質問本文情報
平成二十八年二月三日提出質問第一一一号
日韓外相会談後の日韓外相共同記者発表に関する再質問主意書
提出者 井坂信彦
日韓外相会談後の日韓外相共同記者発表に関する再質問主意書
二〇一六年一月十四日、衆議院議員井坂信彦提出の「日韓外相会談後の日韓外相共同記者発表に関する質問主意書」の政府答弁、特に、二、三、四の質問に対する答弁は、約千八百五十字にわたる詳細な質問にも関わらず、二及び三については、「発表したとおりである」、四については、「仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい」などと、今後の日韓関係を真剣に懸念した質問に対して、とても真摯な答弁とは言えない。
日韓間のいわゆる慰安婦問題については、一九六五年の日韓請求権協定にすでに「完全かつ最終的に解決」とされていた。それにも関わらず「慰安婦問題」はこれまで、幾度となく日韓関係を悪化させる問題として繰り返されてきた。
今般の質問主意書、一の答弁では、「政府としては、韓国政府の明確かつ十分な当該合意に対する確約を得た」としているが、これまでの日韓間の取り決めもすべて、確約を得てきたはずである。それにも関わらず、何度も「可逆的」な対立が繰り返されてきた。
だからこそ今後の日韓関係における日本の国益を確保するうえで、言葉の定義や双方の認識のギャップなどを明確にすることは極めて重要だと考える。真摯な、誠意のある答弁を再度求め、以下の質問をする。
以下、質問主意書該当部分
(二 日韓両国間の「慰安婦問題」の定義について
日韓外相共同記者発表では、岸田外相と韓国・尹炳世外相の慰安婦問題に関する言い回しが異なっていた。岸田外相は、慰安婦問題のことを「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」と表現している。韓国・尹炳世外相は、「日本軍慰安婦被害者問題」と表現している。日本政府の見解として、岸田外相が述べた「慰安婦問題」とは、韓国・尹炳世外相が表現した「日本軍慰安婦被害者問題」と同じ問題であると理解しても差し支えないのか。)
この質問に対する政府答弁は「共同記者発表の場で発表したとおりである」というものであった。日本政府の考える「慰安婦問題」と、韓国政府の考える「日本軍慰安婦被害者問題」は、言葉の違いがあることから、同一の問題を扱っていないことになるのか。説明を加えた、誠意のある回答を求める。なぜ、日本政府の「慰安婦問題」と韓国政府の「日本軍慰安婦被害者問題」とで言葉が異なるのか。
二 二〇一六年一月十四日、衆議院議員井坂信彦提出の質問主意書、三について
以下、質問主意書該当部分
(三 日韓両国間における「最終的かつ不可逆的」の認識ギャップ
日韓外相共同記者発表では、韓国・尹炳世外相が、「今回の発表により、日本政府と共に、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と述べた。一方、安倍首相は二十八日夜、記者団に対して、「私たちの子や孫、その先の世代の子どもたちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかない。その決意を実行に移すための合意だ。この問題を次の世代に決して引きずらせてはいけない。最終的、不可逆的な解決を七十年目の節目にすることができた」と述べた。日本側の認識として、「最終的かつ不可逆的」とは、日本では、「もう蒸し返さない」といったニュアンスで理解されているが、韓国内では、十二月二十九日には韓国・東亜日報が、「これからこの合意の『最終的、不可逆的』の精神が守られるかは日本がどのように行動するかに懸っている。一九九三年の河野談話直後に韓国政府は、「これ以上慰安婦問題を韓日外交懸案で申し立てない」と言及したが、日本が独島、教科書、靖国神社で歴史問題の挑発を続けたため、約束は変更された。」と報道し、十二月三十日には、韓国・中央日報が「『不可逆的』という表現を入れる問題は交渉中に韓国側が先に提起したものだという。日本の政治家が旧日本軍の慰安婦強制動員を初めて認めた河野談話などを否定する発言を繰り返すことを念頭に置き、『もうこれ以上は言葉を変えるな』という趣旨で強調したということだ。」と報道している。
(一) 「最終的かつ不可逆的」の意味について、安倍総理の発言にあるような「この問題を次の世代に決して引きずらせない」、つまり、どのようなことがあっても「蒸し返さない」という意味の「最終的かつ不可逆的」な合意と理解してよいのか。
(二) 韓国のメディアが報道しているように、「最終的かつ不可逆的」の意味は、日本の政治家が旧日本軍の慰安婦強制動員を初めて認めた河野談話などを否定する発言を繰り返すことを念頭に置いた、「もうこれ以上は言葉を変えない」という趣旨で理解しても良いのか。)
