衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十五年二月一日提出
質問第九号

仁徳天皇百舌鳥耳原中陵内の宮内庁による「開発工事」の即時中止を求める質問主意書

提出者  西村眞悟




仁徳天皇百舌鳥耳原中陵内の宮内庁による「開発工事」の即時中止を求める質問主意書


(一) 大阪府堺市堺区大仙町に所在する第十六代天皇である仁徳天皇百舌鳥耳原中陵は、中央の墳丘を三重の周濠が囲む日本最大の前方後円墳で、陵墓地の外周は約三千メートル、東西の長さは六百五十六メートル南北の長さは七百九十三メートルであり、樹木が生い茂り広大な森となっており、陵墓地外の周辺に数基の陪塚がある。
 その広大な陵墓地は、南向き正面の幅二十メートルほどの参拝域以外は総て黒いスチール製の柵で囲まれていて、柵の各所には次のような標識が付けられている。
 「陵墓地につき管理者の許可なく立ち入ることを禁止します 宮内庁古市陵墓監区事務所」、「立入禁止 宮内庁」および「魚釣禁止 宮内庁」
 南側正面の参拝域は陵墓域内に整えられており、中央の墳丘に向かって外から二つの周濠を渡り一番奥の周濠手前まで白い砂利が敷かれそこに鳥居が立てられているが、一番外の周濠を渡った第二の周濠手前には石の柵があり一般の参拝者が入れるのはここまでで、仁徳天皇御陵を訪れた人々はこの柵の手前で参拝もしくは見学をする。
 この第二の周濠前の柵の手前東側の、第一の周濠と第二の周濠の間の土地(堤)には幅約五メートル奥行き約三メートルほどの木造平屋建ての事務所が建てられており「宮内庁書陵部古市監区百舌鳥部事務所」なる木製の札が掲げられている(以下、宮内庁事務所という)。そして、墳丘に向かって右側に大きな木版が掲げられ次の事項が墨書されている。
 「仁徳天皇百舌鳥耳原中陵
  一、みだりに区域内に立ち入らぬこと
  一、魚鳥等を取らぬこと
  一、竹木等を切らぬこと
  宮内庁」
  以上が、仁徳天皇陵の外観であるが、次に、現在、この仁徳天皇陵内で、宮内庁によって行われつつある「工事」について説明する。
(二) 現在、宮内庁事務所正面左の壁には四十センチ四方ほどの、「開発行為等の計画の概要」と題された次の事項が記載された紙が貼られている。
 「開発区域の所在地 堺市堺区大仙町1079−1番地
  開発区域の面積 3132・19平方メートル
  開発の目的 事務所 一戸一階
  開発者の氏名 京都市上京区京都御苑3 宮内庁京都事務所
  設計者     同上
  工事期間 平成24年11月12日から
  平成25年3月22日まで
  平成24年10月23日設置」
  そして、平成二十四年十一月頃から、宮内庁事務所東側手前に見学者向けに大きなブリキ製の看板が設置され、大きく「ご迷惑をおかけします 事務所改築工事を行っています」と書かれ、以下次のような記載が為されている。
 「平成25年3月22日まで 時間帯8:30〜17:30
  仁徳天皇陵百舌鳥部事務所改築工事
  発注者 宮内庁京都事務所
  施工者 株式会社 芝松組」
  そこで、現実に何が行われているかを次に説明する。
  まず平成二十四年後半より、参拝域の左右の第一の周濠と第二の周濠の間の立ち入り禁止の陵墓地にある樹木が伐採された。
  そして現在、西側の伐採あとには長さ十メートルほどのプレハブ住宅(以下、プレハブという)が建てられ建築資材やバイクが置かれ、東側の宮内庁事務所の奧は、周濠に沿って長さ二十メートル、幅十メートルほどの白い鉄板製フェンスで覆われて内部が見えなくされており、フェンスの手前には軽トラックが置かれている。
  平成二十五年一月四日午後四時頃、当職がそのフェンスの隙間から中を見ると、既にそこの地面は掘り起こされて建造物を設置する為のコンクリートの基礎が流し込まれて、そこに鉄筋が埋め込まれている。
