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平成二十五年五月十五日提出
質問第七三号

医薬品のインターネット販売に関する質問主意書

提出者  浅尾慶一郎




医薬品のインターネット販売に関する質問主意書


 安倍政権の経済政策、いわゆるアベノミクスの肝は三本目の矢の成長戦略である。成熟社会における経済成長には新たな産業の興隆が必須であり、それを起因するのは規制改革である。その観点から注目すべき最高裁判決が本年一月に下った。
 最高裁判所は、平成二十五年一月十一日、医薬品のインターネット販売を禁止する省令は、「各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法(平成十八年改正法をいう)の趣旨に適合するものではなく、新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべき」として、一般用医薬品のインターネット販売を行う事業者の第一類・第二類医薬品の郵便等販売を行う権利を確認した(以下「最高裁判決」と記述する)。これをうけて厚生労働省では、本年二月十四日より、「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」(以下単に「新検討会」と記述する)が行われているところであるが、医薬品のインターネット販売規制に関する政府としての認識について次の事項について質問する。なお、ここでの「医薬品のインターネット販売」とは、薬局としての許可又は店舗販売業の許可を取得している者が薬局又は店舗における販売に併せてインターネットという手段を用いて行う販売を指すものとし、以下単に「ネット販売」と記述する。

【内閣法制局による新薬事法の審査及び薬事法施行規則について】
一 内閣法制局による新薬事法改正原案の審査承認について、次の通り政府(内閣法制局)に質問する。
 1 平成十八年審査当時、厚生労働省から内閣法制局に対して、ネット販売は新薬事法の委任に基づき制定される新薬事法施行規則によって禁止される趣旨であるという明確な説明がなされ、内閣法制局はそのように理解をしていたか。
 2 禁止される趣旨であるとの明確な説明ないし理解があったとすれば、その法的根拠はどのように説明されたか。どの条文に基づくものなのか、条文を例示せよ。
 3 平成十八年審査当時、ネット販売に起因する副作用データは示されていなかったが、それでも、厚生労働省及び内閣法制局は、ネット販売を禁止することは合憲と考えていたか。そのように考えていたとすれば、ネット販売の禁止に立法事実(その合憲性を支える必要性と合理性を裏付ける具体的な事実)は不要と考えていたということか。
【医療用医薬品のネット販売禁止の根拠について】
二 処方せん医薬品を含む医療用医薬品のネット販売規制について、次の通り政府(内閣法制局)に質問する。
 1 最高裁判決は、「一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品について」、「郵便等販売をしてはならない(百四十二条、十五条の四第一項一号)ものとした」規定について判断したものであるが、上記に関連して、薬事法施行規則第十五条の四第一項第一号は、処方せん医薬品を含む医療用医薬品(薬事法施行規則第四十二条第一項第一号)の郵便等販売をも禁止しているか。
 2 禁止しているとする場合、医療用医薬品のネット販売の禁止を厚生労働省令に委任する薬事法上の根拠規定は何か。かかる規定を具体的にどのように読んでいるか。またどのような立法事実に基づき禁止されたのか。
 3 この点について、平成十八年審査承認当時、厚生労働省は内閣法制局に対していかなる説明資料を提出し具体的にいかなる説明をしていたか。
【ネット販売禁止の憲法上の根拠と立法事実について】
三 最高裁判決が「旧薬事法の下では違法とされていなかった郵便等販売に対する新たな規制は、郵便等販売をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らか」であり、また「薬事法が医薬品の製造、販売等について各種の規制を設けているのは、医薬品が国民の生命及び健康を保持する上での必需品であることから、医薬品の安全性を確保し、不良医薬品による国民の生命、健康に対する侵害を防止するためである(最高裁平成元年(オ)第一二六〇号同七年六月二十三日第二小法廷判決・民集四十九巻六号千六百頁参照)。」とする見解を示した。この最高裁判決の見解と薬事法違憲判決(最大判昭和五十年四月三十日民集二十九巻四号五百七十二頁)及び憲法の一般的な理論に照らして、薬局又は店舗による医薬品のネット販売を禁止するためには、@ネット販売を禁止するに足りる立法事実、Aネット販売に起因する副作用報告が対面販売に起因する副作用報告と比較して有意な差があることを示す実証データの存在、及びB代替的な規制手段の検討が必要と考えるが、政府の見解如何。
四 ネット販売は危険であるから禁止すべきと考える次の見解は、薬局又は店舗によるネット販売を禁止するに足りる必要性と合理性を支える事実に基づくものといえるか。いえるとする場合のその論拠如何。また、対面販売であればこれらのおそれはないと考えるのか。ないと考えるとする場合のその論拠如何。政府に質問する。
 1 「ネット販売を認めると、薬局又は店舗により販売されるのにもかかわらず、偽薬がより出回るようになる」おそれがあるとの見解。
 2 「ネット販売を認めると、ネット販売は薬局又は店舗により行われるのにもかかわらず、違法業者・悪質業者による医薬品販売が増加する」おそれがあるとの見解。
 3 「ネット販売を認めると廉価乱売が生じて、販売業者の元では医薬品の内容を左右できないにもかかわらず、医薬品の品質が低下する」おそれがあるとの見解。
 4 (1から3の結果も含め)「ネット販売を認めると副作用被害が拡大する」おそれがあるとの見解。
【副作用報告について】
五 ネット販売を禁止する場合に必要とされる副作用報告の実証データにつき、次の通り質問する。