@ この質問に対する政府答弁は、「共同記者発表の場で発表したとおりである」という答弁であった。(一)、(二)について、共同記者発表のどの一文が回答に該当するのか、指し示すことを求める。もしくは、各設問に対し、説明を加えた誠意のある答弁を求める。
A 国民や後世の政治家が、今回のこの合意をしっかりと把握することは重要なことである。戦後日本史の中で、日韓を巡る歴史問題は、日本にとっても二度と同じ道を繰り返してはならない問題であると考える。だからこそ、政府はしっかりと今回の合意内容を明示する必要がある。日本側の未来に渡る政治家が「河野談話などを否定する発言をする」ようなことになれば、最終的、不可逆的な精神が守られなかったと韓国側が判断し、日韓合意は破棄されてしまうのか。
B 今般の日韓外相会談による日韓合意後も、竹島に関する日本政府の見解、「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土です。韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠であり、韓国がこのような不法占拠に基づいて竹島に対して行ういかなる措置も法的な正当性を有するものではありません。」という立場に変更はないということで良いか。
三 二〇一六年一月十四日、衆議院議員井坂信彦提出の質問主意書、四について
以下、質問主意書該当部分
(四 日韓外相共同記者発表の内容について
(一) 岸田外務大臣は共同記者発表、日本側発言Bの部分で「日本政府は上記を表明するとともに、上記Aの措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。」と述べた。つまり「日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置」を実施すれば最終的かつ不可逆的に解決すると述べている。一方、韓国・尹炳世外相は、韓国側発言Aにおいて、在韓国日本大使館前の少女像について、「韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と述べている。この韓国側の発言Aの部分が履行されなくても、日本政府は、岸田外相の日本側発言Aの実施をもって「最終的かつ不可逆的」な解決として、今後、国連等国際社会において、本問題について韓国を非難・批判することを控えるのか。それとも韓国側発言Aが履行されるまでは最終的かつ不可逆的な解決とは認められないのか。
(二) 韓国・尹炳世外相は、発言Aの部分で、在韓国日本大使館前の少女像について、「韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と述べている。「可能な対応方向」や「適切に解決」とは、様々な解釈の余地があるが、韓国政府が、関連団体との協議を行う等を通じて、「在韓国日本大使館前の少女像を撤去しない」という「可能な対応方向」で「適切に解決」した場合、日本政府としても「在韓国日本大使館前の少女像を撤去しない」ことを「適切な解決」と認めるのか。)
この質問に対する政府答弁は、「仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい」であった。
@ 上記、質問のどの箇所が「仮定」の質問であるのか。二や三、四などと、まとめて回答せず、設問番号、枝番号、何行目等、具体的な個所を指し示して、「この部分が仮定であるからお答えを差し控えたい」と具体的で誠意のある回答を求める。または、同じ質問に対して、説明を加えた誠意のある回答を再度求める。
A 本問は「解釈」について問う質問主意書である。質問主意書の答弁で、「記者発表のとおり」や「仮定の話にはお答えは差し控えたい」というのであれば、日韓外相会談後の日韓外相共同記者会見の発表には、「解釈」の余地はないということか。説明を加えた、誠意のある回答を求める。
B 上記、韓国側の発言Aの部分について、「韓国が履行する確約を得た」との政府の認識は十分理解できる。文書上の解釈において、この韓国側の発言Aの部分が履行されるか、されないかに関係なく、日本政府は、岸田外相の日本側発言Aの実施をもって「最終的かつ不可逆的」な解決として、今後、国連等国際社会において、本問題について韓国を非難・批判することを控えるのか。それとも韓国側発言Aが、日本政府が期待するように履行されるまでは最終的かつ不可逆的な解決とは認めないのか。説明を加えた誠意のある回答を求める。
C 「在韓国日本大使館前の少女像」を撤去するか、しないかに関係なく、日本政府は、岸田外相の日本側発言Aの実施をもって「最終的かつ不可逆的」な解決として、今後、国連等国際社会において、本問題について韓国を非難・批判することを控えるのか。それとも日本政府が期待するように「在韓国日本大使館前の少女像」が撤去されるまでは最終的かつ不可逆的な解決とは認めないのか。
D 日本政府は、韓国側の発言Aが履行されないことを、全く想定していないのか。
右質問する。