(三) 以上を総合すれば、宮内庁は対外的には「事務所改築工事」と表示しながら、実態は、自ら「開発者」となって墳墓地内の3132・19平方メートル(約千坪)を「開発区域」として、既に樹木を伐採してプレハブを設置しさらに陵墓地を掘り起こして宮内庁事務所東側の白いフェンスで囲んだ場所に新たに何らかの鉄筋の基礎をもつ建造物を新築しようとしている。
 つまりこの実態は宅地造成工事であり、宮内庁はこともあろうに陵墓地内を宅地造成して事務所を新築しようとしているのである(以下、新築しつつある事務所という)。
 したがって右の行為は、天皇陵の歴史的形態を維持し管理することを職務とする宮内庁による仁徳天皇百舌鳥耳原中陵の破壊である。
 しかも、仁徳天皇百舌鳥耳原中陵は、日本最大の前方後円墳として全国の小中学校の歴史教科書に写真入りで紹介されている最も有名な見学者や参拝者が絶えない前方後円墳なのである。
 よって、同御陵を宮内庁による破壊から守るために緊急の必要性があるので、左の通り質問する。
 なお、宮内庁の陵墓管理要領第二条(以下、管理要領という)は、左の通りである。
 第二条 陵墓職員は、陵墓が皇室の祖先を葬ってその静安を期し、尊崇の対象として追慕、礼拝が行われるところであり、かつ、重要な文化的所産であることを深く認識し、誠心誠意その職務の遂行に努めなければならない。
 二 陵墓職員は、常に次のことに留意し、研究を怠ってはならない。
  (一)陵墓の尊厳及び良好な環境の保持
  (二)土地、施設その他の財産の監守及び保全
  (三)巡回の方法
  (四)災害及び緊急事態の対策
  (五)陵墓の沿革、葬られた方の御事蹟その他必要と認める事項
 三 陵墓職員は、常に厳正な態度をとるとともに、沈着冷静に行動しなければならない。
 四 陵墓職員は、参拝者に対して常に懇切丁寧な態度で接しなければならない。
 五 陵墓職員は、陵墓の周辺の居住者等に対して常に誠実な態度で接し、また関係官公署その他と緊密な連けいを保つように努めなければならない。
一 国家は国家の個性を端的に示す歴史的存在もしくは景観は断固として守らねばならないのであるが、特に万世一系の天皇を戴く我が国における歴代天皇の御陵は、総て百二十五代の天皇である今上陛下のご先祖の墳墓であり、それは我が国の現在に至る歴史的なあり方すなわち国體を端的に示す尊い陵墓であるから、その歴史的姿は国家として断固として守らねばならないものと思料するのであるが、天皇を戴く国家である我が国における歴代天皇陵の維持管理の原則について、如何に考えておるのか答弁されたし。
二 宮内庁は、仁徳天皇陵の外周にスチール製の柵を設置して陵墓地内に許可なく人が立ち入ることを禁止しているが、これは管理要領に基づく措置か。
 また、その措置によって守り維持しようとするものは、管理要領に言う「陵墓の尊厳及び良好な環境の保持」と思われるが如何に思うか。
三 宮内庁事務所正面に掲げられている「開発行為等の計画の概要」に記載されている「開発行為」とは、陵墓地内で行われるのか、陵墓地外で行われるのか。
四 宮内庁事務所正面に掲げられている「開発行為等の計画の概要」に記載されている「開発区域の面積 3132・19平方メートル」とは約千坪の広大な面積であるが、それは具体的に何処か、宮内庁事務所玄関を起点として方位、距離等を明確に回答されたい。
五 「プレハブ」は陵墓地内に設置されているのか。陵墓地外に設置されているのか。
六 「新築しつつある事務所」は、陵墓地内に新築しつつあるのか。陵墓地外に新築しつつあるのか。
七 「プレハブ」内にトイレ(便所)が設置されているのか。