 1 平成二十一年の新薬事法施行までに、ネット販売に起因する副作用報告は示されていなかったが、その後、ネット販売に起因するものであって、かつ対面販売であれば防止することができたといえる副作用報告はあったか。その他医薬品のネット販売を禁止すべき新たな具体的事実が発生したか。生じたとする場合、その事実につき根拠とともに具体的に説明されたい。
 2 逆に、対面販売にも拘わらず発生した副作用についてはどのように調査しているか。その調査手法・内容・結果を明らかにされたい。
【使用者又は購入者に対して情報提供しない対面販売とネット販売禁止との関連について】
六 一般用医薬品の対面販売を定めた平成二十一年六月から現在までの新薬事法施行規則のもとでも、次のように使用者に対して対面で情報提供されることなく医薬品が販売される場面が現に存在するが、これらの場面に関して政府に次の通り質問する。
 1 現行制度上、家族などの使用者以外が医薬品を購入する代理購入が認められている。この代理購入は、使用者の状態を的確に把握することができず、かつ使用者に情報提供が十分に行き渡らないため副作用を生じやすいといえるか。副作用を生じやすいと考える場合、どのようにして安全を確保しているのか説明されたい。
 2 現行制度上、配置販売において一般用医薬品を最初に配置する際には薬剤師又は登録販売者による情報提供が必要であるが、二回目以降の補充の際は、薬剤師等の専門家による間接的な管理指導さえあれば、無資格の者でも配置先に単独で第一類医薬品を含む一般用医薬品を補充できる(平成二十一年五月八日付け薬食発第0508003号の厚生労働省医薬食品局長施行通知)。この配置販売における無資格者による補充は、副作用を生じやすいことはないか。そうではないと考える場合、なぜ副作用が生じないのか説明されたい。
七 現行法上、第一類医薬品については購入者が説明を要しない旨の意思の表明をした場合、薬剤師による情報提供義務は免除される(新薬事法第三十六条の六第一項及び第四項)。情報提供義務の免除によって使用者の副作用リスクが高まると認識しているか。高まらないと考える場合、どのように安全を確保できるのか説明されたい。
八 前記六及び七の通り、現行制度上、現実に使用する者に対する対面の情報提供をせずに医薬品を販売することを許容しているにもかかわらず、当該医薬品のネット販売が禁止できるとするのであれば、その具体的根拠を明らかにされたい。
【テレビ電話による情報提供の義務付けについて】
九 新検討会においては、第一類医薬品のネット販売についてテレビ電話を用いた情報提供の義務付けが検討されているようである。
 1 テレビ電話を用いた情報提供をしなければ副作用リスクの防止・低減ができないとする合理的な理由を教示されたい。
 2 現在想定している「テレビ電話」の定義及び具体的条件(精細等)を教示されたい。テレビ電話はどの程度普及しているか。テレビ電話を利用できない者にとって、ネット販売という有用な医薬品の入手手段が失われることをどう考えるのか。
十 厚生労働省は、第七回新検討会の資料1「コミュニケーション手段に求められる機能等について」において、第一類医薬品に関して「やり取りの同時性の必要性」を挙げている。ネット販売は、注文してから配送され実際に使用者の手元に届くまで一定の時間を要する形態であることが前提となっている。あらかじめ使用上の注意に関する情報等をウェブ上で分かりやすく示すことができ、メール、電話等を活用してコミュニケーションは取ることができるし、必要な情報を入力させるなどの方法により購入者側の状態を把握することが可能である。また、それらの問合せ内容等や購買履歴等を活用して専門家が発送してよいかどうかを判断する等により専門家が介在した販売が行われることになる。したがって、購入者側が情報提供を求めた場合にその対応に時間を要すること自体が安全面で即問題になるとは考えないが、これに関して以下質問する。
 1 この資料における「やり取りの同時性」の意味が判然としないが、何と比較してどの程度同時であることを意味しているか。
 2 購入者側が情報提供を求めた場合にその対応に時間を要すること自体と、国民の安全性の確保を担保できないこととどのような因果関係があるのか。
 3 医薬品販売にあたり、必ず購入者と同時にやり取りをしなければならないと考えるか。やり取りの同時性を必須と考えるのであればその理由如何。
 4 購入者と使用者が異なる場合には、いかなる手段であってもやり取りの同時性を担保することは不可能と思われるが如何か。
十一 第七回新検討会の資料2「適正使用のために収集すべき主な使用者情報について」によれば、第一類医薬品については、情報を最大限に把握しなければならないとして、@使用者の基本情報、A服用履歴、アレルギー・副作用歴、B妊婦・授乳婦の別、C併用薬・健康食品、D服用薬の効果や副作用、E症状の基本情報、F症状の性質、状態等のうち、専門家が目視でのみ確認できるもの、G症状の性質、状態等のうち、専門家が嗅いだり、接触することでのみ確認できるもの、H購入者の挙動を収集する必要があるとしている。
 厚生労働省は、前記九項目の情報を全て収集しなければならないと認識しているか。収集しなければならないとすればその理由はどのようなものか。全ての第一類医薬品についてかかる九項目の情報全てを収集しなければ副作用リスクを低減することができず国民の安全性を確保できないのか。かかる趣旨であればその理由如何。
【購入者側の選択の自由について】
十二 店頭販売であるかネット販売であるかに関わらず、購入者が説明を要しない旨の意思表示をした場合には第一類医薬品であっても情報提供義務は適用されない(新薬事法第三十六条の六第四項)。また、ネット販売に何らかの不安を感じる消費者には薬局又は店舗で購入する選択の自由がある。おかれている環境その他様々な事情でネットによる購入を切実に必要としている消費者が現に存在するにもかかわらず、ネット販売を選択して医薬品を購入することをできないようにすることは憲法上許されると安倍政権として解釈しうるか。

 右質問する。



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