(実験を含む)した衛星の名称を、Xバンドとそれ以外の周波数帯に分け示されたい。なお、箇条書きで分かりやすく表されたい。
(三) 自衛隊がXバンドの衛星通信を使い始めたのはいつからで、どのような理由からか。また、自衛隊がXバンドの衛星通信を基幹通信と位置づけている理由は何か。
(四) 我が国の民間通信衛星でXバンドの周波数帯を使用しているものはあるか。ないとすればその理由は何か。
(五) 自衛隊が利用しているXバンド通信衛星、後継のXバンド通信衛星は「その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星」の範疇に入るのか。その根拠とともに示されたい。
(六) 現在、自衛隊はXバンドの衛星通信を、スカパーJSAT社保有の「スーパーバード」に搭載したXバンド中継器を「Xバンド対応通信衛星の中継器の借上げ」という形態で使用している。スーパーバード搭載のXバンド中継器は「MCC社」が所有するもので、現在、防衛省は同社との間で契約を結びXバンドの衛星通信を行っている。防衛省が同社の設立以来これまでに支払ってきた年度別の金額(円単位)はいくらで、合計いくらになるか。また、同社の年度別の総売上額はいくらで、そのうち防衛省との間の契約額の割合は何%を占めるか。
(七) MCC社の設立について、二〇〇一年五月二十三日の防衛庁「離職者就職審査分科会」議事録によると、同社は「移動体通信衛星を利用するにあたり、その役務を防衛庁に提供するために、三菱商事株式会社、三菱電機株式会社、宇宙通信株式会社、日本電気株式会社及び株式会社東芝が出資して設立した会社でございます。通信衛星役務を防衛庁に提供するために作った会社です。」「海上自衛隊の出來というものが顧問で就職し、平成十一年六月に取締役になりました。」という防衛庁(当時)側からの説明がある。
 MCC社のように、これまで自衛隊の活動を主目的として設立された法人が他にあれば明らかにされたい。また、MCC社と、同社以外に自衛隊の活動を主目的として設立された法人各々について、設立以来現在まで、前記の海上自衛隊の出來氏を含め、防衛省退職者はのべ何人が在籍していたか。あわせて、その氏名、退職時の官職もしくは職位、階級を示されたい。
(八) 自衛隊が現在Xバンド通信に使用している通信衛星(スーパーバード)の静止軌道位置の経度は、それぞれ何度か。また、その通信可能領域に含まれる国名あるいは地域名をすべて明らかにされたい。
(九) Xバンドの衛星通信を、現在の借上方式からPFI事業に変更する理由は何か。具体的かつ詳細に示されたい。また、PFI事業にした場合の総事業費(千円単位)はいくらで、契約期間は何年を見込んでいるのか。
(十) 防衛省は、Xバンド衛星通信のために、MCC社に対し二〇一〇年度実績で年間に約六十一億九千万円を支払っている。PFI事業にすることによって、コストを低減することができるのか。低減できるとすれば、その金額を算出根拠とともに示されたい。また、仮に詳細なコスト分析はこれから算出するのであれば、コストが低減できない分析結果が出た場合には、PFI事業によるXバンド通信衛星の運用は行わないことになるのか。その際はどういう形態で運用するのか明らかにされたい。
(十一) 本年二月に当方が防衛省に求めた説明資料の中では、後継の通信衛星二機の所有権についてはPFI事業を運営する特別目的会社に帰属すると記述されている。その後、十一月二日に防衛省が公表した「Xバンド衛星中継機能等の整備・運営事業」実施方針において、「事業者は、本事業衛星を静止軌道位置で安定させ、所要の通信機能が発揮されることを確認した上で、本事業衛星を国に引き渡す」と、後継の通信衛星は国、すなわち防衛省−自衛隊が保有することを明らかにしている。後継通信衛星の保有者について、PFI事業者から防衛省に変更したのはいつで、また、保有者を防衛省にすることにした詳細な理由を明らかにされたい。
(十二) PFI事業者が調達することになる通信衛星は、いわゆる日米衛星調達合意に基づき国際競争入札の対象となるのか。自衛隊が活用する衛星なので対象外なのか。
(十三) 自衛隊が保有することになる通信衛星は、自衛隊の装備品となるのか。ならないとすれば、その理由は何か。
(十四) 艦船、航空機、潜水艦等の移動体のXバンド衛星通信の通信機器整備にこれまで要した経費(千円単位)はいくらで、今後必要とする経費(同)はいくらと見込んでいるか。
