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平成二十五年五月三十一日提出
質問第八九号

亜炭廃坑の陥没防止等に関する質問主意書

提出者  佐々木憲昭




亜炭廃坑の陥没防止等に関する質問主意書


 二〇一〇年十月二十日、岐阜県御嵩町で発生した亜炭廃坑の陥没事故は、約三千四百平方メートルにも及ぶ大規模なものとなった。地盤の沈下・陥没・傾斜・亀裂などにより、民家など六棟が被害、五世帯十七人が避難生活を余儀なくされた。
 同町では、居住地の六割にあたる地下に百五十七箇所以上の廃坑が存在しており、「いつ陥没事故が起きるか分からない」といわれている。
 私は、二〇一〇年の事故直後に御嵩町の事故現場を訪れ、被害の実態を把握するとともに、住民の方々から寄せられた要望をふまえて、当時の大畠章宏経済産業大臣に対し、「亜炭鉱廃坑陥没事故に関する申し入れ」を行い、「国として緊急的な対策をとる」ことを強く求めた(吉井英勝衆議院議員=当時=と連名)。その後、岐阜県や御嵩町からも国に対する度重なる要望が出されていることは、周知のことである。
 今年五月十二日には、同町内で道路の陥没事故が起きるなど、同様の被害は継続的に発生している。この数年間を見れば、岐阜県内だけでも、御嵩町、中津川市、可児市、瑞浪市などで大小の陥没事故が発生し、事故件数は増加傾向にある。
 さらに、二〇一一年三月の東日本大震災によって、宮城県など過去に亜炭採掘が行われてきた地域で数百箇所に及ぶ陥没事故が発生していることも確認されている。
 近い将来、南海トラフの巨大地震において震度六弱の揺れが想定されているなか、市街地のほとんどに亜炭廃坑をかかえる御嵩町では、「人命にも関わりかねない甚大な被害に繋がる恐れが高い」(御嵩町「亜炭鉱廃坑対策要望」)と大きな危機感を抱いている。
 しかし現在、国の対策は、特定鉱害復旧事業等基金の対象に限定されており、被害者の実態に即した救済や、陥没を予防するための対策等には使用できない、「堅い制度」(岐阜県知事)となっている。亜炭採掘が国策として進められてきたものである以上、新たな事故が発生する前に、制度の見直しを含めて、国として緊急に必要な対策を講ずるべきであると考える。
 したがって、次の事項について質問する。

一 特定鉱害復旧事業等基金(以下=基金)について
 1 岐阜県では、現在約五億円の基金が運用されているが、二〇一〇年の御嵩町における大規模陥没事故等への対応により、基金残高は大幅に減少し、当初の半分近くにまで減っているといわれる。直近の残高(見通し)を明らかにされたい。
 2 大幅な基金の減少・枯渇は、住民にとって特定鉱害復旧事業制度の終焉を予期させられるものであり、不安は募るばかりである。今年五月二十二日の衆議院経済産業委員会において、茂木敏充経済産業大臣は「基金が終わったから事業をやめますということはいたしません」と言明している。これは、基金の存続を意味することか、改めて確認したい。
 3 今後、陥没事故が続発すれば基金を存続するための予算措置は、当然必要となる。それは、どのように行うのか、明確にされたい。その際、基金が長期的に存続するよう資金の確保をするための制度の改正を行うべきだと考えるがどうか。見解を求める。
二 亜炭廃坑の予防的措置について
 1 現行の特定鉱害復旧事業制度では、災害復旧が基本であり、予防的措置の実施は対象外となっている。私は、二〇一〇年十二月、当時の大畠経済産業大臣に対し、「地下調査や亜炭廃坑の充てん等、予防的地盤対策事業を実施できるような制度の見直しを行う」よう要請をした。その際、大畠大臣から「対応の仕方について検討する」旨の回答を得た。このことは、翌一一年五月十三日の衆議院経済産業委員会における日本共産党吉井英勝衆議院議員(当時)の質疑においても確認されている。
  改めて聞くが、この大畠大臣の回答を受けて、経済産業省は「対応の仕方について」いかなる検討を行ったか、明確な回答を求める。
 2 さらに前述の委員会質疑(一一年五月十三日衆議院経済産業委員会)において、吉井議員(当時)は「陥没する前に基金を使って対策を打っておいたら…被害を小さくできるし…コストも安い。そういうふうに発想を変えて救済に当たることを考えていくことが大事」と指摘した。これに対し、海江田万里経済産業大臣(当時)は、「委員から新たな提案をいただいたわけでございますから、それをしっかりと受け止めて、これはよく岐阜県とも協議をしなければいけません、また関係する省庁とも協議をしなければいけませんので、そうした協議、検討をしてみたいと思っております」と答えている。
  この大臣答弁を受けて、政府・経済産業省は、予防的措置に関して、岐阜県や関係省庁との間でどのような検討を行ったか、具体的な答弁を求める。
 3 昨年十月、日本共産党岐阜県委員会が経産省に対し、「空洞の埋め戻し等の予防的措置に基金が使えるようにし、基金予算を拡充して下さい」との要請を行った際、「基金は鉱害事故が起きたとき、土地や家屋の復旧に使う。予防のためには使えない。他省庁が行う耐震化事業等の一般施策で対応してもらう」との回答だった。「他省庁が行う耐震化事業」については、「文科省や消防庁などの財布の出所を探している」旨の回答である。ここには、あくまでも現行の特定鉱害復旧事業制度にこだわり、いまだに大小の陥没事故が発生している根本原因を未然に取り除く予防的地盤対策事業を実施できる制度の見直しを行う意思がまったく見受けられない。
  茂木経済産業大臣は、去る五月二十二日の衆議院経済産業委員会の答弁のなかで、「基金をつくって、その基金の中で鉱害復旧工事を行っていくということでありますけれども…本当に、これからきちんと復旧をする意味で、今の仕組みでいいのか、…こういったことも改めて検討する必要がある、こういう時期に来ていると思います」と述べている。
  改めて聞くが、この大臣答弁に示された「きちんと復旧をする」とは、亜炭採掘によって空洞化し、さらに経年劣化が進んでいる現状を、埋め戻し等の予防措置により文字通り採掘前の状態に復旧するという理解でいいか、明確にされたい。
 4 政府・経済産業省が前述のような認識に立っていないなら、「きちんと復旧をする」とは何を意味しているのか、具体的な答弁を求める。
 5 御嵩町からも繰り返し要望が出されているように、「現行制度の見直しを行ったうえで新たな法制度の創設」「鉱害予防制度の創設」は、亜炭廃坑による度重なる陥没事故の被害を受けている関係地域の住民にとって、緊急かつ切実なものである。「今の仕組みでいいのか…改めて検討する必要がある」との茂木大臣の答弁の真意は、このような要望を念頭においたものであるか、また、どのような体制で検討するのか、いつまでに結論を出すのか、明らかにされたい。

 右質問する。



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