八 「新築しつつある事務所」にトイレを設置するのか。
九 「新築しつつある事務所」には事務室、湯沸室及び車庫・倉庫が設置されるが、その通りか。
 湯沸室における排水は陵墓地内に排出するのか。
 また、車庫とはどこの所有の如何なる用途の車を入れるためのものか。
 さらに、その車を何処から車庫に出入りさせるのか。
十 そもそも陵墓地内の礼拝所に隣接した西側にプレハブを設置して建設資材を運び入れ作業員のバイクを駐車させ、礼拝所に隣接した東側の陵墓地を掘り起こして車庫付の事務所を新築することは、管理要領にいう「静安を期し、尊崇の対象として追慕、礼拝が行われるところ」としての仁徳天皇百舌鳥耳原中陵の「尊厳」と「良好な環境」を宮内庁自ら疵付けていることとなると、思わないのか。
十一 何時の頃からか、礼拝所東側に宮内庁事務所とその東側に小屋が設置されていたのであるが、そもそも、そこは礼拝所なのであるから、その宮内庁事務所等が老朽化したならばそれを取り壊して陵墓地を復元し、新しい事務所は陵墓地外に設置することとすることが管理要領の趣旨に即して陵墓地の「尊厳」と「良好な環境」を守るために存在する宮内庁の責務であるが、如何に考えるか。
十二 宮内庁は、自ら管理する陵墓を、自分たちの自由にできる領地だと錯覚しているのではないか。
 また、宮内庁は、何時の頃からか陵墓地内に事務所等を設置していたので、その事務所敷地付近一帯の陵墓地即ち礼拝所一帯の宮内庁が「開発区域」と名付けた3132・19平方メートルは、宮内庁の自由に「開発」できる既得権益地と錯覚しているのか。
 そういう不埒な錯覚がなければ、陵墓地内にプレハブを作り陵墓地を掘り起こしてコンクリートを流し込み、そこに車庫付の事務所を設置するなど到底できないと思うのであるが、それを当然できるものと考えているのか。
十三 仁徳天皇百舌鳥耳原中陵の昔からの歴史的存在と景観を維持し管理する責務のある宮内庁は、既に説明したとおり、見学者や参拝者には「事務所改築工事」と表示しながら、実態は陵墓域内の3132・19平方メートルを「開発区域」とする事務所の新築を含む「開発工事」を実施してきたのであるが、宮内庁はその本来の職務に立ち戻るならば、直ちに当該工事を中止して、樹木を伐採し土を掘り起こしてコンクリートを流し込んだ陵墓地内を元の形状に復元するべきであると確信するが、工事継続か工事中止か、何れか答弁されたし。
十四 仁徳天皇陵南側正面の外に陵墓地に隣接して宮内庁所管の約二百坪ほどの駐車場があるが、そこにある宮内庁所管の土地の面積を回答されたい。
十五 仁徳天皇陵を市域に持つ堺市は、仁徳天皇陵を含む百舌鳥古墳群の世界遺産登録をめざし仁徳天皇陵南側一帯に数基の陪塚が点在する広大な大仙公園を設置し、仁徳天皇陵の景観と環境保持に熱心であるが、宮内庁は管理要領にある通り「関係官公署その他と緊密な連携を保つように努めなければならない」のであるから、宮内庁は、堺市と協議して、陵墓地外に有する右のような所管の土地を利用して事務所をそこに設置し、または、大仙公園内に事務所用地を求めて事務所を建設するならば、車が自由に出入りできる車庫も応接室も便所もある仁徳天皇陵だけでなく広大な百舌鳥古墳群全体の陵墓管理のために、また、その業務に従事する宮内庁職員のために、機能的で快適な管理事務所を建設することができる。
 何故今まで、この陵墓地外に宮内庁事務所を設置しようとしなかったのか、その理由を回答されたい。
 さらに、今からでも遅くはないのであるから、この陵墓地の外に宮内庁事務所を設置するために、堺市との「緊密な連携を保ち」、同市とそのための協議を始めるつもりはあるのかないのか、回答されたい。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.