(十五) Xバンド衛星通信のための国内外の地上局(航空地球局、海岸地球局等)、管制局の各々の正式な名称、設置場所(正確な地名)、設置日を明らかにされたい。また、各々について設置に要した経費(千円単位)はいくらか。今後整備するのであれば、設置場所、設置予定時期、必要と見込まれる経費(同)を明らかにされたい。
(十六) 現在、自衛隊がXバンド衛星通信に利用している三機のスーパーバードのうちC2号機も将来的には設計寿命を迎え機能を停止するが、その時期はいつになっているか。また、設計寿命を迎えるに当たって、後継機も防衛省が保有しPFI事業で運用することを検討しているのか。あるいは、その可能性はないのか。
(十七) 海上自衛隊の「Xバンド衛星中継器等」の仕様書に、「この装置の打ち上げロケットは、H−UA又はAriane5相当を想定するものとする。」とある。我が国のロケット以外に外国のロケットを打ち上げに使う選択肢が仕様書に書かれているが、「国内産業の振興」を定めた宇宙基本法との整合性をどのようにして図っているのか。
(十八) Xバンド通信衛星の目的は、防衛省の公表資料中に「国際平和協力活動等における現地状況の迅速な把握と的確な指揮命令」「弾道ミサイル防衛や警戒監視、各種事態における迅速な情報伝達と的確な指揮命令」「抗たん性に優れた高速大容量通信を可能とし、通信システムとしての共通化を図り、全自衛隊として情報共有し、統合幕僚監部による一元化した通信統制の下、統合運用を実現」と記述されている。Xバンド通信衛星を使った自衛隊の宇宙の軍事利用の目的は、国内外での米国との軍事活動における情報の迅速かつ的確な伝達である。現在のXバンド通信衛星と次期Xバンド通信衛星は、米軍との情報共有ができるように設計され、米軍と共通運用されるようになっているのか。あるいは米軍には受信できない設計なのか。
(十九) 防衛省の「宇宙開発利用に関する基本方針」における「宇宙開発利用の推進に関する施策」の一つに、「衛星通信機能を有する衛星」が掲げられ、「今後の衛星通信機能の向上の方法(汎用商用衛星及び防衛専用衛星の利用、他省庁または民間との相乗り、民間事業者の能力の活用)については、通信所要(覆域、容量、ネットワークの統合化、抗たん性等)を明らかにしたうえで、利用の安定性、運用形態(統合運用、国際平和協力活動)、ライフサイクルコストを含めた費用対効果等をも踏まえ、最適な方法を検討する。また、今後の通信所要を検討した上で、通信の大容量化への対応について検討を進める。」と記述されている。この「衛星通信機能を有する衛星」とは、後継のXバンド通信衛星と理解してよいか。
(二十) 「宇宙開発利用に関する基本方針」は、他にも「電波情報収集機能を有する衛星」、「早期警戒機能を有する衛星」をあげている。これらの衛星の導入に関する現在の検討状況を明らかにされたい。また、これらの衛星は「その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星」の範疇に入るのか。
(二十一) 二〇一〇年一月、防衛省は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した超高速インターネット衛星「きずな」を使って、硫黄島での無人機の飛行実験の動画を入間基地等にリアルタイムで伝送した。その後の自衛隊による「きずな」、準天頂衛星「みちびき」等の人工衛星を使った動画伝送実験や衛星測位実験の取り組みとその成果について明らかにされたい。
(二十二) 東京電力・福島第一原子力発電所の事故発生直後、米国は無人機の一つ「グローバルホーク」を日本に持ち込み、事故状況に関する情報収集を行った。グローバルホークの持ち込みに関し、日米間でどのような手続きを経たのか。また、グローバルホークの管制はどこで行ったのか、施設名を明らかにされたい。米国内の基地か、在日米軍基地か。
(二十三) 防衛省は原発事故を踏まえ、日米のメーカーから無人機の導入について検討しているという。また、先島諸島とその周辺の監視のためにも無人機の導入を検討しているとも聞く。これらの詳細について明らかにされたい。また、無人機の研究開発や調査に関する今後の取り組みについて、事項ごとに事業費、予算額(概算要求含む)を示されたい。

 右質問する。



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