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平成二十五年四月十七日提出
質問第五三号

国を被告とする自衛官人権裁判等に関する質問主意書

提出者  照屋寛徳




国を被告とする自衛官人権裁判等に関する質問主意書


 私は、現下の自衛隊は、その装備実態等に照らし、憲法違反の存在だと考えるものである。一方で、自衛官の基本的人権や個人としての尊厳は、最大限尊重されるべきだと考えている。
 去る三月二十九日、札幌地方裁判所において、札幌真駒内基地・徒手格闘訓練死国賠訴訟(札幌地方裁判所平成二十二年(ワ)第2254号損害賠償請求事件。以下、「命の雫」裁判という)の判決が言い渡され、被告国に対して約六,五〇〇万円の支払いが命じられた。当該徒手格闘訓練で死亡した自衛官は、沖縄出身の島袋英吉さん(当時二十歳)、原告はそのご両親である。「命の雫」裁判は、被告国が控訴することなく確定した。
 「命の雫」裁判のように、自衛隊内における上官や同僚らによる自衛官に対するいじめ、パワハラ、セクハラ等を原因とし、遺族等が国を被告として提起した裁判、いわゆる「自衛官人権裁判」は多数に上り、現に係属中の事件も相当数あると言われている。
 以下、質問する。

一 「命の雫」裁判など、自衛隊内における上官や同僚らによる自衛官に対するいじめ、パワハラ、セクハラ等を原因とし、当該自衛官が自殺に追い込まれた、あるいは身体的負傷、精神疾患などの被害を受けたとして国を被告とした裁判、または、海外派遣中の自衛官が職務中に巻き込まれた事件・事故等を理由に国を被告とした裁判で、判決が確定した事件、現在係属中の事件はそれぞれ何件か、事件名、提訴年月日、提訴の理由、訴訟物の価額、原告の数及び原告の当該自衛官との間柄等を明らかにしたうえで、係る事件数に対する政府の見解を示されたい。
 なお、確定判決した事件については確定年月日、判決要旨を、係属中の事件については当該裁判所名、裁判の経過を明らかにされたい。
二 「命の雫」裁判における証拠調べの過程で明らかになった、陸上幕僚監部が昭和五十八年九月に作成した陸自教範「格闘」には、「徒手格闘は、当身技、投げ技、関節技及び絞め技を総合的に駆使し、旺盛な闘志をもって、敵を殺傷し、又は捕獲する戦闘手段である」とある。
 右陸自教範「格闘」における「敵を殺傷し」とは、憲法や自衛隊法の精神に基づく専守防衛の概念に反するものではないか。それとも、正当防衛に限って行使を許されるものなのか、自衛隊が徒手格闘を必要とする理由を明らかにしたうえで、政府の見解を示されたい。
三 「命の雫」裁判が確定したことを受け、去る四月十五日に君塚栄治陸上幕僚長が原告遺族宅を訪問し、謝罪した際、原告遺族から徒手格闘訓練の廃止を求められている。同様に、去る四月四日、「命の雫」裁判原告団も左藤章防衛大臣政務官との面談の席上、徒手格闘訓練の廃止を要請している。
 君塚陸上幕僚長は、四月十五日の遺族との面談後、記者団に対し、徒手格闘訓練については「(判決を)深刻に受け止め、改善している」(平成二十五年四月十六日付「沖縄タイムス」)と語ったようだが、自衛隊はいかなる改善策を講じたか具体的に示したえうえで、再発防止の実効性に対する政府の見解を明らかにされたい。
四 自衛隊において徒手格闘訓練が始まったのはいつからか、陸上、海上、航空自衛隊の別に同訓練の始期、目的、内容を明らかにされたい。
 また、平成二十年より新たな内容の格闘術(以下、新格闘徒手技術という)訓練に変更されたようだが、同訓練の内容、訓練が実施されている部隊を明らかにしたうえで、変更に至った経緯、目的を示されたい。
五 徒手格闘訓練及び新格闘徒手技術訓練で自衛官が負傷(死亡を含む)した事案について、それぞれ発生日時、負傷内容、原因等を陸上、海上、航空自衛隊の別に明らかにしたうえで、当該不祥事案の発生件数と係る訓練の連関性に対する政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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